実は中国人旅行者も? 激増する「おじさん一人旅」は宝の山でも、旅館が「おひとりさま」を嫌うワケ

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2026年04月19日 21:50  All About

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これまで旅行市場の中心だった昭和の旅行団体客は減少傾向にあり、令和では「ひとり旅」の人気が高まっています。現代の旅行マーケットで注目すべき観光ビジネスとは何か、令和のトレンドを解説します。※サムネイル画像:PIXTA
シニア世代の旅離れから昭和のトレンドだった団体旅行は減少し、令和では「ひとり旅」の人気が高まっています。

内藤英賢さんの著書、『観光ビジネス 旅行好きから業界関係者まで楽しく読める観光の教養』では観光ビジネスについて詳しく解説。今回は本書から一部を抜粋し、ひとり旅へのニーズの高まりがどういった変化をもたらすのかをご紹介します。

旅行市場に眠る今後のビジネスチャンスに注目してみてください。

ひとり旅が旅行形態の第2位に躍り出た意味

じゃらんリサーチセンターの調べによると、旅行形態としてひとり旅がついに2位にまで躍り出たとの発表がありました。

2024年度に実施された国内宿泊旅行のうち、同行形態として最も割合が高かったのは「夫婦2人での旅行」で25.6%。次いで「ひとり旅」が18.0%で続く(じゃらん観光国内宿泊旅行調査「旅行市場動向調査」)。

また、18歳〜29歳の男性と50代の男性の層ではひとり旅が第1位になっているとのことです。このことは今までの様々な常識を覆します。

まず、いまだに旅館ですと「ひとり旅」は「その他」扱いが多く、本音を言えばなるべく取りたくないと思っているケースが多いのです。

なぜかというと、単純に旅館というのは「なるべく定員で入れて1室あたりの売上を高めたい」と考えており、その視点で見ると、ひとり旅と言うのはもっとも相性が悪い客層となってしまうためです。

しかし、その思惑とは反するように旅館の同伴係数(1室あたりに宿泊した人数)が2.0を切るケース(つまりひとり旅が相当数いる)も多く確認されています。

増え続ける「男性のひとり旅」

また、ひとり旅と言うと「女性のひとり旅」を思い浮かべる方も多く、また旅行の商品も「女性のひとり旅」をターゲットにしたものが多いです。ですが、先ほどのデータが示す市場のニーズは「男性のひとり旅」なのです。

これは、宿側に話を聞いても、数字のファクトどおりで「中年男性のひとり旅が本当に多い」と言います。

そして、このひとり旅は今後も増え続けます。理由は単純で、単身世帯が増えるからです。2025年現在の単身世帯は38%ですが、2040年には42%となります。

ちなみに2000年時は27%くらいで(この時のひとり旅の割合は10%くらいであったことを考えると)2040年にはひとり旅は旅行形態の第1位になることも十分に考えられるのです。

そして、これは日本のみの話ではありません。世界的な傾向で単身世帯が増加傾向にあります。インバウンド第1位の国である中国も今では4人に1人が「ひとり旅」で日本を訪れているという衝撃のデータもあります。

サービス設計のアップデートに眠るチャンス

つまり、観光ビジネス目線では、「昭和のつめ込み型団体旅行」から「令和の自由気ままなひとり旅行」に対するサービス設計にアップデートする必要が出てきているということです。ここに大きなビジネスチャンスが眠っているのです。

例えばビジネスホテルでも、出張客の減少は中長期トレンドで確定的ですので、ひとり旅をうまく取り込むことでそれをカバーすることが可能になるでしょうし、地域の飲食店でも「ひとり旅を歓迎するような仕様設計」に変更することでひとり旅の客層を取り込めるでしょう。

また、前述の旅館ですが、ひとり旅を本格的に取り込もうとするのであれば、例えば「お食事処」ひとつとっても、今は多人数を前提とした設計になっているので、「ひとり旅の方でも周りを気にすることなくゆっくり過ごせるお食事処」があるだけでもグッとPR力は違うでしょう。

そして「男性のひとり旅」に向けた商品がどれくらい展開できているでしょうか?

お土産屋も、30個入り1500円のような箱菓子ではなく、自分のご褒美用、あるいはひとり旅で行った帰りに親しい家族や友人にだけ渡す、「ちょっとした良い物で少量のお土産」が好まれるでしょう。

ターゲット層の明確化が重要

今、これらに応えられている観光ビジネスがどれだけあると言えるでしょうか? それだけに、この旅行トレンドの変化は観光ビジネス目線で言えばチャンスとも言えるのです。

なお、ひとり旅の強調をしていますが、日本国内の旅行マーケットでは比較的軽視されてきたジャンルですので、それでもまだ「ご夫婦/カップル旅行」「家族旅行」「友人などのグループ旅行」という主要の旅行形態も健在であることは忘れてはいけません。

大事な点は、ターゲットの明確化なのです。観光地も、宿泊施設も、飲食店も、お土産屋も誰をターゲットにするのかをきちんと分かっていないと、結局どこの層も取れないということになりかねません。

山口周さんの言葉で私もマーケティング上で肝に銘じている言葉があります。

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『当店は和食も、イタリアンも、中華も、フレンチも80点です」というレストランAと「当店は中華しかできませんが中華は120点です」というレストランBと「当店はフレンチしかできませんがフレンチは120点です」というレストランCがあった際に、中華が食べたければB店に行くし、フレンチが食べたければC店に行くと。

結局、レストランAは全ての客層を取りに行っていることで全ての客層を取り逃しているというパラドックスに気付くべきです。』
===

この言葉は、今後の観光ビジネスのマーケティングを考える上でも極めて重要なポイントになります。

内藤 英賢(ないとう・ひでさと)プロフィール
合同会社Local Story代表。早稲田大学政治経済学部卒業後、三菱UFJ銀行に入行。退職して、吉本興業の養成所(NSC)を経て約3年半芸人として活動。その後、観光業界へ転身し、株式会社アビリブに入社。株式会社プライムコンセプトの創業にも参画し、取締役副社長COOなどを歴任。宿泊施設や観光地のマーケティング・ブランディングを中心に300以上のプロジェクトを手がける。現在は地域活性化やDMO支援、講演活動など幅広く活躍している。
(文:内藤 英賢)

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