写真 「モデルが持つ創造性の可能性を広げたい」と、19歳から12年にわたって国内外でキャリアを積んできたモデルのモーガン蔵人は語る。長年在籍したモデル事務所ビーナチュラル(BE NATURAL)から独立し、この春、元モデルで実業家の栗塚寛と共同で、メンズモデルマネジメント/クリエイティブプロデュースカンパニー「グレイマネジメント(GREY MGMT)」を設立した。異なる専門性を持つふたりがタッグを組んで目指した、新しい形のモデル事務所とは。
12年を経て、人のためにも奮闘したくなった
モーガンはモデルと並行して、ファッションYouTuber アワーズ(Our’s)のメンバーとしても過去に活動。自身のインスタグラムのフォロワーは15万人を超える。そうした数字からインフルエンサーと捉えられることもあったが、パリをはじめとする海外ファッションウィークに出演するなど、モデルとして挑戦を続けていた。「仕事やモデルならではのエピソードを発信することを楽しんでいたが、自分の本業はモデル。とはいえ、時代の変化とともに、どちらも本気でやっていることはポテンシャルだと思えるようになった」(モーガン)。
また、30代という節目で「セカンドキャリア」に目を向けるようになった。「モデルのキャリア形成は自覚的に動かなければ難しい」という経験から、「個々のセカンドキャリアまで見据え、思う存分モデル活動ができる環境」を作るのが、次世代に向けた自身の役割だと考えた。「自分のために努力するのは素晴らしいけれど、人のためにも奮闘するのも尊い。現役モデルとして一緒に走りながら、新しい価値を見つけ、価値を更新していく。そんな事務所を目指したい」。
なお栗塚とは、ファッションウィークのキャスティング(オーディション)のために訪れていたミラノで初対面。栗塚は繊維商社を経てモデルを始め、「ドルチェ&ガッバーナ(DOLCE&GABBANA)」のランウェイを筆頭にラグジュアリーブランドのキャンペーンに起用された。現在はモデルの一線を退き、複数事業を経営。ファッション・ライフスタイル領域において、D2Cブランドの運営・グロース支援・マーケティングなどを一気通貫で展開している。モーガンがモデル事務所の構想を相談した際、海外での挑戦というバックグラウンドを持つことなどから共感し、協力を決断。グレイマネジメントでは、モーガンがクリエイティブディレクション、栗塚が経営戦略を務める。
中間にある価値を共創する
モデルとインフルエンサー、タレントと俳優、カテゴリーの境目が曖昧になっていく時代に、「その間」を体現できる存在を育てるというのがグレイマネジメントの目標だ。一般的なエージェンシー型の“所属”にとどまらず、モデルと共に価値をつくる「共創」をキーワードに据える。モーガンと栗塚、マネージャー、所属モデルがチームとなり、スケジュールや案件管理、ウォーキングといった基礎にとどまらない、セルフブランディングとプロデュース力を育てていく。
事務所の名前について栗塚は、「グレイは白と黒の中間色で、無限の可能性を持つ色。交わることで深さを持ち、重なることで輪郭を持つ色。白にも黒にも染まれるけれど、中途半端ではなく、その間にある価値を共に創造していく」と話す。
5月下旬に実施予定の公開オーディションでは、若干名の採用を予定。オーディションの様子は、事務所設立に向けて立ち上げたYouTubeチャンネル「COLOURS Podcast」を通じて、ドキュメンタリーとして配信する。すでに数十人から問い合わせがあったが、所属については「オーディションで直接会ったうえで、一人ひとりの可能性を見極めたうえで慎重に検討する」という。
海外進出とセカンドキャリアを支援
グレイマネジメントでは、基本的なモデル育成のレッスンに加え、海外進出とセカンドキャリアの支援も行う。パリやミラノのファッションウィークへの出演を目指すモデルは、一部の“スーパーモデル”を除いて期間中の生活費を自腹で賄うことが多く、負担が大きい。そこで新事務所では、費用面やモーガンと栗塚の実体験を踏まえたアドバイスなどでサポートする。
モーガン自身も今年1月に、5年ぶりにパリのランウェイに再挑戦している。「現地の出費だけで70万円ほどかかり、そこに日本での家賃や生活費が加わる。時間と資金を費やしても、出演できる保証はないというシビアな世界だが、それでも出演できた時の達成感は何者にも変え難い」。所属モデルを支援しながら、モーガン自身も共に海外コレクションに挑戦し、並走する。
4月末時点で「COLOURS Podcast」の登録者数は3万人弱。パリでモデルに挑戦したシリーズは12万回再生され、反響が高かったという。
セカンドキャリアの支援は、個々の興味関心や展望によって柔軟に対応。「言語のレッスン、カメラ、エンジニアなど何でもいい。自分を磨くために覚悟してやりたいものがあるならサポートする」(モーガン)。ただし、引退後の“逃げ道”を作るためではない。「見た目の良さやフォロワー数だけでなく、創造性を土台にした“影響力”を持つ新しいモデル像を模索する」ことが目的だ。SNSなどの発信やコンテンツ周りには栗塚のマーケティング知見を生かす。
栗塚は育成の裏テーマとして教育も挙げる。「スポンサー様やクライアント様がいて、現場を共につくるクリエイターの方々がいて初めて『モデルの仕事』が生まれる。才能や勢いがあるからこそ、周囲への敬意やプロフェッショナリズムがなければ、長く続けることは難しいケースも見てきた。だからこそ、仕事が生まれる構造を理解し、感謝を忘れずに現場に立てるモデルを育てたい」。
「僕らも挑戦者」 ともに走る仲間を集める
事務所の規模は、あくまで少数精鋭にとどめる方針だという。「早く行きたければ一人で行ける、遠くへ行きたければ皆で行ける、という言葉がある。でも、良いチームは早く遠くへ行けるから、一緒に走ってくれる仲間を待っている」(栗塚)。
COLOURS Podcastでは、モーガン個人だけでなく事務所の動向も発信。モデルの仕事の舞台裏を積極的に紹介していくとともに、業界内のクリエイターやビジネスパーソンなどを招いたトークセッションといったコンテンツを発信していく。
モーガンは「グレイマネジメントでの活動は、僕ら自身が挑戦し続けることが大前提」と語る。「正解を持っているわけではなく、まだ僕たち自身も何者かになろうともがいている、いわば一番の挑戦者。夢を見ることの美しさを体現しながら、挑戦を後押しできる存在になりたい」とし、自身も6月のメンズファッションウィークでパリとミラノに挑戦する予定だ。
■グレイマネジメント:公式サイト