
ソフトバンクは、新料金プランの「ペイトク2」「テイガク無制限」「ミニフィット2」を発表した。いずれも6月2日から提供を開始する。合わせて、既存の料金プランも7月1日から、値上げする。スマホやタブレット向け料金プランの値上げ幅は330円から550円で、2025年9月に導入されたY!mobileの「シンプル3」も、220円値上げされる。
この値上げに伴い、海外ローミングの無料化や、10日から開始された「SoftBank Starlink Direct」への対応といった特典も付くようになる。ソフトバンクは以前から値上げの方向性を検討していたが、ふたを開けてみると、その手法は1年前に新料金プランを導入したKDDIとほぼ同じだった。コンテンツをバンドルして価格を上げたドコモや楽天モバイルとは対照的といえる。
一方で単純な値上げというより、経済圏との連携をより強固にしていることもうかがえる。その軸になるのが、PayPayゴールドカードだ。新料金プランでは、従来以上に“ゴールド推し”が強化されており、契約数を急速に伸ばすPayPayカードにさらなるブーストをかけたい狙いも透けて見える。そんなソフトバンクの狙いを解説していく。
●ネットワーク+付加価値で値上げするソフトバンクの新料金プラン
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“2”という名称からも分かるように、新料金プランのペイトク2やテイガク無制限、ミニフィット2は、いずれも既存の料金プランから大きな枠組みは変わっていない。現行プランの「ペイトク無制限」と「メリハリ無制限+」「ミニフィットプラン+」をそのままアップグレードしたような内容。PayPay連携ならペイトク2、それが不要ならテイガク無制限といった形になり、新しい選択肢が用意されたわけではない。
一方で、ペイトク2は無制限に一本化されており、現行のペイトクにあった「ペイトク30」や「ペイトク50」のような料金プランはなくなっている。中途半端な大容量プランではなく、より無制限の方向にかじを切ったといえる。また、新料金プランの金額は、現行プランの値上げに合わせて料金水準も高くなっている。
ペイトク無制限は、各種割引適用前の金額が1万538円。テイガク無制限は8008円になる。また、現行のペイトクも7月1日から9625円が1万175円に、メリハリ無制限+は7425円が7975円にそれぞれ550円ずつ上がる。事実上の料金値上げになっているが、背景にあるのはネットワークの維持にかかる費用が高騰していることだという。ソフトバンクの専務執行役員 コンシューマ事業副統括を務める寺尾洋幸氏は、次のように語る。
「何とかコストをマネージしてきたが、残念ながら、燃料代に起因する電気代の高騰やメモリ価格など、さまざまな部材が高騰し、人件費も上がっている。これらの原価高騰の波が押し寄せてきている。一方で、5Gが始まって5年、6年がたち、次の世代にネットワークをつないでいかなければならない。安定した通信を提供しながら、事業基盤をしっかり維持していくことが最低条件になってくる」
とはいえ、単純に料金だけを上げるのではなく、先行して値上げに踏み切ったKDDIと同様、通信サービスに新機能を付け、納得感を打ち出そうとしている。最も大きいのが、SoftBank Starlink Directの提供だ。これにより、国土カバー率が広がるため、これまで電波の届かなかった山や海などに行くことが多い人にはメリットが大きくなる。
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2つ目が、優先制御の取り組みで、ソフトバンクはこれを「Fast Access」と呼ぶ。その仕組みは、「(対象となるユーザーに)より多くの無線リソースを割り当てることで、さらに高速な通信を提供する」(常務執行役員兼CMO 大矢晃之氏)というもの。「既存の方の品質をほとんど落とさずに提供できる」(同)のが特徴だ。寺尾氏によると、「余裕のあるところでは差が出るが、(キャパシティーが)厳しいところではあまり差が出ない」サービスになっているという。
3つ目は、海外ローミングの無料化。新料金プランのうち、ペイトク2とテイガク無制限では、1カ月丸ごと、海外ローミングが無料でかつ無制限になる。これに合わせて、ソフトバンクはデータローミングの「海外あんしん定額」を「海外データ放題」に改定。現状では、「定額L国」で3GB/24時間、980円で提供されている海外あんしん定額を、24時間無制限にして、選択できる日数も1日から31日までに拡充する。新料金プランでは、これが無料になる。
●既存プランも値上げに、料金の前提になる武器になるネットワーク品質
こうした3つの特典は、値上げされる既存の料金プランにも付帯する形になる。例えば、ペイトク無制限/50/30にはSoftBank Starlink Directに加えて、Fast Accessと海外データ放題が5日分付属する。メリハリ無制限+も同様だ。新サービスの対価として、値上げを許容してもらう狙いがあるといえる。
ただ、ペイトクやメリハリ無制限+で無料になる5日間という日数は、新料金プランのペイトク2やテイガク無制限の1カ月よりも短く、ミニフィット2と同じ。新料金プランは、値上げ後の現行料金プランよりもわずかに高いが、ローミングが無料になる日数の差はその金額以上に大きい。
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この点は、以前からの料金プランを値上げしながら残し、その上位プランとして新たに「auバリューリンクプラン」を導入したKDDIとの大きな違いだ。現行のペイトクやメリハリ無制限+は、値上げに先立ち、6月1日で新規受付が終了する。既存のユーザーは使い続けることができるが、新たにソフトバンクを契約する際には選択できない。
一方で、料金プランに付帯するサービスがネットワーク関連を中心にしている点は、KDDIとほぼ同じだ。ドコモや楽天モバイルが映像系サービスをセットにしたのとは対照的といえる。こうした点を問われた寺尾氏は、「コンテンツは本質的に嗜好性が高い」と指摘しながら、次のように語る。
「いずれのサービスも、(契約者全体の中で使うのは)10%から20%。そういうサービスを無理に付け、全体(の料金)を上げてというのはお客さまのニーズに合わないのではという議論になった。ソフトバンクやY!mobileの方がNetflixなどのさまざまなサービスに入ったら割引するというサービスはありうるが、衛星にしろ海外ローミングにしろ、つながることに重点を置くのが一丁目一番地ということで今回のものを選んだ」
裏を返すと、これは、ソフトバンクがネットワーク品質を武器にしようとしている意思表示ともいえる。新料金プランの発表会では、冒頭で寺尾氏が「一番の価値はつながるネットワーク」と述べており、トラフィックが5年で1.6倍に伸びている中、品質を向上させてきたことを解説。基地局数や第三者機関の調査結果なども紹介された。
例えば、英調査会社Opensignalの調査ではKDDIの世界一という順位が目立つ一方で、中身を見ているとソフトバンクが肉薄していることが分かる。ソフトバンク傘下のAgoopが調査したデータでも傾向は同じで、ソフトバンクがトップながらKDDIがそこに追随している。
いずれの調査でもネットワーク品質の高い上位2社と下位2社には明確な差があり、KDDIとソフトバンクは常に前者としてカテゴライズされることが多い。ネットワーク品質に自信があるからこそ、サードパーティーのコンテンツに頼らず値上げに踏み切れたというわけだ。
●強まるゴールドカード推し、契約者獲得は維持できるか?
ネットワーク品質を武器に値上げに踏み切ったソフトバンクだが、新料金プランにはもう1つの狙いがある。それが経済圏との親和性だ。中でも、現在急速に契約数を伸ばし、先行する楽天カードやdカードへのキャッチアップを図るPayPayカードとの連携が強化されている。その特徴は、現行のペイトクとペイトク2を比較すると分かりやすい。
ペイトク無制限では「PayPayカード割」が設けられていたが、その額は187円と少額だった。これに対し、ペイトク2ではPayPayカード割がノーマルカードとゴールドカードに分かれ、前者は330円、後者は550円と割引幅が拡大している。先に述べたように、ペイトク2の基本料である1万538円は値上げ後のペイトク無制限の1万175円よりも高いが、ゴールドカード契約者であれば、割引適用後は同額の9988円になる。
その上で、ペイトク2ではゴールドカードをひも付けている場合、PayPayでの支払いに対して現状の2倍である10%還元を受けられる。上限額は4000円と変わらないものの、より少ない利用でそこに到達可能になる。
既にゴールドカードを契約しているペイトクの契約者には還元率アップやローミングの無料日数が増えるだけでメリットがあるため、「すぐに移られた方がいい」(同)。値上げはしたものの、ゴールドカードを利用すれば、その影響を最小限に抑えられるように設計されているというわけだ。ただし、ペイトク2、テイガク無制限、ミニフィット2では、PayPayカード ゴールドでソフトバンクの通信料を支払った際に還元されるPayPayポイントが、従来の10%から1%に変更される。
一方、ペイトク2はゴールドカードがないとPayPayの還元上限額が3000円まで下がる。ゴールドカードがない利用者がペイトクから移行すると、値上げ幅が大きくなる上に還元額も下がるというわけだ。
「ゴールドカードに寄せたか」という質問に対し、寺尾氏は「はい」とコメント。「通常のカードよりもゴールドカードの方が決済単価も高くなるため、少しゴールドカードに寄せた」とその理由を話す。ゴールドカード獲得の仕掛けは、2025年に導入されたY!mobileのシンプル3でも導入されていたが、それをソフトバンクに拡大し、なおかつPayPay利用時の還元率や還元額と連携させた格好だ。
ただ、既存のペイトクやメリハリ無制限+のユーザーが、ゴールドカードを作ってまで料金プランを変更するかは未知数といえる。料金プランの導入に合わせ、年間100万円の利用で1万1000ポイント還元を受けられる新たな特典でゴールドカード契約のハードルは下げるものの、既存のペイトク利用者がペイトク2のために契約するメリットは少ない。還元率は10%に上がるが上限額自体は変わらないため、PayPayでの決済額が大きいペイトクユーザーにとっての大きな差が海外ローミングの無料日数の違いにとどまるからだ。
寺尾氏が「(現行のペイトク利用者は料金プランを)ステイしてもそれほど問題はない」(同)と語るように、移行が進まない可能性もある。2023年のサービス開始から約2年半で200万契約を突破したペイトクは、ソフトバンクブランドの契約者を増やす起爆剤にもなっていた。新たに加わるゴールドカードという条件は、経済圏拡大の効果がある一方で、ユーザー獲得の勢いを落とすもろ刃の剣になってしまうかもしれない。
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