73年続く“珍百景”映画館!「エプロンでも気軽に」来られる塚口サンサン劇場

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2026年05月07日 18:20  cinemacafe.net

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珍百景に認定された映画館/塚口サンサン劇場提供
兵庫県尼崎市にある「塚口サンサン劇場」。駅を出てすぐの場所にあり、73年にわたって地域の人々に親しまれてきた老舗映画館だ。SNSでは「残念ながら『最高の映画館100選』には選ばれませんでしたが、『珍百景』に選ばれた映画館です」というユーモアあふれる投稿が目を引いた。

何がそんなに特別なのか。最新設備を誇る巨大シネコンとは違う。けれど、ここには映画を“映画館で観る”楽しさがある。昭和の空気を残した館内、作品ごとに調整される音、ふらっと立ち寄れる距離感。そして、劇場を支える人と地域のつながりだ。

同館によると、73年という歴史の中で、映画館の役割は時代とともに変わってきたという。そのうえで、2010年以降に大切にしているのは「映画を映画館で見ることの楽しさを一人でも多くの方に伝えていく」こと。形を変えながら、その楽しさを届け続けることが「塚口らしさ」だと話す。

同館には、昔から使われている印象的なキャッチフレーズがある。

「エプロンでも気軽に来られる」

なんとも温かい言葉だ。特別な日だけの場所ではなく、買い物帰りでも、家事の合間でも、近所を歩くようにふらっと立ち寄れる映画館でありたい。劇場側もこの言葉を「とてもいいフレーズ」と感じ、今も大切に使っているという。

“珍百景”としての魅力を尋ねると、まず挙がったのは音響へのこだわりだった。ただし、最新機材を次々に導入するという意味ではない。すべての上映作品に対して的確な音量を設定し、時には細かく調整する。映画館でしか聞けない音を届けるための、日々の積み重ねがある。

大きな爆音だけが魅力ではない。静かな場面の余韻、セリフの距離感、音が身体に残る感覚。そうした体験を作品ごとに整えていく。古い映画館だからこそ、設備の新しさではなく、映画をどう届けるかに職人のような目が向けられている。

地域との関係も、この映画館を語るうえで欠かせない。

長く同じ場所で映画を上映できたのは、地元の人々の温かな支援があったからだという。作品によっては全国から多くの観客が訪れる。そんな時、周辺の飲食店ではアルバイトの人数を増やしたり、映画にちなんだラテアートを提供したりすることもあるそうだ。

映画を観る人が街に来る。街の店が少し特別な準備をする。映画館だけで完結せず、周辺の飲食店や地域全体に楽しさが広がっていく。劇場側は「当館が地域活性化の一助になれば」と語る。

最新のシネコンには、快適な座席や大きなスクリーン、洗練された設備がある。一方で、塚口サンサン劇場には、年月を重ねた映画館だからこその味わいがある。新しさではなく、空気そのものを楽しむ時間。昭和の雰囲気を感じながら、映画館全体で作品を味わうような贅沢だ。

では、同館にとって一番の誇りとは何か。答えは、設備でも歴史でもなかった。

「素晴らしいお客様と、日本一と自慢できるスタッフたち、人との縁に恵まれていることが一番の誇りです」。

73年続いた映画館の中心にあるのは、やはり人だった。観に来る人、支えるスタッフ、周辺の店、地域の人々。その縁が積み重なって、塚口サンサン劇場という場所を作ってきた。

これまで、さまざまなことにチャレンジしてきた同館。これからは、その経験や体験を次の世代にどう残していくかに取り組んでいきたいという。

「エプロンでも気軽に来られる」映画館。日常のすぐそばに、スクリーンの灯りがある。そんな景色を、これからも守り続けていく。




(シネマカフェ編集部@SNS班)

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