「平日昼のガラガラ時間」がむしろ“収益源”に サウナ業界で始まった空き時間ビジネス

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2026年05月23日 07:20  ITmedia ビジネスオンライン

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サウナのサブスクが登場、内容は?

 「部長! 昼休みにサウナへ行ってきますね」――。


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 ひと昔前なら……いや、今でもそんなことを言われると、「いやいや、仕事あるでしょ?」などとツッコミが入るはず。しかし最近、平日の昼間にサウナへ行く人が少しずつ増えているようだ。


 とはいえ、人気サウナは決して安くない。都内の有名施設では、1回2000〜3000円ほどかかるケースも珍しくない。しかも夕方や休日になるとごった返し、「整う」どころではないこともある。


 そんなサウナ業界で、“空いている時間”そのものを商品化するサービスが登場した。スタートアップのOPTIMIST(東京都目黒区)が運営するサブスク「FLEXKEY(フレックスキー)」だ。


 サービスの仕組みはこうだ。月額6490円(※)で、提携するサウナ・温浴施設を利用できる。ただし、いつでも自由に使えるわけではない。対象となるのは、各施設が指定する「低稼働時間帯」だ。例えば平日の昼間や深夜。サウナ室がガラガラになりやすい時間帯である。


(※)マクアケでの購入者は、2027年4月まで5478円。


 現在の提携施設は、都内を中心に44カ所。「PARADISE三田」「ライオンサウナ新橋」「生姜サウナ 金の亀」など人気施設が並ぶ。


 このサービスは2025年11月に、応援購入サービス「マクアケ」で販売した。すると、想定の3倍となる約500人の購入者が集まった。


 「平日の昼間でもサウナへ行きたい」。そんな需要が、思った以上に眠っていたのである。利用者視点で見ると、このサービスの特徴は「定額でサウナを利用できる」点にある。一方、ビジネス視点で見ると、「空いている時間を収益化できる」点にある。


●空いている時間をつなぐ


 考えてみると、サウナ施設はピーク時と閑散時の差が大きい。夕方や休日は混み合う一方で、平日の昼間は人が少ない。しかし、利用客が少なくても、光熱費や人件費などの固定費はかかり続ける。


 OPTIMISTの松山駿佑社長によると「多くの施設は『どうすれば、平日の稼働率を上げられるのか』といった課題を抱えている。その課題をどうすれば解決できるのかといった視点に立って、このサービスを始めた」という。


 実は同社、もともとはサウナ施設そのものを開業しようとしていた。しかし、土地探しや近隣住民との調整の難しさから断念。その過程で「人気施設でも昼は空いている」という業界の構造に気付いた。


 そこで発想を転換した。「サウナをつくる」のではなく、「空いている時間をつなぐ」方向へかじを切ったのである。


 参考にしたのは、ネット印刷などを手掛ける「ラクスル」のビジネスモデルだったという。印刷会社の空いている設備を活用することで、低価格を実現する仕組みだ。


 サウナを増やすのではなく、すでに存在する“空き時間”をどう埋めるのか。FLEXKEYは、そうした発想から生まれたサービスともいえる。


 実際、飛行機やホテルなどでも、空席や空室をどう活用するかは大きなテーマになっている。FLEXKEYもまた、サウナ施設の「昼のガラガラ時間」を、新たな収益に変えようとしているのである。


 「ふむふむ。アイデアは面白そうだけど、運営はうまくいっているの?」「既存客が何度も利用すれば、施設側のメリットはないのでは?」などと思われたかもしれない。もちろん、そうした課題も存在する。


●サウナサブスクの課題


 サウナのサブスクを始めたところ、想定外のことが起きた。当初ターゲットとして考えていたのは、学生やフリーランス、シフト勤務の人たちだった。平日の日中に動きやすい人たちである。ところが、利用者の約7割はビジネスパーソンだった。しかも、リモートワーク中心ではなく、出社している人も多いという。


 理由の一つが立地だ。提携施設は、港区エリアが多い。赤坂や新橋など、オフィス街の近くである。そのため、「昼休みにちょっとサウナに行ってくる」という使い方が広がった。ランチはササっと済ませて、その足でサウナに行く。気分を切り替えて、午後の仕事へ戻る。そんな新しい利用スタイルが生まれていたのである。


 さらに、運営側を驚かせたのがヘビーユーザーの存在だった。会員の約25%が月10回以上利用していることも分かってきた。中には、毎日の風呂代わりのように使う人もいた。


 利用者にとって、月額6490円の価格は魅力的だ。毎日使えば、1回当たり210円ほどである。しかし施設側からすると、話は変わってくる。


 「想定以上に使われて、困っている」。そうした声が出始めたのだ。もともと空いている時間帯とはいえ、同じ人が毎日のように来店すれば、既存客とのバランスにも影響する。


 そこで6月以降の新規会員には、同一施設の利用回数に制限を設けた。サウナ施設は月4回、スーパー銭湯は月8回、銭湯は月12回まで。制限を設けることで、利用を複数施設へ分散させる狙いがある。


 サブスクといえば「たくさん使うほど得」というイメージが強い。しかし現実には、利用が一部に偏りすぎると、施設側とのバランス調整が必要になる。


 サウナサブスクの課題は、施設側の稼働率向上と混雑抑制をどう両立させるかである。こうした問題も含め、現在はサービス設計を模索している段階といえそうだ。


 以前、サウナは「休日の楽しみ」だった。しかし今は、「昼休みのリセット」に変わり始めている。そのうち会社員同士の会話も、「今日、どこで整った?」から始まるのかもしれない。


(土肥義則)


※下記の関連記事にある『【完全版】「平日昼のガラガラ時間」がむしろ“収益源”に サウナ業界で始まった空き時間ビジネス』では、配信していない図表や写真とともに記事を閲覧できます。



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  • 私もガラガラ時間にサウナに行くの好き。
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