ジュエリーブランド「e.m.」が青山店4周年 インバウンドに手応え、海外進出拡大目指す

0

2026年05月02日 10:20  Fashionsnap.com

  • チェックする
  • つぶやく
  • 日記を書く

Fashionsnap.com

写真
 ジュエリーブランド「イーエム(e.m.)」が、青山店のオープン4周年を記念したイベントを5月12日まで開催している。今年11月に設立30周年を迎えるイーエムの歩みについてデザイナーの仲谷英二郎と飛田眞義に話を聞いた。

デザフェスからルームスへ リアルの機会が繋いだイーエムの歩み
 デザイナーの仲谷と飛田の出会いは地元大阪。同じ高校に通い、サッカー部のチームメイトでもあった。高校卒業後、ものづくりが好きだった仲谷は東京のジュエリー専門学校へ進学。飛田も就職を機に上京し、上京仲間としてよく一緒に遊んだという。その後版画を販売する会社に転職し、全国の展示会場を設営する部署に配属された飛田は、ファッションデザイナーやグラフィックデザイナー、ミュージシャンなど、「東京で何か新しいことをしたい」という強い意欲を持ったクリエイターたちと知り合った。そうした周囲の影響を受け、「自分たちにも何かできることがあるのではないか」と思い立ち、2人でものづくりを始めたという。
 最初は仲谷がジュエリーを、展示空間やインテリア、家具に関心があった飛田はタイル貼りの家具を制作。1996年に開催された「デザインフェスタ(以下、デザフェス)」に、飛田の家具の上に仲谷のジュエリーを並べて出展したことがブランドのスタート地点になった。当初はブランドだけでは生計を立てることができず、飛田が「アッシュ・ペー・フランス(H.P.FRANCE)」が展開する青山のインテリアショップ「エイチ・ピー・デコ(H.P.DECO)」で働き始めた。ブランドを手掛けていることを話すと、同店で家具とジュエリーを取り扱ってもらえることになり、次第にアッシュ・ペー・フランスの他店舗からも声がかかるようになっていったことが最初の転機だったという。同社との出会いはこの後もブランドの成長に大きな影響を与えた。同社が実施していたファッションとデザインの合同展示会「rooms(ルームス)」(2023年に終了)には、第2回から継続して出展し、同社以外のセレクトショップのバイヤーとも接点を増やした。中でも「ビームス(BEAMS)」が大々的に取り扱ったことが次の大きな転機になった。
不動の人気商品と変わる客層、30年のニーズの変遷
 “みんながよろこぶモノづくり”、“ありそうでなさそなモノづくり”をコンセプトに、現在はK18やシルバー製ジュエリーが揃うメインラインのイーエムの他、真鍮やポリエステルレジンなどを使用したコスチュームジュエリーが揃う「ラブバイイーエム(LOVE BY e.m.)」、K18をメイン素材に、小さなルビーをセッティングしたジュエリーが特徴の「リトルエンブレム(little emblem)」、ブライダルラインの「イーエムマリアージュ(e.m.MARIAGE)」といった4ラインをラインナップしている。

 立ち上げ当初は、イーエムをユニセックスジュエリーとして販売していたが、メンズライクなボリュームのあるシルバーアクセサリーが中心だった。次第に女性客をターゲットにした華やかなデザインへとシフトし、現在の主な客層は30〜40代女性だ。1998年に発表したキュービックジルコニアやパールを使ったボリュームのあるリングは、当時から現在まで常に売り上げランキングの上位にランクインするなど、女性客からの支持が根強いブランドの顔になっている。

 また、近年はビジューやパールの華やかなアイテムを抵抗なく身につける男性が増えていることから、男性客も割合も増えつつある。トレンドの変化に伴い、雑誌の撮影等での男性アイドルへのリースも増えており、新規客層の獲得につながっているという。比較的安価な価格でキャッチーなデザインのアクセサリーを提案するラブバイイーエムは若年層がブランドを知るきっかけになっており、50〜60代を中心とする設立当初からのリピーター顧客の存在もあり客層は幅広い。

 「30年前よりもジュエリーを身につける方は増えましたが、同時に作り手も増えています。僕たちのように地金を使う人もいれば、もっと手に取りやすい価格帯のコスチュームジュエリーまで、幅広いアイテムが登場しており、その中で選ばれ続ける難しさはあると思います」と飛田は話す。競争が過熱する中でも、ブランドの理念である「ありそうでない」アイデアの具現化によって差別化を図っていくという。
セレクトショップから直営店へ インバウンドにも手応え
 セレクトショップでの取り扱いを機にブランド認知を拡大してきたが、立ち上げ当初はジュエリーだけでなく、家具のデザイン、他ブランドや美容院、カフェなどの内装デザインも手掛けていたことから、よりブランドの世界観を空間を通じて表現したいという考えが強くなり、直営店拡大路線に舵を切った。2003年に白金にアトリエ兼ショップをオープン。2006年の表参道ヒルズ開業時に同館内に旗艦店を出展したことを皮切りに、新丸の内ビルや伊勢丹新宿店などの商業施設や百貨店に全国8店舗を出店。2022年4月に表参道ヒルズ店を移転する形で、南青山に唯一の路面店である旗艦店「e.m. 青山店」をオープンした。直営店を出店するエリアはイーエムを取り扱うセレクトショップがあるエリアと被ってしまうことから、次第と卸売の規模を縮小し、現在は直営店中心のビジネスを展開している。中でも4周年を迎えた青山店の売り上げはひときわ大きい。VMDチームが手掛ける凝ったウィンドウディスプレイも特徴で、偶然足を止めて来店するインバウンド客が増えていることも一因となっている。以前までは買い物の際には百貨店を訪れていたインバウンド客の間で、近年は街中を歩いて路面店での買い物を楽しみたいというニーズが高まっていることも影響しているという。

 華やかかつインパクトのあるデザインは特に中国で人気で、中国のSNS「RED(小紅書)」でも度々話題を集めている。これまでも中国やカナダ、アメリカのセレクトショップで取り扱いがあったが、今年3月に中国・上海で初のポップアップを開催。現在は中国・寧波でポップアップを実施しており、いずれも好評だという。このほか、昨年6月にはアメリカ・ラスベガスで開催されている世界のファインジュエリーと高級時計の展示会「COUTURE」に初出店。ラブバイイーエムで用意しているようなボリュームのあるデザインや過去に発売したアーカイヴデザインを、K18やプラチナ、ダイヤモンドを使用して復刻したファインジュエリーコレクションを発表し、ブランドの新境地を拓いた。今後も海外展開を強化しつつ、30周年を迎える今年11月から1年間を「30周年イヤー」とし、国内でもさまざまな取り組みを予定しているという。
◾️青山店4周年イベントの人気アイテム

橋本知佳子 (Chikako Hashimoto) FASHIONSNAP 編集記者 東京都出身。映画「下妻物語」、雑誌「装苑」「Zipper」の影響でファッションやものづくりに関心を持ち、美術大学でテキスタイルを専攻。大手印刷会社の企画職を経て、2023年に株式会社レコオーランドに入社。ファッション雑貨、アクセサリー、繊維企業を中心に取材。

    ニュース設定