「煙で前が見えない…!」解体予定ビルで東京消防庁と三井不動産が“リアル防災訓練”‐ 火花飛び散る“扉破壊”も

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2026年05月28日 07:30  マイナビニュース

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日本橋エリアに多くのビルや物件を持つ三井不動産株式会社は、日本橋の街づくりに加えて、街の安全強化や防災に向けた取り組みも積極的に進めている。その一環として5月26日、三井不動産と東京消防庁の合同で防災訓練が行われた。


三井不動産では訓練内容に力を入れており、日本橋エリアの解体予定ビルを会場に、金属扉の破壊や煙体験も交えた本格的な内容を実施。スリリングな緊張感と迫力に満ちた現場の様子をレポートする。

○解体予定のビルを使ってリアルな訓練を実施



南海トラフ巨大地震や首都圏直下型地震などの懸念が強まるなか、事前に地震への備えをしておくことは、今や大企業から中小企業まで一般的な心構えである。特に三井不動産では大規模災害に即応できるよう、本社・日本橋室町三井タワーに常設の「危機管理センター」を設置。他にも同ビル地下に大掛かりなエネルギー施設を構築し、設備・備蓄・外部通信・ライフライン維持など多方向から地震に耐える万全の体制を整えている。


もちろん、社員への様々な防災研修にも不足はなく、その一部として行われているのが、解体中のビルを使った訓練だ。三井不動産では2021年3月に東京消防庁と協定を締結し、同社が所有する解体予定の建物で実践的な共同訓練を実施。消防署・地域の消防団・三井不動産グループの自衛消防隊(管理スタッフ)が参集しての、本格的な内容である。

○エンジンカッターでの扉破壊は火花が飛び散る迫力!


今回の訓練会場となったのは、日本橋三越本店から近いビル解体工事現場である。朝10時前の訓練開始前には、三井不動産の関係者や東京消防庁と消防団の方々、そして筆者を含む記者・報道陣が集合。訓練前には三井不動産の担当者よりマスクと折り畳み式ヘルメットが配られ、緊張が高まった。


ヘルメットとマスクを着用して現場に入り、稼働中のエレベーターでビル8階へ行くと、ワンフロアに関係者が密集していた。開会挨拶と訓練内容のブリーフィングが行われ、足元や薄暗い所などへの注意喚起などののち、一同の掛け声をもって訓練開始である。ご安全に!


まず行われたのは、地震で閉じ込められた人の救出を想定した扉破壊訓練であった。ここでは丸ノコのようなエンジンカッターで金属の扉を切断する。訓練時は扉に切れ込みを入れるだけであったが、実際には扉を三角形に切って穴を開け(※こうすると四角形に開ける時より切る回数が1回少なく、そのぶん早く済むのだ)、その穴から内側の確認をしたり、手を突っ込んで鍵を空けたりするという。


現場では消防士や消防団員が安全配慮のため細かな調整や連絡を行い、実際の救助活動のような緊迫感である。消防士がエンジンカッターを起動すると、うなり声のようなエンジンの駆動音が強く耳を打った。高速回転するカッターが硬い金属扉を少しずつ切開していくたび、火花が激しく弾け散り、金属の焼ける煙と熱気が頬をなでる。生き埋め・閉じ込めの被災者は災害発生から約72時間で生存率が著しく下がるというが、その救助現場では一分一秒を争うなか、こうした熱い格闘が行われるのだと実感できた。


○「もしも本物の煙だったら……」と怖くなる体験も


続けて行われたのは、火災により煙が充満して視界が遮られた状況の体験訓練。ここでは締め切られた部屋で煙発生器を起動させ、煙の広がり方や視界の状況などを確認していく。


発生器から放出された煙は一気に広がり、天井へと上昇して部屋全体に拡散。狭い室内でも反対側がまともに見えず、視界はほぼゼロとなった。これでは、まともに立って歩くことすら不可能だろう。


訓練用の煙は人体に無害でバニラの香りも付いていたが、本物の火災による煙は一酸化炭素や亜硫酸ガスなど有毒成分を大量に含み、おまけに炎に晒され高熱化している。もしも煙に飲み込まれたら全く身動きが取れないまま、有毒ガスと熱にやられて……と想像すると、寒気を覚えざるを得ない。


煙発生時の避難方法についてもレクチャーを受けた。空気よりも軽い煙は上へと流れて行くため、口と鼻をハンカチなどで押さえてガスから隔てつつ、なるべく低い姿勢で這い進んでいくのがよいらしい。しかし実際に屈んでみると、確かに部屋の下方は煙も少なく視界も多少あるが、その上下幅は本当にごくわずか。体の小さい子供ならともかく、大人は前進するだけでも困難を強いられるはずだ。こうした極限状況でいかにパニックにならず、時には周囲の人々を保護しつつ、冷静に行動できるかが肝心である。

○粉末消火器を使う時は後方に注意!


最後に行われたのは消火器の実機使用訓練。当初は粉末消火器を用いる予定であったが、この日は諸事情あって代わりに水消火器で行われた。消火の担当者が「火災発生! 安全ピンよし! ホースよし!」など細かな声掛けをした後、火災現場へ見立てたカラーコーンめがけて消火器の水を放出させた。


なお、粉末消火器の場合は手順どおりに一度噴射させると、その後はボトル内が空になるまで粉末放射が止まらなくなる。このため、使用状況によっては飛散した粉末が周囲に充満し、煙のように視界を奪ってしまうリスクについても紹介があった。対策としては密閉空間での使用は避け、後方に避難路をしっかり確保した状態で噴射するのが好ましいとのことだ。こうした知見に実体験を交えてふれられるのも、消防と共同による訓練の利点である。


訓練終了後には東京消防庁日本橋消防署の消防司令長・鈴木宣夫氏、および三井不動産の担当・小林優喜氏による講評が行われた。鈴木氏は「大規模災害時は消防だけでは対処しきれない」という懸念を踏まえ、その対策として消防と地域との連携を促進している三井不動産への謝意を伝えた。



防災訓練は東京など都市圏に限らず、日本国内にいる誰にとっても無縁ではない。「もしも大地震が襲ってきたら……」という想像は確かに恐ろしいが、恐怖とは多くの場合「対処法を知らない、分からない」ことを発端とする。訓練を通じてリスクと対処を知ることは有事の備えだけでなく、平時の心配を軽くして健やかな生活を営むことにも繋がるのだ。



デヤブロウ 東京都在住のフリーライター兼イラストレーター。長年の趣味である東京都内の散策好きが高じ、都内のグルメ・観光・住環境など地域情報記事を主に執筆するほか、人物や企業のインタビュー取材記事や生活ハウツー系記事でも活動中。「東京シティガイド検定」取得済。街歩き後の銭湯&居酒屋巡りが大好き。 この著者の記事一覧はこちら(デヤブロウ)

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