「困りごとはありますか?」が口癖の営業ほど成果が出ない。一方、売りまくる営業は“質問の方向”がまるで違った

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2026年06月20日 16:30  日刊SPA!

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今井晶也氏。営業支援会社「セレブリックス」で取締役/執行役員/CMOを務めつつ、セールス・エバンジェリストとして実践的な研究活動や情報発信を行っている
営業というシビアな世界では、「売れる人」と「売れない人」という残酷な差が生まれる。しかし一方で、「なぜ、あの人だけが契約を取り続けるのか?」と周りから不思議に思われるトップセールスたちも存在する。
商品は同じ。価格も同じ。提案資料だって大差ない――。それなのに、一方は次々と受注し、一方は「検討します」で終わる。この差はどこから生まれるのか?トップセールスたちの現場を徹底分析すると、そこには“ある共通点”があった。

彼らは売り込まない。質問をする。しかも、その質問は相手の要望を聞くためのものではなく、相手も気づいていない“隠れた真実”を暴き出し、「このままではまずい」と自覚させるために質問を使っているのだ。

累計10万部突破のベストセラー『Sales is』シリーズの最新作『Sales is 2』では、そんなトップセールスたちが実践する「ファクトファインディング」という質問メソッドを公開している。「売れる営業」と「売れない営業」の商談は、根本的に何が違うのか。著者の今井晶也氏に教えてもらった。(以下は今井氏による寄稿です)

◆■「困りごと」を聞いても普通の情報しか得られない

私が所属する営業支援会社「セレブリックス」では、これまで1万2700点超の商品・サービスを支援してきました。そこから導き出された、「売れる人」と「売れない人」を分ける最大の差は、商談において相手に「何を問うか」です。

たとえば従来型の対話のように「今、どんなことでお困りですか?」と“困りごと”を聞き出していくと、どうなるでしょうか。この場合、お客様がすでにわかっている問題や、対応を始めている課題ばかりが浮かび上がります。つまり、すでにわかっている「顕在情報」しか触れられないのです。

その結果、セールスが得られるのは、すでにお客様自身が気づいている“過去の延長線上の課題”であり、本当のインサイトの発見には繫がりにくい。つまり、お客様の困りごとを起点にした「お困りごとドリブン」には限界があります。

だからこそセールスは、目の前にある「困りごと」をただ埋めようとするのではなく、あくまでお客様の「まだ見ぬ未来」を一緒に見つけにいくことが必要です。「どんな未来を迎えたいか」という理想を共に描き、そこから逆算して、今本当に取り組むべきテーマをあぶり出していく……。

この「未来逆算思考」を自分の中に据えられるかどうかで、あなたの発する言葉の重みはまるで変わります。

「理想を実現するためにどんなテーマに取り組む必要があるか?」
「その取り組みを進めるうえで、何が障害となり得るか?」

それらを商談の対話によって見つけていくことで、まだ見ぬ壁がはっきりと見えてきます。

◆■目線を変えて「事実を捉え直す」

そもそも、多くの企業にとって、「今困っていること」と「理想のために乗り越えるべき壁」は、まったく違う景色です。だからこそ、未来逆算思考という「新しい視界」を持ったあなたにしかたどり着けない真実があります。

具体例を挙げてみましょう。私がかつて、営業支援で「カーシェアリング」の法人営業を担当していたときの話です。

このサービスは、街中にあるステーションの車を、法人が必要なときにだけ「30分単位」などで利用できる仕組み。固定費をかけずに社用車をシェアできる、合理的なソリューションでした。

このとき、カーシェアリング会社は「月に一度、乗るか乗らないか」というお客様に対し、真っ正面から「お車のご利用で困りごとはありますか?」と尋ねていました。すると返ってくる答えは決まって「特にありません」のひと言。さらに「車は必要ですか?」と重ねれば、「ほとんど乗らないので、いりません」と、刺さる提案の糸口を見失っていました。

このように「今の困りごと」を入り口にしてしまうと、会話は行き止まりに向かうしかありません。

そこで、私は視点を変えてみました。「月に一度しか乗らない」という事象を、「ほとんど乗らない」ではなく「たまに乗る大切な機会」と捉え直したのです。そのわずかな解釈の差が、劇的な変化を生みました。

◆■「買わないお客様」の意思を変えた質問

ここでも力を発揮したのは「未来逆算思考」から生まれた、このような問いかけです。トークケースをご覧ください。

今井 これから強化していきたい取り組みは、どんなことですか?
お客様 新規の取引先を増やしたいんです。
今井 新規開拓ですね。これまではどのような企業に営業してきましたか?
お客様 主にIT系で、SaaS系の企業ですね。
今井 そうでしたか。次に広げるターゲット群はどのように考えていますか?
お客様 製造業や運送・倉庫業に広げていきたいですね。
今井 そうすると、遠隔地や工場への訪問も増えますね。
お客様 そうですね。東京本社が中心ですが、そうしたお客様にも営業が必要になるでしょう。
今井 エリアを固めて営業されたほうが、効率がいいですよね。
お客様 はい、まさにそうです。
今井 その際、東京以外の商圏を回るタイミングや、工場・倉庫を訪問する場面でカーシェアを活用されるのはいかがでしょうか?必要な時だけ使える仕組みなので、所有するよりコスト効率が高く、営業の移動効率も上がります。
お客様 なるほど……たしかに、それはいいかもしれませんね。

読んでいただけた後ならお分かりだと思いますが、この会話の起点は、「今の不便」ではなく「これから実現したい理想」です。それによって、お客様との対話はまるで違う方向へと進んでいきました。

理想を共有し、その実現に向けて必要な取り組みとして逆算的に種を蒔いていくことで、自然と課題がつくられていく……。言うなれば、課題とは聞き出すものではなく、理想を起点に立ち上がってくる現実のシルエットなのです。

<構成/秋山純一郎>

【今井晶也】
株式会社セレブリックスの執行役員マーケティング本部長として、コーポレートブランディング、事業企画、マーケティング、営業領域を管掌。また、セールスエバンジェリストの肩書で、主に法人営業と新規営業における、セールスモデルの研究、開発、講演を行う。Twitter/@M_imai_CEREBRIX

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