採用コスト半減、離職ほぼ解消 沖縄ホテル企業の「脱・外注任せ」の外国人採用

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2026年05月28日 07:50  ITmedia ビジネスオンライン

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外国人労働者向けに研修を行うリゾーツ琉球職員のティムシナ・アショク・クマルさんら

 多くの業界で人手不足が深刻化する中、外国人労働者はもはや補助的な存在ではなく、企業活動を支える重要な役割を担う。


【画像】採用コスト半減、離職ほぼ解消 沖縄ホテル企業の「脱・外注任せ」の外国人採用


 厚生労働省によると、2025年10月時点の国内の外国人労働者は257万1037人で過去最多を更新。同時期の国内就業者全体の約4%を占め、増加率は3年連続で10%を超えた(参照:PDF)。


 就労目的で来日している人材は、比較的定着率も高い。出入国在留管理庁によると、「特定技能(一定の専門性や技能を持つ外国人向け在留資格)」で働く外国人労働者の自己都合離職率は、2022年11月時点で16.1%だった。分野別では「宿泊」(32.8%)、「農業」(20.1%)の順で高い。新卒社員の3人に1人が3年以内に離職するとされる昨今では、決して高い数字ではないだろう。ただ、言語や生活文化、人間関係の壁から離職につながるケースも少なくない。


 そうした中、外国人労働者の定着率向上と採用コスト削減を両立した企業がある。沖縄と福岡でホテル10施設を運営する、リゾーツ琉球(沖縄県豊見城市)だ。


 同社は以前、人材紹介会社経由で外国人労働者を採用していたが、言語の壁から社内で十分なコミュニケーションが取れず、離職率の高さが課題となっていた。そこで2024年に採用と支援を内製化。定着に向けた取り組みを強化した結果、離職者が減少し、紹介料や支援料などの採用コストも半減した。


 知見を生かし、2025年8月に人材紹介・定着支援サービス「LIP3(リップスリー)」を開始。名称はLink(つなぐ)、International(国際)、Peace(安心)の頭文字だ。宿泊業や飲食業を中心に、特定技能や「技術・人文知識・国際業務(技人国)」の在留資格を持つ人材を仲介し、2028年度までに200人の派遣を目指している。


 社内外で、どのような取り組みを行っているのか。経営支援部の正司雄也部長と、技人国の資格を持つ、ネパール人のティムシナ・アショク・クマルさんに話を聞いた。


●「不安要素」を取り除く独自のホテル研修


 4月下旬、リゾーツ琉球が運営するリゾートホテル「琉球温泉 瀬長島ホテル」(豊見城市)の一室では、外国人労働者向けの就業前研修が行われていた。「ザ・リッツ・カールトン沖縄」で5年間の勤務経験があるアショクさんが講師となり、日本で働く上で必要な知識を日本語で一つ一つ確認していく。


 「在留期間を終えて母国に帰る時、在留カードはどうしますか?」「運転免許を持たずに事故を起こしたらどうなりますか?」「日本の大衆浴場に入る時、服は着たままですか?」


 参加したのは、沖縄本島北部で開業予定の高級ヴィラで働くネパール、スリランカ、フィリピン出身の男女5人。日本語学校を卒業したばかりで、日本での就労は初めてだった。ホテル運営会社にとって初の外国人採用だったことから、定着支援を目的に、リゾーツ琉球へ研修実施を依頼したという。なお、今回は人材紹介ではなく、研修支援のみを担った。


 3日間にわたる研修では、日本の生活マナーや重要法令、給与明細の見方などの座学に加え、ベッドメイキングやフロント業務などの実務も学ぶ。接客用語の確認や客室点検の所要時間計測、フロント周辺での表情・姿勢の指導など、特定技能の学習内容を実務に近い形で落とし込んでいる。


 研修を実施する背景には、受け入れ企業側の不安がある。


 正司氏は「初めて外国人労働者を採用する企業は、サービスの質や生活マナーへの理解度に不安を覚えることが多いです。そのため、事前研修は企業、人材の双方にメリットがあると考えています」と語る。


●外国人の「本音」を引き出すことを重視


 2025年6月に特定技能人材の受け入れを支援する「登録支援機関」となった同社。アジアの日本語学校や、国内41校の日本語学校・専門学校と連携し、10カ国以上、2000〜3000人規模の人材ネットワークを持つ。


 LIP3のサービス内容は、出入国の際の送迎、住居確保、定期面談などの10項目の法定支援(企業に義務付けられた外国人支援)にとどまらない。手厚い事前研修の他、外国人労働者との継続的な対話を重視する。ネパール語、英語、日本語など6カ国語を扱うアショクさんが日常的に相談に乗り、職場や私生活の悩みを聞く。自身も日本で働く外国人であるため、外国人労働者が抱えやすい不安や悩みが理解できるという。


 「何か不安があっても、うまく伝えられないことから、『問題が大きくなるかも』『仕事がなくなるかも』と我慢してしまうことは多いです。私は彼ら、彼女らの母国語で会話ができるので、まずは信頼関係を築き、本音を話してもらうことを大切にしています」


 社内の外国人労働者との面談では「日本人同士の飲み会に参加したいけど誘われない」といった悩みも相談されるという。そうした生の声を雇用主と共有し、改善につなげる。


 外国人労働者同士の交流を深めるために、リゾーツ琉球では今後、年1〜2回、支援先企業で働く外国人労働者を集めたイベントの開催も考えている。過去に社内で開催したところ、反響があったという。正司氏は「仕事や生活の情報交換ができるので、定着率向上に向けた良い催しになっています」と手応えを語る。


 在留期間が最長5年の特定技能「1号」から、在留期間の上限がなく、家族帯同も認められる「2号」への移行を見据え、同社では試験対策も実施する。1号は一定の知識や経験を持つ外国人労働者向け、2号はより熟練した技能を持つ人材向けの区分だ。これまで2号は建設や造船など一部分野に限られていたが、政府は深刻な人手不足を背景に、2023年に宿泊業や外食業、農業などへ対象分野を拡大した。


 同社は日本語教育や外国人労働者支援を手がけるヒューマンアカデミーと提携し、月に3回1時間ずつオンラインで日本語の授業を提供。正司氏は「企業側は即戦力を求めがちですが、日本語力や適応力には個人差があります。就職後も継続して学べる環境づくりが必要です」と意義を語る。


 こうした採用・定着支援サービスの料金は、特定技能1号人材の場合、人材紹介料が25万円(税抜き)、受け入れ後の登録支援料が月3万3000円(同)となっている。


●採用の「外注」をやめた理由と効果


 こうした多彩な支援は、外国人労働者の定着に苦戦した経験を踏まえ、自社で改善を重ねる中で形になったものだ。


 人手不足や沖縄観光のインバウンド需要の増加を受け、2015年ごろから外国人労働者の採用を始めた同社。その後、コロナ禍が収束するタイミングでさらに人材不足が深刻化し、2019年に始まった特定技能制度を活用した外国人労働者の採用にも着手した。


 当初は外部の人材紹介会社を通じて採用しており、法定支援は行われていたものの、なかなか人材が定着しなかった。正司氏は「来日時の送迎や住民票の取得、部屋の案内などの法定支援が完了したら、あとは数カ月に1回、オンラインの定期面談で簡単なヒアリングをするだけという登録支援機関は多いです」と説明する。


 言語の壁もある中、形式的な支援だけでは本人たちの本音を拾いきれない。結果的に、不満や孤立感が積み重なり、離職につながるケースが少なくなかった。


 そこで2024年から採用と支援を内製化。現在、LIP3で提供するような研修、困り事の細かい聞き取り、スキルアップ支援などを充実させていった。すると、家庭の事情などを除く離職はほぼ解消された。紹介料や登録支援料、各種手続きの手数料など、初期費用だけで1人100万円ほどかかっていた採用コストも半減した。


 「採用を内製化する場合、担当職員を配置する必要があり、その分コストがかかります。しかし、外国人労働者の早期離職のリスクを踏まえると、十分に見合う投資でした」と、正司氏は話す。同社全体の離職率は、宿泊業界の平均(18.1%)を大きく下回る約12%だという。給与のベースアップや福利厚生の充実に取り組み、組織体制の強化を図っている(参照:厚生労働省「令和6年雇用動向調査結果の概況」PDFより)。


 現在、同社では約240人の従業員のうち約50人を外国人社員が占める。このうち、特定技能人材は13人に上る。


●「外食業」の新規受け入れ停止も……各業界から相談


 観光業を基幹産業とする沖縄では、宿泊業や外食業を中心に慢性的な人手不足が続く。リゾーツ琉球は2025年8月にLIP3を本格始動。これまで企業からの研修依頼などに対応してきたが、現時点で人材紹介の実績はまだないという。


 背景には、仲介に必要な書類申請や入国管理局の許可取得に数カ月を要することに加え、政府の政策動向もある。


 4月中旬、特定技能1号の外食業分野で、政府が定める受け入れ上限(5万人)に達する見込みとなったことから、新規受け入れの一時停止が発表された。これを受け、石垣島のホテルや飲食店での勤務を予定していた20代のネパール人3人についても、受け入れが実質的に不可能となった。


 昨年から準備を進めていたため、正司氏は「スムーズに進んでいれば6月には派遣予定だったので、とても残念です」と落胆する。「外食業は特に人手不足が深刻化しているので、影響は大きいはず。現場の状況に合った政策を進めてもらいたいです」と訴える。


 派遣予定だった人材は外食業の特定技能評価試験に合格し、来県を目前にしていた。宿泊業など別の分野に切り替えるにしても、追加で数カ月の時間を要するため、キャリアプランへの影響は計り知れない。正司氏は「日本へのイメージ悪化にもつながりかねません」と懸念を示す。


 一方で、LIP3には宿泊・外食だけでなく、タクシーや介護、自動車整備など幅広い業種から仲介の相談が寄せられているという。帝国データバンクの調査によると、2025年度の九州・沖縄における人手不足倒産は56件となり、2年連続で過去最多を更新した。今後、サービス業における外国人労働者の採用ニーズが一層高まる可能性は十分にある。


 正司氏は「沖縄は若い世代の県外流出もあり、働き手の減少は避けられません。特定の産業に限らず、沖縄の労働人口を増やしていきたいです。外国人労働者が安定して活躍できる環境をつくることが重要です」と語り、一つ一つの依頼を精査しながら対応を進めている。まずは沖縄を中心にサービスを展開し、将来的にはグループ拠点のある九州なども視野に入れる。


 国内の人口減少が続く中、国籍や言語、文化の壁を越え、いかに外国人労働者と受け入れ企業の双方にとって持続可能な関係を構築できるかが問われている。相互理解を重視したリゾーツ琉球の取り組みは、外国人労働者活用の新たなモデルケースになるかもしれない。



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