
セルジオ越後の「新・サッカー一蹴両断」(37)
「まだ見ぬ景色」は近いようで遠かった。「優勝」を目標に掲げていたサッカー日本代表は、決勝トーナメント1回戦(ベスト32)でブラジルに1−2の逆転負けを喫し、ワールドカップの舞台を去ることになった。ブラジル戦前「当然、僕は日本を応援する」と期待をこめて語っていたご意見番のセルジオ越後氏は、この結末をどう受け止めたのか。
【攻撃することをあきらめたように見えた】
正直、こんなに差があるとは思わなかった。僕も甘く見ていた。
前半の日本は、中央からパスをつなごうとするブラジルの攻撃をよく抑えていた。攻撃面でも、ビッグチャンスは前半29分の佐野海舟の得点シーンだけだったけど、狙い通りの試合運びはできていた。佐野のプレーは本当にすばらしかったよ。
ところが後半、ブラジルがサイドからのクロス攻撃を仕掛け始めると、途端に押し込まれた。ブラジルはここぞとばかりにセンターバック、ボランチも高い位置を取り、日本の陣内でボールを回し、日本の選手たちを消耗させた。
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後半11分に同点に追いつかれても流れは変わらない。そして、後半21分に両ウイングバックの堂安律と中村敬斗、後半33分に伊東純也と鎌田大地が交代でベンチに下がると、日本はカウンターを狙う力もなくなった。森保一監督の真意はわからないけど、攻撃することをあきらめたように見えた。
ブラジルは史上最多の優勝5回といっても、最後に優勝した2002年日韓大会からもう24年も経っている。しかも、今回のメンバーは歴代でもかなり小粒。国内ではあまり期待されていない。そんなブラジルにあれだけ一方的に攻め込まれるとは思っていなかった。言い訳のできない完敗だったね。
大会を通して日本の戦いぶりを振り返ると、初戦は強いオランダに終了間際に追いついて引き分け(2−2)、2戦目はチーム崩壊寸前のチュニジアに快勝(4−0)、3戦目はほぼ同等の力を持つスウェーデン相手によく守っての引き分け(1−1)、そしてブラジルに完敗。
チュニジア戦後、メディアは「優勝だ」と煽っていたけど、終わってみれば1勝2分け1敗でのベスト32敗退。結局、チュニジアにしか勝てなかった。しかも、一番目立っていた選手はGKの鈴木彩艶。彼の活躍がなければもっと負けていたかもしれない。
南野拓実、三笘薫がケガで登録メンバーに入れず、長くキャプテンを務めてきた遠藤航も開幕直前に離脱。久保建英も初戦のオランダ戦でケガを負った。彼らがいれば......という声も聞く。でも、それは何の慰めにもならない。多かれ少なかれ、どの国も同じような問題を抱えているからだ。ブラジル代表にしてもベストメンバーを招集できたわけではないし、開幕後にケガ人も出ている。
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【どういう根拠で「優勝」を目指していたのか】
前回カタール大会以降の4年間を振り返っても、森保監督は「優勝」を口にし、メディアも「史上最強」と持ち上げていたけど、強い相手と対戦した時には、守ってカウンターというサッカーをしていた。厳しいことを言えば、ドイツ、スペインをカウンターで破った前回のカタール大会からあまり変わっていない。
「よい守備からよい攻撃を」の実態は、守って守って、耐えて耐えてカウンターだ。自分たちがボールを持とうとしていた時期もあったし、すべてを否定するつもりはないけど、結局、強豪相手には守るしかなかった。それが現実。そんななか、どういう根拠で「優勝」を目指していたのか。もしブラジル戦をPK戦に持ち込み、ベスト16に進めたとしても、それ以上は難しかったと思う。
ただ、そう言う僕自身も、今回はベスト8に勝ち進むチャンスがあると思っていた。ブラジル相手にもカウンターサッカーで勝つチャンスはあると思っていた。甘く見ていたということだね。
ブラジル戦後、がっかりしながら選手たちのインタビューを見ていたんだけど、インタビュアーが「あと一歩でした」「惜しかった」などと選手を慰めるような質問を投げているなか、堂安が「力不足です」と答えていたのを聞いて救われた気持ちがした。潔かったよ。僕に言われなくても、選手は世界との力の差を理解している。だから、また今後に期待したいね。
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