従来の消せるボールペンとは消し方が全く違う。“剥がし取って”消すセーラー万年筆「ケセラ」の面白さ

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2026年06月26日 21:30  All About

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インクを熱で透明にするのではなく、書いた線を剥がし取って物理的に消してしまうボールペン「ケセラ」がセーラー万年筆から発売されました。単に消せるだけでなく、これまでにないボールペンならではの利用法なども含め、セーラー万年筆にお話を伺いました。
セーラー万年筆の「ケセラ ボールペン(以下、ケセラ)」は、これまでの「消せる筆記具」とはその「消す」方法が全く違う、「消せるボールペン」です。従来の消せるボールペンは、ほとんどの製品が摩擦熱などによってインクを透明にすることで、書かれた線を見えなくする仕組みでした。ところがケセラは、書いた線そのものを紙から“剥がし取って”しまうことで、物理的に消すのです。

「書いた線を物理的に消すには?」から生まれたアイデア

「消せるボールペンをどのように実現すればよいか検討する過程で、紙に書いた線を定着させることと、それを物理的に消すことを両立させるには何がいいかと考えていて、最終的に“剥がして消す”というアイデアが残りました」と、セーラー万年筆の広報スタッフが教えてくれました。

書かれたインクを剥がし取るというのは、シンプルなアイデアのようで、実現するとなるとかなり難しいものです。文字はしっかりと紙に定着させて、簡単には消えないようにしなければなりませんが、消したくなったら、きれいに書いた部分だけが紙から剥がれるようにするという相反する性質を実現しなければならないからです。

剥がして消せるインクを開発する困難

「ケセラ」のインクがなぜ剥がして消せるのかを解説した図。ゴム材が含まれているのがポイントだ

前提として、紙にインクが染み込んでしまったら、もう剥がすことはできません。しかし、裏写りしにくい顔料系のインクにしても、全く紙に染み込んでいないわけではありません。水性顔料インクを使いながらこの課題をクリアした「ケセラ」は、単なる「消せるボールペン」ではありません。

「筆跡の定着と剥がしやすさのバランス調整が難しかったと聞いています」という広報スタッフの言葉通り、これまでにないインクのため、正解がない中で、実用的なボールペンとして仕上げるのはかなり難しかったと思うのです。

実際に書いてみると水性ボールペンらしい、さらさらとした軽い書き味で、しかもしっかりと黒い線が書けます。これが消えるというのは、とても面白いところです。

消しゴムで鉛筆の筆跡を消すのに近い感覚

キャップに付いているラバーを使って筆跡を剥がし取る。ラバーの端をうまく使うのがコツ。

消す時はキャップに付いたラバーを使うので、なんとなく従来の「消せるボールペン」との違いが分かりにくいのですが、実際に消してみると、インクが剥がれるので、鉛筆で書いた文字を消しゴムで消した時のように消しカスが出るのがなんとも新鮮。しかも、そのおかげで、「剥がし取っている」実感も得られます。

「開発段階では『液体鉛筆』と呼んでいたそうです」と、広報スタッフが教えてくれたのですが、実際、使っていると、その呼び方がとてもしっくりきます。

筆跡は明らかにボールペンのものなのですが、消し方、消え方が、とても鉛筆のよう。紙の上に擦り付けられた黒鉛を消しゴムで擦り取る鉛筆と、紙の上に貼り付いているインクをラバーで剥がし取る「ケセラ」は、その紙と筆跡の関係としては、普通のボールペンと比べても鉛筆に近いのです。
どこをどうすれば消せるかが分かりやすいので、慣れるとピンポイントで消せるようになる

ラバーも、紙を擦るためではなくインクを剥がすためのものなので、エッジが立った、スクレーパーのように剥ぎ取りやすい形状になっています。そして、剥がし取るので、インク残りが目に見えて分かるし、どこを狙って擦ればよいかが分かりやすいので、ちょっとした書き間違いならとても消しやすく、しかもきれいに消すことができます。

「ケセラ」で書いた線をマスキングテープのように使えば表現の幅が広がる

ケセラで書いた上から、マーカーなどで色を塗って、文字部分を剥がすと白抜きの線ができる。

「剥がせるインクなので、マスキングができるのも、『ケセラ』ならではの使い方です。POPのようなデザインや画材的にも使っていただけます」(広報スタッフ)

インクが紙の上に貼り付いている状態なので、まず「ケセラ」で絵を描いて、その上からカラーペンなどで色を塗り、その後「ケセラ」で書いた線を剥ぎ取ると、その部分だけ白く抜けます。マスキングテープなどを使ってもできますが、「ケセラ」ならより細い線を自在に書けるので、表現の幅が広がりそうです。剥がして消せるというアイデアを、ほかの表現にも使えるというのが、今までの筆記具にはない面白さだと思います。

0.8mmというボール径は、0.7mmでも太いと思われやすい日本の筆記具事情を踏まえると、かなり太く感じるかもしれませんが、マスキングとして使ったり、くっきりした黒い文字だけど消せたりする部分に魅力を感じる人には、このくらいの線幅で書けた方が使い道が広がると思います。技術的にもっと細い字や太い字が書ける製品が作れないわけではないそうですから、今後、細字や太字の製品が出てくる可能性もあるのでしょう。

レトロな見た目に最先端のインクというギャップも魅力的

ペン先が透明になっていたり、筆記時にペン先がブレないのはキャップ式ならでは

また、キャップ式というのも最近のボールペンのトレンドからは外れるのかもしれませんが、水性ボールペンがキャップ式なのは珍しいことではありません。さらに、キャップ部分が長くなったデザインもよくできていて、個人的には、この少しレトロな見た目のペンが、最先端の「消せる」機能を持っているというのが面白いと感じています。

大量の文字や、広く塗ったものを消すのは少し大変ですし、あまり勧められませんが、物理的に完全に消えるというのはほかにはない「ケセラ」だけの機能です。当たり前ですが、夏の暑い社内に置きっぱなしにしても書いた文字は消えません。

これまでの「消せるボールペン」とは全く別物というか、用途も機能も違うので、どちらかを選ぶというものではないように思います。筆記具としてかなり新しい、特殊なペンなので、使う人のアイデア次第という気もします。使ってみると想像を超えてくる部分もあるので、とにかく一度は手に取ってみてください。

納富 廉邦プロフィール

文房具やガジェット、革小物など小物系を中心に、さまざまな取材・執筆をこなす。『日経トレンディ』『夕刊フジ』『ITmedia NEWS』などで連載中。グッズの使いこなしや新しい視点でのモノの遊び方、選び方を伝える。All About 男のこだわりグッズガイド。
(文:納富 廉邦(ライター))
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