
ディスカウントスーパー各社が好調だ。
主なプレーヤーは、上場企業である大黒天物産の「ラ・ムー」や、トライアルホールディングス(以下、トライアルHD)の「トライアル」。そして、関東から関西に進出している「オーケー」、関西から関東に進出している「サンディ」などがある。
こうしたディスカウントスーパーが人気を集めるのは、賃金が上昇傾向にあるものの、物価高や税負担がそれを上回っていることが大きく影響している。
第一生命経済研究所の調べによると、消費における食料費の割合を示すエンゲル係数(2人以上世帯)は、1970年には約34%を占めていたが、その後低下し、2005年には約22%まで下がった。しかし、その後は一転して上昇を続け、2025年には28.6%に達している。ここからも家計の負担感が再び高まっていることがうかがえる。
|
|
|
|
こうした家計の厳しさを背景に、少しでも食料品の購入費を抑えようと、ディスカウントスーパーを利用する人が増えている。
本記事では、主要なディスカウントスーパーの特徴を整理しつつ、その特徴を見てみたい。
●メガ安で24時間営業のラ・ムー
ラ・ムーのコンセプトは「メガ安」だ。
ラ・ムーを運営する大黒天物産は2012年に東証1部(現在の東証プライム)に上場し、2013年5月期には売上高1000億円超えを達成。直近の2025年5月期の売上高は約2929億円と、順調に成長しており、西日本を中心に中部や北陸にまで店舗網を広げている。
|
|
|
|
ラ・ムーは、郊外のロードサイド(幹線道路沿い)を中心に、食品や日用雑貨を販売する大型店を出店している。最も東の店舗は、2026年3月19日にオープンしたばかりの山梨県1号店となる甲府徳行店だ。この店が成功すれば、本格的な首都圏進出も視野に入る。
甲府徳行店は、約1600平方メートルの売場面積を持ち、約7000品目を販売。しかも24時間営業だ。開店日には大行列ができており、地域の競合店にとって大きな脅威となっている。
ラ・ムーの特徴は、昭和から時間が止まったかのような激安価格の商品が複数あることだ。3月中旬に筆者が大阪市内の店舗を訪れたところ、中華やデミグラスハンバーグなど、213円という激安価格の弁当が5種類販売されていた。「唐揚げ&みそ野菜炒め弁当」を購入してみたが、女性なら十分に足りる量であり、おいしかった。2つ買っても426円とワンコインを切る。
他にも、106円のスパゲティー、うどん1玉18円など、毎日通いたくなる魅力的な価格の商品が多数ある。
ラ・ムーの店舗の多くは、不動産価格が安く比較的不便な場所にあるが、24時間営業であることもあり、車でわざわさ行くだけの価値を十分に感じさせる。
|
|
|
|
自社ブランドの商品を自社工場で大量に生産し、弁当・総菜は店内調理するという仕組化を行っていることが、安さの秘訣(ひけつ)であり、消費者からの支持を得ている。
●安さ×ITが特徴トライアル
福岡市に本社を持つトライアルも負けていない。
親会社のトライアルHDは、2025年7月に西友の買収を発表。これにより、大手流通業に食い込み、2026年は売上高1兆円超えを見込むなど、好調なディスカウントスーパーの一つとなった。
トライアルHDがディスカウントスーパーとなったのは、1992年に福岡県大野城市に「ディスカウントストア トライアル」をオープンしたのがきっかけだ。その後、撤退した総合スーパーの居抜き出店や地方スーパーの買収などにより、全国に店舗を拡大した。
トライアルHDの特徴は、自社で製造・配送する仕組みを整えているところだ。これにより、500ミリペットボトルのミネラルウォーターを29円という激安価格で販売することができている。
299円の「ロースかつ重」や、通常の1.5倍ほどのボリュームがありそうな199円の「白いたっぷり玉子サンド」も人気だ。このように、安くてボリュームや満足感のある商品を探す楽しさが、トライアルにはある。
もともとIT企業だったこともあり、DXにも力を入れ、消費者がより安く変える工夫をしている。特に、「スキップカート」と呼ばれるタブレット端末とスキャナーを搭載したハイテクのショッピングカートは、トライアルHDならではのサービスだ。
商品に付いているバーコードをスキャンするとクーポンが表示され、カートに入れた商品の合計金額も確認できる。そのため、消費者がより安く購入でき、予算オーバーも防ぎやすい。
また、西友との提携後には、両社の強みを生かした「トライアル西友」を2025年11月に東京都小平市に出店し、2026年2月には川崎市内に2号店を開業。福岡県内で実験してきた小型スーパー「トライアルGO」を2025年11月から西友の店舗近くに展開し、消費者の利便性向上を図っている。
こうした工夫が、できるだけ安く商品を買いたい消費者からの支持を集め、業績を伸ばしている。
●安さと高品質を両立するオーケー
「高品質・Everyday Low Price」を掲げて関東で実績を積み、大阪や神戸に積極的に出店しているのがオーケーだ。
当初は一般的なスーパーだったが、1980年代から仏カルフールとの提携を模索するなど、ビジネスモデルの転換を図った。2001年、商品の品質・売価を吟味し、商品数を絞り込み、毎日が特売価格の本格的なディスカウントスーパーへと転換した。
2025年3月期の売上高は約6860億円で、38期連続増収を続けており、39期連続も確実視されているほどの好調ぶりだ。
その特徴は、会費無料の「オーケークラブ」会員になると、酒類を除く食品が3%相当割引になる点だ。日常的に利用する顧客ほど恩恵を受けやすい仕組みを取り入れており、人気を集めている。
「安さ」以外の取り組みにも力を入れている。オーケーのサービスでユニークなのは「オネストカード」だ。これはキャベツの価格が上がった際に、代わりにレタスを推奨するといったサービスで、正直な商売をしようという姿勢がうかがえる。
また、商品の選定も徹底している。たまたま在庫処分で安く手に入ったから売る、トップシェアの商品だから売るのではない。実際に社員が試食・使用し、なぜその商品を売るのかを徹底的に考え、会議を経て仕入れを決定している。それが安さの中で「高品質」を担保できている理由だ。
こうした安さと高品質を両立させている点が関東で人気となり、2024年11月には関西にも進出。大阪での1号店開業をきっかけに立て続けに出店している。
●欧州での売り方を採用するサンディ
関西から関東に進出し、好調なのがサンディだ。
呉服屋を営むミカミの100周年記念事業として設立された同社。1981年に1号店を大阪府池田市にオープンしたのが始まりだ。安さに挑戦する姿勢で店舗数を伸ばし、2024年度の売上高は1222億円と好調だ。
同社は欧州で主流である「ボックスストア」を展開している。品数を絞り込み、ケース単位で陳列するなど、徹底的にムダを削減。オペレーション全体を効率化することで安さを実現している。
サンディの店舗に行くと、高く積まれた段ボールの箱が並んでおり、殺風景な倉庫のような印象を受ける。特に、菓子パン、おにぎり、カップ麺、ポテトチップスなどは100円を切る商品が多数あり、安さを実感する。
過剰サービスを徹底的になくしたシンプルさが安さの理由であり、消費者からの支持を集めているのである。
●物価高の長期化で、さらに期待が集まるディスカウントスーパー
米国やイスラエルとイランの対立により中東情勢が不安定化し、石油の供給に不透明感が高まっている。ロシアのウクライナ侵攻によって、小麦や大豆、食用油などの価格が上昇したのに続き、国外の紛争が物価高に大きな影響を与えている。しかも、この物価上昇は長期化する可能性もある。
こうした時代だからこそ、ディスカウントスーパーの需要はさらに高まるだろう。ディスカウントストア各社はそれぞれの理念や方針に基づき、生活者の負担軽減に寄与する存在として、今後も重要な役割を担っていってほしい。
(長浜淳之介)
|
|
|
|
|
|
|
|
Copyright(C) 2026 ITmedia Inc. All rights reserved. 記事・写真の無断転載を禁じます。
掲載情報の著作権は提供元企業に帰属します。