「BeRealテロ」と呼ばれる情報漏えい問題 銀行事案で見えた“2分投稿”の落とし穴

0

2026年05月01日 15:10  おたくま経済新聞

  • チェックする
  • つぶやく
  • 日記を書く

おたくま経済新聞

「BeRealテロ」と呼ばれる情報漏えい問題 銀行事案で見えた“2分投稿”の落とし穴

 若者世代を中心に利用が広がる、フランス発のSNSアプリ「BeReal(ビーリアル)」。日常の一瞬を共有する“リアル”さが支持される一方で、企業や学校などの現場では、新たな情報漏えいリスクとして問題視されています。


 通知から2分以内に撮影・投稿する仕組みにより、撮影場所や背景への配慮を欠いた投稿が起きやすく、SNS上では「BeRealテロ」と呼ばれています。


【その他の画像・さらに詳しい元の記事はこちら】


■ 2分間のプレッシャー「BeReal」の落とし穴

 「BeReal」は、従来のSNSとは一線を画すシステムを持っています。


 それは1日1回、ランダムな時間に通知が届き、そこから「2分以内」に撮影・投稿することが促される時限式の仕組みです。投稿自体は任意ですが、2分以内に投稿することで“リアルタイム性”が保たれる設計になっています。


 さらに、前方カメラと後方カメラによる同時撮影が必須であり、画像処理フィルタなどの加工はほぼできません。


 「ありのままの日常」を共有できるとして若年層に支持されていますが、この「不意の通知」と「2分間の制限時間」が、いわゆる「BeRealテロ」と呼ばれる問題を引き起こす要因になっているとみられます。


■ 西日本シティ銀行では顧客7名の個人情報が漏えい

 こうしたリスクが現実の問題として大きく表面化した事例のひとつが、西日本シティ銀行のケースです。


 SNS上では2026年4月29日頃から、「BeReal」を使って撮影されたとみられる動画が拡散されていました。動画には同行の営業店執務室内が映っており、顧客情報や業績目標が確認できるとして、批判の声が相次いでいました。


 なお、この動画は最近撮影されたものではなく、背景情報などから2024年頃に撮影されたものとみられます。撮影から時間が経過した後に拡散された点からも、SNS投稿が長期的なリスクを持つことがうかがえます。


 こうした事態を受け、同行は4月30日、職員が営業店執務室内を撮影した動画や画像がインターネット上で拡散された事案について、公式Xおよび公式サイトで謝罪しました。


 発表によると、拡散された執務室内の動画や画像には、顧客7名の個人情報(氏名のみ)が記載されたホワイトボードが映っていたとのことです。


 同行は「お客さまをはじめ、多くの皆さまに多大なご迷惑や心配をおかけすることになり、心から深くお詫び申し上げます」と謝罪し、対象の顧客には個別にお詫びと説明を行うとしています。


 また、「社会的・公共的に大きな役割を担い、信用を旨とする金融機関として、かかる事態を招いたことについて、役職員一同深く反省いたします」と述べ、全行をあげてコンプライアンス遵守や情報管理を徹底し、再発防止に努める姿勢を示しました。



■ 相次ぐBeRealを介した情報漏えい

 西日本シティ銀行の事案は、個人情報を扱う金融機関で起きた情報漏えいだったこともあり、特に大きな関心を集めました。


 しかし、BeRealを介した情報漏えいは、この一件に限った話ではありません。2026年4月だけでも、仙台市の教員、建設機械部品の製造販売を手がける石川県の森康などで、BeRealの投稿を通じた業務関連情報の漏えいが相次いでいます。


 短期間のうちに複数のトラブルが表面化していることは、特定の企業や個人のモラルの問題にとどまらず、同アプリの仕様がもたらす構造的なリスクが、業種や職種を問わず存在している可能性を示しています。


■ TPOを奪う「BeRealテロ」のリスク

 通知が来ると、利用者は状況を問わず「今すぐ撮らなければ」という心理に駆られやすくなります。その結果、学校の授業中や更衣室、図書館、満員電車など、本来撮影が不適切とされる場所でもシャッターを切ってしまうなど、TPOを欠いた行動につながるおそれがあります。


 さらに深刻なのが、即座に撮影・投稿を促すシステムによって、背景に機密情報や個人情報が映り込んでいることに気づかないまま発信してしまう「情報漏えいの問題」です。前述したように、こうしたリスクはすでに複数の事案として表面化しています。


 BeRealの投稿は基本的に相互承認した「友達」に共有される仕組みですが、設定によっては「友達の友達」まで閲覧できたり、位置情報が共有されたりする場合もあります。また西日本シティ銀行のケースのように、撮影から数年が経過した後に拡散されるケースもあります。


 ネット上は、たとえ鍵付きアカウントや友達限定の投稿であっても、完全なプライベート空間とは言い切れません。クローズドな場に見えても、保存や転載によって外部に広がる可能性があることを認識しておく必要があります。


 とりわけ業務中の投稿は、情報管理や服務規律の観点から、多くの企業で制限される行為と考えられます。ネットに投稿するものは「誰に見られても問題ないもの」に限る、という意識が求められます。


■ 企業に求められるSNS教育のアップデート

 現在、多くの企業ではXやInstagram、TikTokなどのSNS利用に関するガイドラインを設け、不適切な投稿を行わないよう指導が行われています。しかし、「通知が来たら即座に撮影する」というBeRealの特有の仕様や、それに伴うリスクにまで踏み込んだ教育が十分に行われているかについては、課題が残ります。


 SNS利用を抑制する意図も含んで設計されたとされるアプリが、結果として「どのような状況でも投稿を促す」構造を生み、重大なコンプライアンス上の問題につながるケースも出てきました。今回の一連の事案は、企業の情報管理教育において、ツールの特性に応じたルールの見直しとアップデートが求められていることを示しています。



<参考・引用>
西日本シティ銀行【公式】(@ncbank_official)


(山口弘剛)

Publisher By おたくま経済新聞 | Edited By 山口 弘剛‌ | 記事元URL https://otakuma.net/archives/2026050106.html

    ランキングIT・インターネット

    前日のランキングへ

    ニュース設定