なぜマクドナルドは「値上げ」しても「客離れ」が起きないのか 物価高時代に学ぶべきヒント

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2026年06月23日 05:50  ITmedia ビジネスオンライン

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出所:ゲッティイメージズ

 日本マクドナルドホールディングスの業績が好調です。


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 「値上げに成功した企業」と語られることもある同社。決算資料を詳しく確認し、実際の店舗価格を調査してみると、現在の好調な業績は単純な値上げだけでは説明できないことが分かります。


 そこで今回は、東京都世田谷区、福岡市博多区、秋田県、羽田空港内の店舗価格を比較するとともに、2021年から2025年までの業績推移を分析していきます。


●マクドナルドの強さは「既存店」にある


 まず注目したいのは、売り上げと店舗数の関係です。


 2021年度から2025年度までの推移を見ると、売り上げは3176億円から4166億円へと31.1%増。粗利は634億円から866億円(36.5%増)、営業利益も345億円から533億円(54.4%増)となっています。


 一方、この間の店舗数の変化は2942店舗から3025店舗と、増加率にしてわずか2.8%です。売上高の年平均成長率(CAGR)は7.0%ですが、店舗数の年平均成長率は0.7%に過ぎません。つまり、マクドナルドの成長は出店によるものではなく、既存店の成長によるものであることが分かります。


 多くの小売業や外食チェーンは、新規出店によって売り上げを積み上げます。しかしマクドナルドは、店舗数をほとんど増やさないまま、売り上げを3割も伸ばしました。


●値上げしても、客足が全く減らない


 さらに興味深いのは利益です。売り上げのCAGRが7.0%なのに対して、粗利は8.1%、営業利益は11.5%となっています。営業利益率も5年間で2ポイントほど改善しました。原材料費や物流費、人件費の上昇が続く環境下で、利益率を改善していることは非常に重要です。


 単純な値上げだけであれば、売り上げは伸びても利益率改善には限界があります。しかしマクドナルドは粗利率もしっかりと改善しています。これは「商品構成の改善」や「客単価の向上」、さらに「店舗オペレーションの効率化」や「デジタル活用」などを並行してしっかりと進めていることに起因するのでしょう。


 さらに注目したいのが客数です。2025年の既存店実績を見ると、既存店の売上高と合わせて客数も前年比で安定した成長をしています。


 通常、値上げを実施すると客数は減少します。しかしマクドナルドは違います。客数が増えているのです。さらに売上高の伸び率が客数の伸び率を上回っています。値上げによる売上増加ではなく「顧客から支持されながら単価も上がっている」状態といえるでしょう。


 では、なぜマクドナルドではこうした理想的な状況が実現しているのでしょうか。


 その答えは商品戦略にあります。


 マクドナルドの商品戦略は「定番商品×時間帯商品×季節商品」という3層構造になっています。


 定番商品では、ハンバーガーを中心に、チーズバーガーやビッグマックやてりやきマックバーガーなど、長年支持される商品をそろえています。さらに、朝マック・ひるマック・夜マックという時間帯別商品を展開しています。ここに加えて月見バーガーやグラコロ、地域限定商品なども投入し続けているのが特徴です。


 定番商品で安定した需要を獲得しながら、時間帯商品で利用機会を増やし、限定商品で話題を作る――この3層構造が客数維持と客単価向上を両立させています。


●マクドナルドの価格戦略とは?


 今回、東京都世田谷区、福岡市博多区、秋田県、羽田空港の一部商品について店舗価格を比較しました。その結果、興味深い事実が見えてきました。


 次のグラフの通り、マクドナルドでは一律の価格設定をしていません。


 例えば、東京都と福岡県では主要商品の価格差がほぼないものの、秋田県ではハンバーガーや一部朝商品を含め、東京都より低価格でした。反対に羽田空港店では、ハンバーガーが230円、ダブルチーズバーガーが580円など高い設定になっています。調査した商品の平均価格では、羽田空港店は秋田県内店舗より約24%高い結果でした。


 興味深いのは、東京都と福岡県では価格差がなく、秋田県と羽田空港だけが大きく異なる点です。つまりマクドナルドは単純な都道府県単位ではなく「商圏」「利便性」「顧客属性」などを踏まえて価格を設計していると考えられます。


 ここまで触れた商品と価格だけでなく、チャネル戦略も重要です。現在のマクドナルドは、ドライブスルーとモバイルオーダー、デリバリーに加えて近年はセルフオーダー端末を積極的に展開しています。


 これらは単なる利便性向上策ではありません。店舗当たりの売り上げ上限を引き上げる施策です。同じ店舗面積でも売り上げのポテンシャルを高められるため、店舗数を増やさなくても増収を見込めるのです。


 店舗数の増加率を大きく上回る売上成長を実現している背景には、このチャネル戦略が存在しています。


●小売り・サービスを含めて「お手本」となる経営戦略だ


 販促にも特徴があります。日本マクドナルドの広告宣伝費および販売促進費は、2021年度の75億円から2025年度には81億円へと増加しています。しかし売り上げに占める割合では、2.4% → 2.0%へ低下しています。つまり広告効率が改善しているのです。


 マクドナルドの広告は商品が主役です。タレントは登場しますが、あくまで商品を魅力的に伝えるための存在です。世の中にはタレントばかり記憶に残り、何の商品だったか思い出せない広告も少なくありません。しかしマクドナルドは、商品のおいしさや魅力を伝えることに集中しています。


 本稿の内容をまとめると、マクドナルドの成功要因は単なる「値上げ」ではありません。商品施策で新たな需要を創出し、顧客を獲得し、価格施策で適正な利益を確保し、チャネル施策で利用機会を増やし、販促施策で商品価値を伝える。その結果、客数・客単価・売り上げ・利益が伸びるという好循環が生まれています。


 出店によって売り上げの規模を追うのではなく、既存店で新たなターゲットを開拓し、顧客のウォレットシェアを高める。そして値上げを実施しても顧客離反を起こさず、利益率まで向上させる。マクドナルドの好調は、値上げ成功の物語ではありません。


 商品・価格・チャネル・販促を統合的に運用し、既存店の価値を最大化する経営のお手本となるモデルです。その考え方は、外食産業だけでなく、小売業やサービス業を含め、多くの企業にとって参考になるのではないでしょうか。


 最後までお読みいただき、ありがとうございました。


(佐久間俊一)



このニュースに関するつぶやき

  • 店舗が沢山あって便利だからでわねーのけ??もしくわ あの油臭の中毒なのかもね。(;´・ω・)����
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