
クリスティアーノ・ロナウドを先発させるべきか否か──。4年前のカタール・ワールドカップで持ち上がった議論が、今大会でも再燃している。
2022年12月6日、カタール大会のラウンド16のスイス戦で、当時のポルトガル代表を率いていたフェルナンド・サントス監督は大鉈を振るった。グループステージの3試合でPKによる1得点に終わった当時37歳のロナウドを先発から外し、ベンフィカで台頭していた当時21歳のゴンサロ・ラモス(今オフにパリ・サンジェルマンからACミランへの移籍が決定)を代役に充てたのだ。
これを予想できた者は皆無に近く、メンバー表を見た時は、私のようなポルトガル代表の番記者も驚愕した。バロンドールを5回受賞し、EURO 2016で母国に初のメジャータイトルをもたらしたポルトガル最大のスター選手をベンチに座らせるのは、どんな監督にとっても難しい。実際、それ以前からこの議論はメディアやファンの間で交わされていたが、実際にCR7(クリスティアーノ・ロナウド)が主要大会でスターティングメンバーから外れたのは、EURO 2008 のグループステージ突破を決めた後に温存されたグループ第3戦のスイス戦以来だった。
そしてサントス監督の勇気ある決断は奏功した。ロナウドの代役のラモスは代表戦で初めて先発すると、いきなりハットトリックを達成(アシストもひとつ)。準々決勝のモロッコ戦でもラモスがスタートし、後半途中からロナウドも投入されたが、0-1で敗退した。この時、ポルトガル代表でついに世代交代が進み、少なくとも高齢のエースがアンタッチャブルな存在ではなくなったと、多くの人々は認識した。
ところが、そうはならなかった。カタール大会後に、8年以上にわたって指揮官を務めてきたサントス監督が去り、後任にスペイン人のロベルト・マルティネスが就任。ロナウドはサウジアラビアのアル・ナスルへ移籍し、直前のプレミアリーグではマンチェスター・ユナイテッドでの半シーズンで1得点しか記録していなかったが、スタンダードの落ちる中東のリーグではゴールを量産し始めた。
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【2年前の欧州選手権では無得点に終わった】
新体制の初戦となった欧州選手権の予選のリヒテンシュタイン戦(2023年3月)では、当然のように先発に復帰し、PKと直接FKで2ゴール。この予選では累積警告で欠場した試合以外、全9試合に先発し、10得点と1アシストを記録──ただし、EURO 2024本大会では準々決勝までの5試合のすべてに先発し、無得点で大会を後にしている。相手のレベルが上がると、ロナウドのゴールは遠くなってしまうのだ。
迎えた今大会も、似たような状況にある。グループステージの3試合で、ロナウドは明らかな格下のウズベキスタンとの一戦(5-0)では2得点したものの、コンゴ民主共和国戦(1-1)とコロンビア戦(0-0)では、不甲斐ない出来で無得点に終わっている。ポルトガルはグループ2位で勝ち抜けを決め、ラウンド32でクロアチアと対戦するが、この強豪との一戦にも、41歳の御大は先発すべきなのか。
人々の意見は二分している。極端なものも少なからず見聞きするが、まずは冷静に客観的に現状を認識すべきだ。現在のロナウドは全盛期をとうに過ぎていて、その動きはピーク時とは比べ物にならないほど緩慢だ。相手ボール時にほとんど守備をしないなら、攻撃面で補わなければならないが(宿敵リオネル・メッシはそれを完璧に示している)、レベルの高い相手にはそれもままならず、組み立てに貢献できているとも言い難い。
とはいえ、数えきれないほどの偉業を成し遂げてきたポルトガル史上、いやフットボール史上最高の選手のひとりにベンチ行きを命じるのは、繰り返すようだが、どんな監督にとっても困難だ。それはチームのムードを大きく変えうるものであり、結束を壊しかねないものでもある。また監督とエースの関係も変化する可能性がある。実際、サントス監督が前回大会後に指揮官の座を離れたのは、ロナウドとの関係に亀裂が走ったからだと噂されていた(当事者のふたりは公には認めていないが)。
マルティネス現監督はロナウドをすっかり信頼し、今大会のここまでの3試合にフル出場させている。記者会見ではしばしばエースの不振について質問され、絶好調のメッシ──3試合で6ゴールと得点ランキングのトップに立つ39歳のアルゼンチン代表主将──と比較された際には、「私は選手の比較を好まない。それはあまりにも子供じみた行為だ」と回答した。
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【「全員が対等な立場にあることを知っている」】
またコロンビア戦後の会見でも、次のようにCR7を擁護した。
「(ロナウドの動きの少なさを指摘されて)彼はセンターフォワードで、ボックスのなかで仕事をする。周りの選手との連携が重要になる。フィジカルの状態は良好で、練習では常に良い数字を弾き出している」
どこか歯切れが悪く、取り繕うようなトーンだった。ロナウドが活躍できていないことは誰の目にも明らかながら、彼にベンチ行きを命じるのは、やはり難しいのだ。
チームメイトも、同じように振る舞っている。今のポルトガル代表には、ロナウドに強烈に憧れてきた選手がほとんどで、誰もが敬意を示しつつ、問題が大きくならないように気を配っているように見える。
すでに広く報じられているが、パリ・サンジェルマンでチャンピオンズリーグを連覇中の21歳のMFジョアオ・ネヴェスの次のコメントが曲解され、ソーシャルメディア上で炎上した。
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「クリスティアーノがポルトガルや代表チーム、そしてフットボール全体に貢献してきたことは、誰もが理解している。ただ彼も僕らも、全員が対等な立場にあることを知っている。クリスティアーノもまた、ポルトガルのために力を尽くそうとするひとりの選手なんだ」
これに対し、「ロナウドに敬意を払え」、「恩知らずの若造」、「黙ってロナウドにパスをしろ」といったコメントが相次いだ。ただしネヴェス本人にロナウドを批判する意図などそもそもなく、それを理解するロナウド本人が自身のSNSで「(ポルトガル代表は)常に団結している」と綴って火消しに努めた。
また23歳のウイング、フランシスコ・コンセイソン──キャリア晩年に若き日のロナウドと代表合宿を共にしたセルジオ・コンセイソンの息子──はこう語った。
「クリスティアーノにパスをしなければならないわけではなく、その都度、ベストと思える味方にパスを送る。それは瞬間的な判断であり、誰かを優先したりはしない」
我々ポルトガルのメディアのなかでも、意見は割れている。ある人は「ロナウドは、自分がベンチスタートで途中からピッチに入った方が、良い仕事ができると気づくべきだ」と言い、またある人は「いずれにせよ、今のポルトガルにCR7以上の点取り屋はいない」と主張する。
【クロアチア戦でもCR7は先発するはずだが...】
この議論は、少なくともクロアチアとのラウンド32の一戦まで続く。マルティネス監督はきっと、またロナウドを先発させるだろう。相手にも40歳のルカ・モドリッチがおり、ベテラン同士の対決にも注目が集まる。もしそこで、ロナウドがワールドカップの決勝トーナメントで初めてとなる得点を奪い、4桁に迫る自身のプロ通算得点数をさらに増やし、チームも勝ち進むことができれば、それに勝るものはない。
ただし冷静に客観的に状況を見れば、その可能性は決して大きいとは言えない気もしている。
