遺品整理の現場に来る外国人は窃盗という概念は薄いようで、業者も人手不足のため黙認状態(写真はイメージ)「無報酬でもいいから現場に入れてほしい」。そんな不審な電話が、遺品整理業者のもとに相次いでいるという。背景にあるのは、現金や貴金属、家電など“換金できる遺品”が眠る現場ならではの事情だ。実際、外国人スタッフによる持ち去りや、安く働かせたい業者側との利害一致も起きている。だが問題は、単なる窃盗では片づけられない。慢性的な人手不足と低価格競争のなかで、外国人労働者を受け入れざるを得ない業界構造があるからだ。遺品整理と解体現場に広がる、危うい実態を追った。
◆外国人が前のめりに参入する遺品整理業界
「『タダでいいから、回収のメンバーに入れてくれないか』という営業電話が、ここ最近、頻繁にかかってくるようになったんです」
そう話すのは、関西の遺品整理業者で、業界団体にも深く関わるA氏。今この業界には、外国人が前のめりに参入してきているという。
「ウチの系列会社で倉庫作業員を募集したら、なぜか『無報酬でいいから遺品整理の現場に行きたい』と言ってくる外国人が大勢来た。そこで、これはおかしいとピンときたんですよ。泥棒しようとしてるんちゃうかと」
A氏の勘は当たり、全国の遺品整理の現場では、外国人スタッフが遺品を持ち去る事例が相次いでおり問題化。中国人やベトナム人の事例が挙がることが多いが、関西ではそれに加えて中東系が目立つと話す。
もちろん、遺族の許可なく遺品を持ち出すのは犯罪だ。それでも後を絶たないのは、遺品整理の現場が、いわば“宝の山”になり得るからだ。A氏は「何も出てこない日なんてない」と言う。
◆現金が数千万円単位で見つかることも!
貴金属やブランド品、家電、古書といった換金しやすい品だけではない。現金が数千万円単位で見つかることすらある。しかも、部屋に何があったかを遺族が完全に把握しているとは限らず、物がなくなっても、それが盗まれたのか作業の過程で処分されたのかが見分けにくい。
そのため、この業界には以前から、窃盗や転売を目的に遺品整理業を装う業者が少なくなかった。誰もが誠実とは限らない現場であることは、業界内でも半ば共通認識になっている。そこへ外国人も流れ込んできているというのが実情だ。
ただしA氏は、外国人スタッフの問題を、単純な窃盗の話だけでは片づけられないと見ている。彼らのなかには、そもそも自分が「盗んでいる」という認識を持っていない者が少なくないというのだ。
「例えば家電は、製造から5年未満のものが買い取り対象になりやすい。でも外国人はそういう相場感がわからないから、手当たり次第に持っていく傾向がある。盗んだ品の処分も、自分の荷物として古物商に持ち込むケースが多いみたいです。しかも本人に盗品という自覚がないから、買い取りに必要な身分証も、住所や電話番号も普通に出す。だから取引があっさり成立してしまうんです」
◆遺品整理業者に関する相談件数が増加
国民生活センターの公表資料によれば、遺品整理業者に関する相談件数は’13年度が73件、’17年度には105件と増加。さらに報道ベースでは、’23年度には209件に達したとされ、10年で3倍近くまで増えた可能性がある。
A氏は「すべてが外国人のせいではないやろうけど、現場を見ていると、少なからず影響はあると思う」と話す。
◆「安く働いてもらえる」業者側とも利害が一致
では、なぜ彼らはこの業界に入り込めるのか。背景には、受け入れる業者側の事情も大きく関わっている。ある業者Bでは、問い合わせ対応は日本人が丁寧に行い、見積もりにも日本人が赴く。ところが作業当日になると、日本語の不自由な外国人だけを現場に送り込むことが珍しくないという。しかも、このやり方についてBの関係者は「クレームになってもええねん」と語る。
「安く働いてもらって、荷物を捨てられさえすればそれでいいんですから。丁寧にやる気なんかさらさらない。誰にも迷惑かけてないし」
このスタンスに対し、業界内では「遺族の心情的なフォローや接客も含めての遺品整理なのに、それでは成り立たない」として反発の声が少なくないという。ただし多くの業者にとっては、低価格で受注を続けられるメリットがあり、外国人スタッフにとっても現場で“お宝”を手にできる可能性がある。そうして双方の利害が一致しているため改善は難しい。なお、全国的に多く従事しているのは東南アジア系だという。
◆解体現場の賃金は日本人の3分の2
そもそも遺品整理業界は、慢性的な人手不足で、肉体的にきついうえ、故人が暮らしていた空間を整理する仕事である以上、精神的な負荷も重くなる。日本人から敬遠されやすい職種の典型ともいえるため、どの業者も常に求人を出しているが、人手を確保するためには応募の間口を広くせざるを得ない。その網に外国人が積極的に入ってくるという流れなのだ。
遺品整理と同様に、建造物の解体現場でも人件費の安さを理由で外国人を雇う業者は多く、賃金は日本人相場の3分の2程度で済むことが多いという。さらに、学生ビザなど本来はフルタイム就労が認められていないはずの外国人を、日給制や月給制で働かせているケースも珍しくない。
「今は解体現場はほとんど外国人。とはいえ、彼らは比較的、言われたことは真面目にやるんですね。ここも東南アジア系の雇用に力を入れていると聞きます。最低賃金は払わないといけないから半額まではいかないけど、だいたい日本人の3分の2くらいの金額で働いてくれる」(前出・A氏)
◆外国人労働者が語るメリットとは?
不法行為は当然、取り締まられるべき一方で、日本人が嫌がる仕事を安く担わせ、問題が起きたときだけ外国人のせいにする……そうした構造が背景にあるのもまた事実だ。
一方、解体業に従事する外国人労働者C氏に話を聞くと、他のメリットもあるようだ。
「解体にしても遺品整理にしても、日本語が話せなくても仕事がある環境を探したら、その仕事が見つかっただけ。他の仲間たちもみんなそう。日本人が嫌がるしんどい仕事でも、僕らからすれば、稼げるだけで十分ですよ」
危ういながらも、そう簡単には切れない、持ちつ持たれつの関係といえる。
※2026年4月28日号より
取材・文/週刊SPA!編集部
―[[悪い外国人]の錬金術]―