写真 子どもが大きくなってくると、どこまで確認したり叱ったりするべきか迷ってしまうものですよね。今回は、反抗期の長男を強く叱ったり突き放したりすることができずに苦い経験をしたという女性・森山知夏さん(仮名・40代)の話を紹介します。
◆反抗期の息子と楽しく過ごしたい
当時、知夏さんの悩みの種は、小学5年生でちょうど反抗期だった長男。次男と一緒のときにはとくに態度が悪くなることを気にしていました。仕事でコミュニケーション不足なこともひとつの原因かもしれないと、なかなか休みの取れない連休に有休を取得。
「息子たちと1泊2日の旅行へ出かけることにしたんです。いつもは反抗的な長男ですが、車に乗り込んでシートベルトを締めるよう促すと珍しく『おん』と返事をしたので、まだまだかわいいなと思いながらガミガミ言わずにそのまま運転しました」
走行中には、みんなで楽しく過ごしたいと通勤前後や家事の途中に考えたなぞなぞを知夏さんが出題。「難しいなぁ……」と唸る長男や「ヒント、ヒント!」とねだる次男を見て、休みを取ってよかったと心から思いました。
「すごく楽しい時間でした。普段はケンカばかりの長男と次男も楽しそう。やっぱりコミュニケーション不足もあったのかと少しほっとしました。高速道路が近づいてきたので『シートベルトしてる?』と声をかけて再確認すると、『おん』と良い返事が返ってきました」
◆突然「ピーッ!」と笛で止められて
長男と次男の気持ちがいいほど素直な返事を受け、そのまま高速道路の入口へ向かった知夏さんでしたが……「ピーッ!」と笛の鳴る音がして、青い制服の警察官と赤い旗が視界に入ってきました。嫌な気持ちにはなったものの、止められる心当たりはありません。すぐに助手席の窓を開けて対応します。
「どうして止められたのか不思議に思いながら、警察官に『なんでしょうか?』と尋ねると、後部座席の長男が返事だけしてシートベルトをしていなかったことが判明したんです。思わずその場で叱ってもふざけて返してくる長男に、イライラしながら違反切符の手続きをしました」
免許に違反点数が付くことになった知夏さんは、ガクンと落ち込みます。そして長男にもういちど注意。次男にも「事故ったら死ぬよ!」と声をかけ、今度こそきちんとシートベルトをするよう促しました。そしてミラーで2人がシートベルトを引くところを確認。
「その後も旅行を続けました。次男がまたクイズを出してというので、たくさん考えておいてよかったと思いながら出題。道の駅でごはんを食べて景色を見て買い物をして、子どもたち2人も楽しそうだったので、やっと私の気持ちも落ち着いてきたときでした……」
◆振り返ると、そこには血まみれの長男が
あとは車でホテルへ移動するだけ。車に乗り込んでアクセルを踏み、楽しかった気持ちを噛みしめていたとき、わき見をしていたのか、前方の車が大きく車線をはみ出てきたのです。反射的にブレーキを踏んでハンドルも切った知夏さん。
「気づくのが早かったこともあって衝突は免れました。ただ、避けたときに、後ろから前の座席に何かがぶつかったような衝撃を感じたんです。おそるおそる振り返ると、そこには血まみれの長男がいました。顔面を押さえた両手から、ボタボタと血がしたたり落ちていました」
長男はシートベルトを着用しておらず、急ブレーキをかけた拍子に助手席のヘッドレストに衝突。かなりの大量出血だったためすぐに病院へ駆け込みます。知夏さんはその間ずっと「なにかあったらどうしよう」と震えが止まらなかったと言います。
◆シートベルト着用は、発車前に目視で確認を
「検査の結果は骨も折れていなくて本当にホッとしました。ただ、大事故になっていた可能性もあったと思うとあらためて背筋がゾクッ。長男がシートベルトをしているかは運転者として毎回、発車前に振り返って確認するべきだったし、できないなら車に乗せないと突き放すべきでした」
さらには「翌日も鼻が痛いという長男に付き添ってホテルで過ごし、血まみれになった車内のクリーニングをしなければならず、楽しい旅行が最悪の思い出になってしまいました」とも話してくれました。子どもが大きくなっても、ときには安全のために細かい対応が必要かもしれません。
<文/山内良子>
【山内良子】
フリーライター。ライフ系や節約、歴史や日本文化を中心に、取材や経営者向けの記事も執筆。おいしいものや楽しいこと、旅行が大好き! 金融会社での勤務経験や接客改善業務での経験を活かした記事も得意。