
2025年7月に開園した「ジャングリア沖縄」は、7〜9月の期間限定チケット「ふらっとチケット」を販売中だ。価格は2970円(12歳以上)で、「1Dayチケット」(6930円)の半額以下。「ダイナソー サファリ」など、対象となっている5つのアトラクションから1つだけに乗れる仕様で、3〜4時間の滞在客を想定しているという。
【画像】ふらっとチケットが対象としているスタンバイ・アトラクション
ジャングリアは来場者数の目標を公表していない。開発を主導したマーケティング会社・刀の代表である森岡毅氏は当初「沖縄美ら海水族館」の半分程度でも十分採算に合うとしていたため、目標は年間150万人とみられる。
だが琉球新報の取材によると、オープンから半年間の実績は65万人で、スパを除いたパーク単体の来場者数は55万人だった。同じペースで続けば年間で110万人となる見込みだ。
本来テーマパークは周辺地域の住民が主な客となるべきだが、県内客が少ないというデータも出ている。集客に苦戦する様子もうかがえる。
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●批判もあったが、一定程度の評価は得ている。
ジャングリア沖縄では主なプランとして3種類のパークチケットを販売している。スパ利用が可能なチケットは9240円で、パーク単体のチケットは6930円。そして新たに販売したふらっとチケットは2970円だ。
この他、6月まで期間限定で一部アトラクションのプレミアムパスが付いた「午後チケット」を販売しているが、価格は6930円。今回のふらっとチケットは安さを売りにしている。
ふらっとチケットでは「スタンバイ・アトラクション」を1つのみ利用でき、整理券アトラクションやスパは利用できない。沖縄旅行の合間に来てもらうことを想定している。
開業当初は「アトラクションが少ない」「休める屋根付きの場所が少ない」など、SNSを中心にさまざまな批判が巻き起こった。だが、本稿の執筆時点でGoogle Mapの口コミ平均スコアは「4.1」。アトラクションが少ないなどの意見が散見されるが、一定の評価を得ているようだ。
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●カギを握る「大人の女性」向けのコンテンツが不足?
沖縄県の観光客数はインバウンドを含むと年間約1000万人だ(2025年)。仮に沖縄旅行の人だけをターゲットにする場合、目標の150万人を達成するには、少なくとも7人に1人が訪れる必要がある。しかし、集客に苦戦している可能性が高い。
那覇空港を起点としてジャングリア沖縄を訪れるには、レンタカーを使うかバスを利用する必要がある。ジャングリアが位置するのは沖縄県北部の今帰仁村であり、那覇からは2時間ほどを要する。初めて訪れるにはアクセスが悪く、気軽に行ってみようとはならない立地にある。来場者の評価が高くても、訪れるためのハードルを下げなければ絶対数は増えない。
刀の森岡氏は当初から旅行客による利用を主張していたが、テーマパークの主力客となるのは周辺の住民だ。東京ディズニーリゾートを運営するオリエンタルランドが公表している「ゲストプロフィール」を見ると、首都圏から来園した人が過半数を占める。対するジャングリアは県外客が多数を占めている。
国内の人口は減少が続いており、子どもの数は減っている。こうした背景から、1990年代後半から各地でテーマパークの閉園が相次いだ。一方、近年も好調なテーマパークは明確なIPを有する共通点がある。
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好調なディズニーはいうまでもなく、その世界観やキャラクターが集客の強みだ。USJも近年はIPが起爆剤となっている。開業以来は来場者数が落ち込んでいたものの、森岡氏が在籍時にオープンした「ユニバーサル・ワンダーランド」やハリー・ポッター関連のエリアが集客につながり、復活を遂げた。
近年好調なテーマパークは「大人の女性」に支持されている特徴もある。ディズニーの場合は来園者数の7割が女性で、年齢別でも18歳以上が7割を超える。サンリオピューロランドも、ショーや食事の内容を大人向けに切り替えたことで来場者数が回復した。
ジャングリアの場合は恐竜や森、気球など、どちらかといえば「男の子」向けの施策が主体だ。大人の女性に向けたアトラクションが欠けているように見える。
●失敗は予見できた? メガバンクも出資を見送っていた
運営元のジャパンエンターテイメントは、刀を筆頭株主としてオリオンビールなど地元企業も出資している。それほど、北部の観光推進にかける沖縄財界の期待は大きい。官民ファンドのクールジャパン機構も、刀に80億円を出資している。ジャパンエンターテイメントにおける資本と借入の比率は半々で、2025年4月時点では約700億円を調達したとされている。
しかし来場者数の実績や県民の割合を見ると、財界の判断に疑問を感じざるを得ない。
刀が主導したイマーシブ・フォート東京の閉園や、コンサルを手がけた西武園ゆうえんちの減損損失(2年累計で73億円)の計上が明らかになったのは最近のことだが、立地や事業内容からある程度の成否は判断できたはずだ。現に3メガバンクは出資を見送った。
また、企業の業績や社会現象をいち個人の実績として報じたがるメディアの責任も大きい。企業の業績が伸びた局面で、関係者をカリスマのように持ち上げる例は多々存在する。
ジャングリアは4月に新たなアトラクション「やんばるトルネード」をオープンした。余地が大きい分、今後もアトラクションや施設の追加が続くとみられる。だが立地にハンデを負った状態で来場者数を増やすには、アトラクションではなく明確なIPが必要になるだろう。
●著者プロフィール:山口伸
経済・テクノロジー・不動産分野のライター。企業分析や都市開発の記事を執筆する。取得した資格は簿記、ファイナンシャルプランナー。趣味は経済関係の本や決算書を読むこと。
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