武豊騎手
写真/橋本健 12日、阪神競馬場では牝馬三冠の第一関門、桜花賞が芝1600mを舞台に行われる。下馬評は2歳女王のスターアニスと、クイーンCを快勝したドリームコアが1番人気を争う構図だ。
◆2歳女王と上がり馬が激突する“本命対決”の構図
そんな2頭と並び上位人気の一角に推されそうなのが、レジェンド武豊騎手が騎乗するアランカールである。
母に10年前のオークス馬シンハライトを持つアランカールは、昨年7月に福島でデビューすると、新馬戦と野路菊Sを連勝。類まれなるスピードと瞬発力を見せつけ、一躍牝馬クラシック路線の主役候補に躍り出た。
3戦目の阪神JFで堂々の1番人気に推されたアランカール。レース序盤はポツンと離れた最後方を進むと、勝負どころで脚を使って中団に押し上げるややチグハグな競馬。結局、最後の直線で伸びを欠き、5着に敗れて評価を落とした。
そして迎えた年明け初戦のチューリップ賞。武騎手に乗り替わり、再び1番人気に支持されたが、3着まで。それでも武騎手は「次につながるレースはできました」とコメントしており、前哨戦としては悪くない内容だった。
父エピファネイア、母シンハライトと血統的には桜花賞よりもオークス向きだろう。それでも素質の高さは間違いなく、ここをあっさり勝っても驚けない。
1週前追い切りに跨った武騎手も「使われての上積みもあり、今回の方が動けると思います」と自信を口にしている。武騎手としても昨年の宝塚記念以来となるG1制覇をつかみたいところだろう。
◆名手・武豊に付きまとう“牝馬G1大型連敗”の不穏データ
しかし、そんな鞍上にはある不安が付きまとう。
武騎手はここ10年ほどを見ても、キタサンブラックやドウデュースなどとのコンビで多くのG1を制している。ただ、牝馬でのG1制覇はかなり遠ざかっているのが現実だ。
武騎手が牝馬で最後にJRAのG1を勝利したのは、なんと2009年の安田記念まで遡る。その時の相棒は女傑ウオッカ。このコンビは2008年の天皇賞・秋と2009年のヴィクトリアマイルも制しているが、ウオッカと制した安田記念以降、武騎手はダービー2勝を含めJRAのG1を20勝しており、そのすべてが牡馬とのコンビで挙げた勝利である。その間、牝馬でのG1連敗はなんと大台100を超え、現在は102まで伸びている。
武騎手は当然、牝馬三冠レースも長らく勝てていない。最後の勝利はエアメサイアとのコンビで制した2005年の秋華賞で、桜花賞制覇はその前年の2004年まで遡る(ダンスインザムード)。
◆阪神改修後の桜花賞で露呈した“苦手傾向”という壁
ではなぜ、武騎手が牝馬でG1を勝てなくなったのか。やや強引な推測にはなるが、牡馬勝りのウオッカに騎乗し結果を残したことで、繊細な牝馬とは手が合わなくなったといえば極論すぎるか。
桜花賞に関しては、2006年に実施された阪神競馬場の大規模改修工事を境に全く勝てなくなっている。改修前の芝1600mはコーナーがきつく、外枠が圧倒的不利なトリッキーなコースとして知られていたが、武騎手は旧コースの桜花賞で【5-3-1-5/14】と得意にしていた。
一方で、改修後の外回りコースでは【0-3-0-13/16】。能力を出し切りやすいとされる現行コースで2着が精一杯となれば、アランカールと武騎手には黄信号がともっているといってもいいだろう。
今年これまで行われた3つのG1レースのうち、フェブラリーSと大阪杯は3番人気以内の3頭が上位を占める順当決着だった。仮に桜花賞で一角が崩れるとすれば、武騎手とアランカールが最も危険な人気馬となりそうだ。
◆滑り込み出走の「大穴候補」は…
そこで高配当の使者となり得る大穴候補の名前を1頭挙げておこう。
それが、滑り込みで出走可能となったエレガンスアスク。フルゲート18頭に対して、当初は賞金順19番目の除外対象だった。しかし、フェアリーS2着のビッグカレンルーフが1週前追い切り後に左前第3中手骨を骨折。18番目の椅子がエレガンスアスクに回ってきた。
何とか出走にこぎつけたとはいえ、ポエティックフレア産駒の同馬は2月にデビューしたばかりの1勝馬の身。京都芝1600mの初戦を3馬身差で快勝し、川田将雅騎手も「返し馬の雰囲気も良かったので、その通りの走りをしてくれました」と高く評価していたものの、続くチューリップ賞は7着に敗れている。
◆岩田望来騎手に替わる点も好材料
それでも、勝ったタイセイボーグと0秒4差、3着アランカールとは0秒3差と着順ほど負けていない。最内枠からの発走で道中は窮屈な場面が何度もあった。そんな中でも最後の直線でジリジリと脚を伸ばしていた。キャリア2戦目としては次に期待を抱かせる内容だったのではないだろうか。
また、鞍上が全国騎手リーディング2位の岩田望来騎手に替わる点も心強い。昨年はアルマヴェローチェとのコンビで惜しい2着。1年前のリベンジを胸に一発を狙っているだろう。
5月生まれの“メンバー最年少”エレガンスアスクが今年の桜花賞で波乱を起こしてくれるはずだ。
文/中川大河
【中川大河】
競馬歴30年以上の競馬ライター。競馬ブーム真っただ中の1990年代前半に競馬に出会う。ダビスタの影響で血統好きだが、最近は追い切りとパドックを重視。競馬情報サイト「GJ」にて、過去に400本ほどの記事を執筆。