コロナ禍で売上4割減からV字回復 「ミンティア」を261億円の過去最高売上に押し上げた戦略

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2026年03月31日 07:50  ITmedia ビジネスオンライン

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アサヒグループ食品の河口文彦氏

 「錠菓」(じょうか)と呼ばれるタブレット菓子「ミンティア」が再び勢いを増している。2019年までは絶好調だったが、コロナ禍で売り上げが激減した。人と会う機会が減少しただけでなく、マスク着用の常態化により、口臭ケアの必要性が薄れたことが原因だ。


【どうやった?】コロナ禍で売上4割減からV字回復 「ミンティア」を261億円の過去最高売上に押し上げた戦略


 それがコロナ明けとともに急回復。2025年には過去最高売り上げを更新した。


 「ミンティア」が発売されたのは30年前の1996年8月26日(首都圏先行販売)。名刺サイズの薄型容器で当初は縦型だった。2002年にデザインを横型に変えると売り上げが伸び、2009年に年間売り上げ100億円を突破。2017年には200億円超、2019年に238億円まで伸ばした。


 だが、翌年に新型コロナが直撃。2021年には144億円(2019年比で4割減)にまで落ち込んだ。そこからどんな施策で回復させたのか。ミンティアを担当するマーケティング一部の部長・河口文彦氏(アサヒグループ食品 マーケティング部)に聞いた。


●基本訴求「リフレッシュ」を細分化


 「コロナ前も現在も『ミンティア』の基本的な訴求は変えていません。2019年まで順調に伸びていた流れを、再び軌道に乗せることに注力しました。ミンティアの提供価値は、(1)気分転換、(2)眠気覚まし、(3)エチケットで、この3つをくくったものが基本訴求の『リフレッシュ』です」(河口氏、以下発言は同氏)


 同商品は3タイプに分かれる。(1)「レギュラー」と呼ぶ横型(小粒で50粒入り)(2)「ブリーズ」と呼ぶ縦型(大粒で30粒入り)(3)「メガ」(超大粒で50粒入り)だ。全国の小売店でよく見かけるのは(1)と(2)だ。


 「近年はリフレッシュの多様化に合わせた商品展開をしています。レギュラーは“いつでもどこでも瞬間リフレッシュ”を掲げ、心地よい清涼感のブリーズは“持続リフレッシュ”。メガは“強力リフレッシュ”を掲げています」


 喫食者は性別や年齢を問わないが、中には職種によって好まれるタイプがある。


 「ミンティア史上最強レベルの刺激の『メガ』は、ドライバーの方に愛用いただいています。運転中は集中しなければならないので短時間で手に取れるよう、運転席のサイドボックスに缶コーヒーとメガを置かれている方も多いです」


 以前は「カルピス」やコーヒー「ワンダ」も担当した河口氏。錠菓も飲料も生活者インサイト(日常生活における消費者の無意識な行動や深層心理)の視点で説明する。


●「息クリア」を「息みがき」に変えたら……


 ミンティアが目指すのは日常生活における“手軽なリフレッシュ”だ。


 「現代社会では“マイクロストレス”(小さなストレス)が増えています。仕事では1日のうちにリアルとオンラインの打ち合わせが交互に入ることも当たり前になりました。家庭の用事も多く、オン・オフの切り替えが忙しい。子育て中の共働き世帯なら、子どものお迎えにどちらが行くか、当日の仕事の状況で変わります。仕事や学業で常に結果を求められる場面も増えました」


 小さなストレスに対して、ミンティアの喫食で気持ちを切り替えてほしいという訴求だ。近年は商品の本質的価値を磨きながら、一歩踏み込んだ取り組みをしてきた。


 パッケージを覆う外装フィルムに記すキャッチコピーを変えたことで、成果が出た商品もある。


 「ミンティアブリーズの“クリアプラスマイルド”は『トリプル配合で息クリア!』を、習慣化につながる『トリプル配合で息みがき!』に変えたところ、売り上げが急拡大しました。キャッチコピーを変えて、既存品が一気に上昇したのは珍しいケースです」


●機能性に加えて情緒性でも訴求


 機能性だけでなく、生活シーンに根差した情緒性も打ち出す。


 「『+VOiCE レモンジンジャー』は、“声優公認のどタブレット”として発売しました。後味さっぱりのレモンジンジャー味で、のど飴(あめ)を細かく粉砕したのど飴チップと声優に人気の桔梗エキス、ビタミンCを配合しています。のど飴は、のどが痛い時に食べるイメージですが、この商品は “声にうるおい”を訴求する商品として発売。自分の声を大切に、プレゼンなどでいい声を出したいといった前向き訴求の商品です」


 多くの声優が所属する、アイムエンタープライズ社公認という“お墨付き”だ。


 「4月6日には『+FOCUSクリアラムネ』という商品も発売します。こちらは、ぶどう糖92%配合(含水結晶ぶどう糖)ですっきりクリアなラムネ味です」


 「森永ラムネ」(森永製菓)が打ち出している「ブドウ糖補給による集中力アップ」といった市場動向も背景にした商品といえる。菓子よりもサプリを思わせる訴求で、ブランド価値の可能性を広げる取り組みだ。


●「マインドセット」を意識した体験イベント


 2025年4月24日から5月10日までは、ミンティアの体験型イベントとして「日常のなんてこった書店」を、代官山T-SITE(東京都渋谷区)で開催した。店内には「さっき結んだ靴ひもがまた解ける」「カフェWi-Fiのパスワードがやたらと長い……」など、日常で感じる“なんてこった”な小さなストレスを100種類以上展示。


 「書店入り口で配られる『ミンティア』を手にそれらを読みながら、食べてリフレッシュできる体験として訴求しました。なんてこったの一部の内容は、企画連携したTBSラジオさんの5つの番組リスナーから事前に募集しました」


 テレビCMでは伝えられない訴求方法だろう。単なるストレス解消ではなく、「なんてこった」という言葉に置き換えて商品でリフレッシュしてもらう。前向きなマインドセットをサポートする姿勢を示したのだ。


●グミやガム、飴に対する思いは?


 ところで、口に入れてリフレッシュする菓子には「グミ」もあれば「ガム」や「飴」もある。2021年にはグミ市場がガム市場を逆転したことがニュースになった。


 インテージSRI+の調査によると、2024年時点で市場規模1236億円の飴(ハードキャンディー)を同1138億円のグミが猛追している。一方で、ガムは同500億〜600億円と、2004年のピーク時(約1800億円)から3分の1レベルにまで落ち込んでいる。


 ミンティアが該当する、錠菓・清涼菓子の市場規模は2024年時点で619億円となっており、ガムに迫る勢いだ。グミやガム、飴との差別化についても聞いてみた。


 「それぞれ持ち味がありますが、手軽さでは『ミンティア』が上回ると考えています。“手軽さ”にはさまざまな意味があり、『いつでも、どこでも』『すぐに食べられる』『価格も手頃』などです。100円強で買えるレギュラーは50粒入りでコスパもよい商品です」


 ちなみに錠菓の競合ブランド「フリスク」に対しては、「意識するというよりは、一緒に切磋琢磨して錠菓市場に関心を持っていただくようにしたい」とのことだった。


 近年の喫食シーンで多いのが「ながら食べ」。特に「スマホをいじりながら」何かを食べる消費者が多い。グミは形状の多彩さや噛み心地の広がりもあり、錠菓と同様にながら食べに向く商品といえる。


 苦戦が続くガムは、喫食時の手間の多さ(最後に口から出すのが面倒、噛んだ後はゴミになる)も敬遠されてしまう。現代の消費者は「めんどくさい」を嫌う傾向にある。


●グミの得意分野に挑みつつ差別化


 かつて錠菓は「口臭ケア」など、ガムからの乗り換え需要で成長した。「ミンティア」はそれに加えて新たな喫食習慣の創出を目指している。


 「3月2日、まるでフルーツシリーズとして、レギュラーで『まるで芳醇ピーチ』と『まるで熟パイン』を発売しました。それぞれ、まるごと白桃パウダーと完熟パインパウダーを使用しており甘味と酸味が感じられる味わいです」


 今後の競合を絞ると、果実感も得意な「グミ」、特にハードグミだろう。手が汚れず、作業をしながらさっと食べるという共通点もある。グミの場合はそれに加えて小腹を満たせる側面もある。


 少し歴史の話をすると、口に入れる食品でリフレッシュをする「口内気分転換」は昔からあった。例えば高度成長期には「クッピーラムネ」(カクダイ製菓、発売は1963年)、「ジューC」(カバヤ食品、同1965年)などが人気を呼んだ。一定以上の年齢の方は子ども時代に食べた経験を持つ人もいるだろう。


 「ミンティアのいいところは、こうした商品の価値も押さえているところです。ただ、喫食シーンで異なるのは、ミンティアが登場するタイミングは仕事中や勉強中が多いこと。社内でも『ミンティアはオンタイムだよね』と話しています」


 オンタイムの喫食は集中力を切らさないよう瞬間効果も求められる。タイパ時代にも合う「ミンティア」は、今後どこまで消費者の喫食習慣を取り込めるか。


●著者紹介:高井 尚之(たかい・なおゆき/経済ジャーナリスト・経営コンサルタント)


日本実業出版社の編集者、花王の情報作成部・企画ライターを経て2004年から現職。出版社とメーカーでの組織人経験を生かし、企業の経営者や現場担当者の取材をし続ける。足で稼いだ企業事例・ブランド事例の分析は、講演・セミナーでも好評を博す。


「20年続く人気カフェづくりの本 ―茨城・勝田の名店『サザコーヒー』に学ぶ」(プレジデント社)、「なぜ、人はスガキヤに行くとホッとするのか?」(同)、「カフェと日本人」(講談社現代新書)、「『解』は己の中にあり」(講談社)、「日本カフェ興亡記」(日本経済新聞出版社)など著書多数。 E-Mail: k2takai@ymail.ne.jp



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