リアライズシリウス(撮影:下野雄規) 【文・構成:伊吹雅也(競馬評論家)=コラム『究極のAI予想!』】
netkeibaにある膨大な競走成績を人工知能によって機械学習するAiエスケープを開発したAIマスター・Mと、レースデータの分析を専門とする競馬評論家・伊吹雅也による今週末のメインレース展望。コンピュータの“脳”が導き出した注目馬の期待度を、人間の“脳”がさまざまな角度からチェックする。
(文・構成=伊吹雅也)
◆超人気薄の馬が馬券に絡む可能性は低いと見ていい
AIマスターM(以下、M) 先週は桜花賞が行われ、単勝オッズ2.9倍(1番人気)のスターアニスが優勝を果たしました。
伊吹 強かったですね。素晴らしいスタートを決めたものの先行争いには加わらず、馬群のちょうど真ん中あたり、9番手前後のポジションで3コーナーへ。その後も先行した各馬のすぐ後ろでレースを進め、ゴール前の直線入り口でやや外めに持ち出し、ラストスパートに向けた態勢を整えています。先行勢の中からギャラボーグ(2着)が抜け出しかける中、これを残り200m地点の手前で難なくかわし切り、そのまま単独先頭に。最後の最後まで脚色は衰えず、後続に対してセーフティリードを保ったまま入線しました。結果的に1番人気だったとはいえ、単勝支持率は約27%にとどまっていましたし、半信半疑くらいに思っていた方も多かったはず。そんな状況下でこれだけのワンサイドゲームとなったわけですから、この馬を信じた方にとっては気持ちの良いレースだったのではないでしょうか。一分の隙もないエスコートで勝利に導いた松山弘平騎手はもちろん、ぶっつけ本番の一戦に完璧な状態で送り出した陣営も、お見事と言うほかありません。
M スターアニスは前走の阪神JFに続く自身2度目のGI制覇。デビュー戦で5着に、3戦目の中京2歳Sでも2着に敗れてしまいましたが、そこから世代最強牝馬の座へと上り詰めました。
伊吹 デビュー戦と2戦目が小倉芝1200mのレースで、重賞初挑戦となった中京2歳Sも中京芝1400mが舞台。近年のクラシックホースとしては珍しいタイプですよね。阪神JFが勝ち時計1分32秒6、2着馬ギャラボーグと0.2秒差だったのに対し、今回は勝ち時計が1分31秒5で、ギャラボーグとのタイム差は0.4秒。4か月前と比べても着実に成長しているのだと思います。
M 次走はまだ決まっていないようですが、オークスやNHKマイルCに駒を進めてくるようであれば、かなりの注目が集まるのではないでしょうか。
伊吹 母のエピセアロームは現役時代に小倉2歳SとセントウルSを制している一流のスプリンター。父のドレフォンもBCスプリントの勝ち馬ですから、いずれは短距離のレースが主戦場になるのかもしれません。もっとも、ここ2戦の勝ちっぷりを見る限りだと、もう少し長い距離も難なくこなせそう。本馬の半兄バルサムノート、父の代表産駒であるジオグリフはいずれも芝中距離向きの馬でしたし、オークスを使ってきたとしても無理に嫌う必要はないはずです。もちろん、牡馬相手のNHKマイルCに挑戦するのならば、それはそれで非常に楽しみ。関東への遠征などを問題なくこなすことができれば、自然と結果はついてくると思います。
M 今週の日曜中山メインレースは、3歳牡馬クラシック競走の第一戦、皐月賞。昨年は単勝オッズ10.6倍(3番人気)のミュージアムマイルが優勝を果たしました。なお、その2025年は単勝オッズ1.5倍(1番人気)のクロワデュノールが2着、単勝オッズ13.7倍(4番人気)のマスカレードボールが3着という結果で、3連単の配当は2万2670円どまり。堅く収まりやすいレースと見ておいた方が良いのでしょうか。
伊吹 2017年が3連単106万4360円、2018年が37万2080円の決着だったものの、2019年以降の過去7年に限ると、3連単の配当は平均値が3万1793円、中央値が2万6310円。最近はあまり荒れていませんね。
M ただし、過去10年の単勝人気順別成績を見ると、3着以内馬30頭のうち9頭が7番人気以下。人気薄の馬が馬券に絡んだ例も結構あります。
伊吹 単勝7番人気から9番人気の馬が2016年以降[3-3-2-22](3着内率26.7%)とかなり健闘していた一方で、単勝10番人気以下の馬は2016年以降[0-0-1-84](3着内率1.2%)でした。伏兵を狙っても良いと思うのですが、単勝二桁人気クラスの馬が波乱を演出する可能性は低いと見るべきでしょう。
M そんな皐月賞でAiエスケープが指名した特別登録時点の注目馬は、リアライズシリウスです。
伊吹 興味深いところを挙げてきましたね。上位人気グループの一角を占めそうですが、断然の1番人気ということはないはず。
M リアライズシリウスは通算4戦3勝。3走前の新潟2歳Sと前走の共同通信杯を制しています。2走前の朝日杯FSは5着どまりだったものの、能力の高さは証明済み。オッズ次第では絶好の狙い目かもしれませんね。
伊吹 現3歳世代でJRAの重賞を複数回勝っている牡馬は、今のところこの馬と別路線組のダイヤモンドノットだけ。見方によっては実績最上位と言える存在ですし、おそらくAiエスケープもそのあたりを高く評価しているのでしょう。この見立てを踏まえたうえで、私はレースの傾向からリアライズシリウスの好走確率を見積もっていきたいと思います。
M 真っ先に注目しておくべきポイントはどのあたりですか?
伊吹 まずはこれまでの戦績を素直に評価したいところ。1つ目の好走条件は、2021年以降の3着以内馬15頭中14頭は、JRAの重賞で“着順が1着、かつ2位入線馬とのタイム差が0.1秒以上”となった経験のある馬でした。
M なるほど。まだ重賞を勝っていない馬は強調できませんね。
伊吹 重賞未勝利馬だけでなく、2位入線馬とタイム差なしの重賞勝ちしかない馬も苦戦していましたから、該当馬は扱いに注意しましょう。
M リアライズシリウスは新潟2歳Sを勝った時が2位入線馬と0.7秒差。この条件をしっかりとクリアしています。
伊吹 あとは臨戦過程も重要なファクター。2つ目の条件はこちら。同じく2021年以降の3着以内馬15頭は、いずれも前走が東京芝1800mか中山芝2000m内のレースでした。
M 中山芝1800m内のスプリングS、阪神芝2000m内の若葉S、阪神芝1800m外の毎日杯などをステップに臨む馬は、割り引きが必要ですね。
伊吹 おっしゃる通り。逆に、共同通信杯をはじめとする東京芝1800mのレースから直行してきた馬は、相応に高く評価するべきでしょう。
M リアライズシリウスはまさにこのパターン。臨戦過程に不安はありません。
伊吹 さらに、同じく2021年以降の3着以内馬15頭中12頭は、馬番が6番から14番でした。
M 内外極端な枠に入った馬は不振、と。
伊吹 ちなみに、馬番が6番から14番でない、かつ父がキタサンブラックでない馬は2021年以降[0-0-1-39](3着内率2.5%)。キタサンブラック産駒であれば、枠順はそれほど気にしなくて良いと思います。
M リアライズシリウスの父はポエティックフレア。真ん中寄りの枠が欲しいところですね。
伊吹 もっとも、特別登録を行った馬のうち、1つ目と2つ目に挙げた条件を両方ともクリアしている馬はごくわずか。たとえ少々不安な枠に入ったとしても、私はそれなりのシルシを打つつもりでした。Aiエスケープも有力と見ているわけですから、ある程度は素直に信頼して良いはず。枠順や実際のオッズも確認したうえで最終的な評価を下しましょう。