
「勉強会」といってもさまざまだが、いわゆる自己啓発だけでなく、マルチまがいのネットワークビジネスや高額なスピリチュアル系商品の勧誘を受けることになるケースも(写真はイメージ)
あらゆるメディアから日々、洪水のように流れてくる経済関連ニュース。その背景にはどんな狙い、どんな事情があるのか? 『週刊プレイボーイ』で連載中の「経済ニュースのバックヤード」では、調達・購買コンサルタントの坂口孝則氏が解説。得意のデータ収集・分析をもとに経済の今を解き明かす。今回は「新入社員へのアドバイス」について。
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新入社員は合同研修が終わり、そろそろ配属先に送り出されるタイミングだ。よかったら先輩方はこのコラムを新人に周知してくれないだろうか。
私が会社員1年目に教えてもらった最高のアドバイスは「速く歩け」と「会社のことを思って発言しろ」だった。
動きが機敏だと有能に思ってもらえる。これはメール返信や資料作成もそうで、とにかく早い(速い)だけで3割は評価が高くなる。
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また、どんなに失敗しても、真顔で「自社のために考えてやりました。責任とって辞めます」と言おう。
ここまで言える部下を叱責(しっせき)できる上司はいない。自分のキャラクターと違うと思ったひと。みなさんは社会人になった。演じればいいだけだ。
これからみなさんは職場に配属される。信じられないほど非礼なひとにもたくさん出会うだろう。
私が話しかけても無視したり、そっけない態度をとったりする社員が多数いた。しかし10年後になって「テレビで観ました」「あのころ一緒に仕事したの覚えてる?」と恥ずかしげもなく連絡してくることもある。
人間は平気で掌(てのひら)返しをする。入社してすぐに業績をあげられなくても何の問題もない。時間をかけても仕事で成果を出せば「昔からすごかった奴(やつ)」と同僚の記憶は書き換わるはずだ。
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なお、私は入社まもないころに「マルチ商法の勉強会に参加しよう」「自己啓発本の3ページを毎日決まった時刻に朗読しよう」「労働運動の集会に行かないか」といった勧誘を受けた。
たしかジョセフ・マーフィー『眠りながら成功する』やナポレオン・ヒル『思考は現実化する』のCDを聞くとか、人間には聴取不能な周波数を聞こうとか。フリーメイソンや三百人委員会あたりの研究会にも誘っていただいた。ありがたし。
私は若い方に「歴史観と政治とプロ野球については仕事で話さないほうがいい」とアドバイスしている。これにディープステートや占いあたりも付け加えておこう。現在であれば、MBTI(16タイプ性格診断)などを勧めるとか、アカシックレコードについて語る先輩もいるだろう。
勧誘者と新人にはある種の共通の利益がある。勧誘者は、話を聞いてくれる純真な相手を求めているが、すでに組織のなかではまともに相手にされていない。
ただし新人は早く組織に溶け込みたいから、既存メンバーの話を聞く姿勢があるし、できれば人間関係を壊したくない。
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社会人になってしばらくするとわかるが、世の中は複雑だ。これをやったら成功するとか、これでそのひとの人生がわかるとか、特定の勢力が世界を操っているとか、特定の人物が特定の立場から降りただけですべてが改善するとか、そんな単純な図式を信じるのは「子ども」だけだ。
面倒な勧誘をする同僚とも付き合わねばならない。20代前半のころは科学的に反論を試みた。すべてが無駄だった。そこで30代あたりから「まったく興味ありません。でも、それに興味がある〇〇さんには興味があります。話を聞かせてください」と言うようになった。
教えてもらって「興味ある?」と訊(き)かれたら「いえ、何の興味も湧きませんでしたが、やっぱり〇〇さんの話は面白いですね」と直視しながら言おう。え、興味あるとすら演じられない? それなら「あ!用事だ!」と速く歩け。
