【男子バレー】正真正銘のワールドクラス、ブリザールが日本でのプレーを選択した理由

0

2026年05月08日 09:30  webスポルティーバ

  • チェックする
  • つぶやく
  • 日記を書く

webスポルティーバ

写真

Why Japan? 私が日本でプレーする理由

アントワーヌ・ブリザール/大阪ブルテオン
インタビュー前編(全3回)

サッカーのJリーグやプロ野球だけでなく、バレーボールのSVリーグにも、さまざまな国からやってきた外国籍選手が在籍している。彼らはなぜ、日本を選んだのか。そしてこの国で暮らしてみて、コートの内外でどんなことを感じているのか。シリーズふたり目のバレーボール選手は、直近の五輪を2連覇したフランス代表のセッターで、今季から大阪ブルテオンに加わった正真正銘のワールドクラス、アントワーヌ・ブリザールだ。

【仲間から「えぐい」と言われるクオリティー】

 チームメイト、対戦相手、指導者、関係者、ジャーナリストと、バレーボールに通じる人々が異口同音にこんなことを言う。

「アントワーヌ・ブリザールこそ、今季の大阪ブルテオン、いや、SVリーグで最大の注目選手のひとりだ」と。

 経歴だけでも、それは明らかだ。この5月で32歳になるフランス代表のセッターは、2021年に開催された東京五輪でフランス代表史上初の金メダル獲得に貢献。そこから2022年のネーションズリーグを制し、2024年にはネーションズリーグと五輪を連覇し、この競技におけるフランス黄金時代を築いた中心人物のひとりだ。クラブレベルでは、出生国フランスを皮切りに、ポーランド、ロシア、イタリアというトップクラスの各国リーグでプレーしてきた。

 パフォーマンスを見れば、それは確信に変わる。196センチの高身長のセッターは、常に仲間と状況を見ながら、その時々で最良の選択と思われるプレーをする。ギリギリまで見極めて高速のトスをノールックで出したり、完璧なクイックで鮮やかなスパイクを導き出したり、フェイクのツーで自ら得点したり──トリッキーでスキルフルなプレーの数々は、日本のバレーボールファンに新たな楽しみをもたらしている。

「えぐいっすよ」とブリザールのクオリティーを評したのは、チームメイトの山本智大だ。

「まず何よりもトスが正確で早いので、相手ブロッカーが間に合わない。それに自ら得点も奪える。(フェイクの)ツーで仕留めるのも、抜群にうまいです。(リベロの)自分は練習の時から、それを狙ってパスを出すこともあります。自分の得点みたいな感覚で、めちゃめちゃ面白いんです。彼とプレーする時、周りの選手の目が輝いていますよ」

【「妻も自分もずっと日本に興味を抱いていた」】

 ブリザール自身、試合中や試合後のインタビューでは、真剣な眼差しと愛らしい笑顔を垣間見せる。そんなトッププレーヤーの人柄にも触れてみたいと思い、春を感じる4月のある日、パナソニック アリーナを訪れた。

 約束の時間よりも少し早くコートに現れたブリザールには、聡明な第一印象を受けた。真顔でじっとこちらを見つめながら、企画の趣旨と最初の質問──いつもどおりに来日の理由から──を注意深く聞いている。

「パリ五輪で連覇を遂げてから、実は少し苦しんでいたんだ」とブリザールは切り出した。フランス語の訛りがほとんどない英語で、明快な言葉を発する。

「地元開催の五輪で金メダルを維持するために、文字どおりすべてを出し尽くした。だから目標が達成されてからは、それまでと同じモチベーションを保つのが難しくなっていたんだ。同じルーティンでも、以前のように身が入らなくなっていったというか。

 だから、何か変化が必要だと感じたんだ。バレーボールだけでなく、生活をするうえでも。そんな時に、大阪ブルテオンからオファーをもらった。即座に快諾したよ。なぜなら、妻も自分も日本のことにずっと興味を抱いていたからね」

 そこには彼がフランス代表の一員として、同国史上初の金メダルを獲得した思い出の国だからという理由もあるのだろうか。

「いや、それはどうかな」とブリザールは返答する。自らに揺るぎない芯を持っているひとは、容易く同意したりしない。

「ただ、(ロラン・)ティリ監督(21年の五輪優勝監督にして元ブルテオン監督。現在は日本代表を率いる)の存在は大きかったかもしれない。ティリさんはすっかり日本と恋に落ちていて、僕に日本とブルテオンのすばらしさをたくさん教えてくれた。そして監督も僕も、日本での美しい記憶を持っている。

 東京五輪を含め、アジアに遠征する時は大体いつも沖縄で合宿していたからね。東京五輪で優勝した時のことは、もちろん最高の思い出だ。それが移籍の直接的な動機になったかどうかはともかく、あの場所に戻ることができ、妻に自分が過ごしたオリンピック・ヴィレッジを案内できたのは、最高の経験になったよ」

【「うわべだけでは知ることのできないこの国を理解するために」】

 少しずつ笑顔をこぼし始めたブリザールには、渡日前から日本に関する予備知識があったようだ。

「フランス代表の活動で日本を何度か訪れていたから、確かにそうなんだけど、あくまで予備知識だね。知っているようで、実は何も知らない。そんな感じだったから、実際に住んでみたいと思ったんだ。

 それにあるいはあなたは知っているかもしれないけど、今のヨーロッパ、特にフランスでは、日本が大人気なんだ。日本の伝統や文化、ポップカルチャーが広く伝わり、実に多くの人々がこの国に興味を抱いているし、訪れてみたいと思っている。

 妻も僕もそうだったから、最高の機会だと喜んだ。代表の活動や旅行で訪れたりするだけでは、わからないことも多いから、実際の日本を肌身に感じたかったんだ。完璧な国なんて存在しない。フランスにも、すばらしいところとそうでないところがある。だからきっと日本もそうで、うわべだけでは知ることのできないこの国を理解するために、移籍をすぐさま決断したんだ」

(つづく)

アントワーヌ・ブリザール Antoine Brizard
1994年5月22日生まれ、フランス・サン=ジャン=ド=リュズ出身。2021年にフランス代表の正セッターとして、東京五輪を制してフランス男子初の金メダルを手にした。以後、2022年と2024年ネーションズリーグ(大会MVPとベストセッター)を連覇し、パリ大会で五輪も連覇し(大会ベストセッター)、フランス黄金時代を築いた一員に。クラブレベルでは、パリ・バレー(フランス)、スペシアズ・ドゥ・トゥルーズ(フランス)、プロジェクト・ワルシャワ(ポーランド)、ピアチェンツァ(イタリア)でタイトルを獲得。2025年6月に大阪ブルテオンに入団し、自身初の日本での生活を始めた。

    ランキングスポーツ

    前日のランキングへ

    ニュース設定