
おもちゃたちの世界を舞台に、人とおもちゃのかけがえのない絆を描いた映画『トイ・ストーリー』シリーズ。第1作目の日本公開から30年がたつ今年、最新作『トイ・ストーリー5』が7月3日(金)より全国公開され、公開初日で32万人を動員。『ズートピア2』(2025年公開)の初日記録を超え、洋画アニメーション歴代No.1のスタートとなりました。
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本作では、おもちゃで遊ぶのが大好きな少女・ボニーの成長をそばで見守ってきたバズやジェシーらの前に突然、史上最大の脅威である“デジタル”の最新タブレット「リリーパッド」が現れ、ボニーの日常が一変。画面に夢中のボニーから、徐々に笑顔が奪われていく様子を目にしたジェシーは、ボニーの心を取り戻すためにウッディに助けを求めるが――。という物語が展開します。
本記事では、『トイ・ストーリー』シリーズの1作目から作品に携わり、本作でもシミュレーションのテクニカルディレクターを担当したピクサーの日本人スタッフ・小西園子さんに、本作で力を入れた表現や『トイ・ストーリー』シリーズの魅力、命を吹き込むキャラクター作りなど、ピクサーの30年の進化について聞きました。
東京都出身。兄の影響で観た『スター・ウォーズ /新たなる希望(エピソード4)』をきっかけに、映画制作を志す。米国の大学を卒業後、1994年8月にピクサー・アニメーション・スタジオに入社。『トイ・ストーリー』シリーズ全作の他、『モンスターズ・インク』『ファインディング・ニモ』『Mr.インクレディブル』『メリダとおそろしの森』『リメンバー・ミー』など、ほぼ全てのピクサー長編作品に携わる。最新作『トイ・ストーリー5』では、シミュレーションのテクニカルディレクターを担当。
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――あらためて、小西さんが現在ピクサーで担当している業務について教えてください
小西さん:『トイ・ストーリー4』より、シミュレーションの部署に所属しています。キャラクターの髪の毛をなびかせたり、服を動かしたりする仕事です。木や草など自然のものや、紙切れなど、キャラクターが手で触るもの全てを動かす仕事をしています。
――本作で小西さんが特に力を入れたアニメーションを教えてください
小西さん:今回はボニーのシーンが多かったので、ボニーの動き方ですね。彼女は今回、ものすごく感情が揺れ動くシーンが多かったんです。私たちは服や髪の毛の動きを感情の延長だと捉えています。キャラクターの感情にあわせて動きを強くしたり、弱くしたり調節するんですね。ボニーの場合は、うれしいときは髪の毛を大げさに動かしたり、悲しいときはちょっと落としてみたり。落ち込んで少し布が重そうに見える表現だったり、髪の毛を跳ねさせなかったり、そういうところを気を付けましたね。
CGでカールがきいた髪の毛を表現するのって、ものすごく大変なんです。『メリダとおそろしの森』のメリダを担当したときから、カールがついた髪の毛を担当してきましたが、とにかく難しいです(笑)。特に本作では幼い女の子の、柔らかい髪の毛を表現しなければなりませんでした。動き方も、カールがバラバラに動くんじゃなくて一緒に動いたり、でもちょっと跳ねてみたり、風になびくとソフトに動くとか。そういったものすごく細かい表現が大変でしたね。
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――ウッディやバズ、ジェシー、初登場のリリーパッドやスマーティー・パンツら『トイ・ストーリー』のおもちゃたちは無機物ですが、すごく生き生きとして見えます。おもちゃにアニメーションの表現で命を吹き込むピクサーのキャラクター作りを、小西さんはどうとらえていますか?
小西さん:うちはなにせアニメーターたちが優秀なので(笑)。そうですね……。ピクサーには「本物を壊さない」というルールがあるんです。素材は壊さない、曲げたりしないというものです。アニメーターはルールを守りつつアニメーションで表現しなければいけないので、すごいなと思っています。「本物を壊さない」というピクサーのルールの中で、引き算や足し算をして、エッセンスを必ず逃さないようにする。見ているだけで、そのキャラクターが何でできているかが伝わるんです。
人間のサイズとおもちゃのサイズは全く異なるので、マテリアル(素材)の違いが出るんですよね。それも必ず守るルールです。おもちゃはサイズが小さいので、表面積が少ない。なのでそこまで布は垂れ下がらないし、波打ってもいないし、動きも固い。人間の大人の場合は、生地の量も髪の毛の量も多くて、動き方もおもちゃと全く違います。そこを見比べていただくと、すぐに「あ、違う世界だな」と感じると思います。同じ『トイ・ストーリー』の世界の中なんですが、人間とおもちゃがいるのは違う世界であることが、すぐ分かると思います。
――本作では人間とおもちゃだけでなく動物たちも出てきました。人間・おもちゃ・動物が一緒の場面にいて、それぞれの違いが分かりつつも違和感がないところが印象的でした
小西さん:特にジェシーと馬のシーンですよね。あのシーンは私もすごいなと思いました。馬のたてがみも、柔らかいわけじゃないんですよ。量も多いし、そんなになびくわけじゃないんですけど、丁度いい加減で表現できているなと思います。
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――『トイ・ストーリー』の第1作の日本公開から30年がたちました。長くシリーズに関わる中で、変わらない魅力だと感じる部分と、時代とともに進化したと感じる部分を教えてください
小西さん:変わらない魅力は、ピクサーのルールで“素材を壊さない”と守り続けているところですね。『トイ・ストーリー』の世界観は、30年たっても全く変わっていません。アンディやボニーの部屋を見比べてもらうと分かるんですが、年月がたっていても同じニュアンスがあるんです。丸みや色の使い方とか……。1を見た後にすぐ5を見てもらっても、そんなに違和感がないと思います。それってある意味、大変なことだなと。
この30年でレンダリングテクノロジーなどの技術が大きく進化しました。キャラクターの素材は変わらなくても、見ている方の感じ方が違うように表現されています。プラスチックも、以前はスペキュラ(反射光)やハイライトが入っていましたが、1から5まで見ていただくと段々と柔らかい印象のプラスチックに見えてくると思うんです。技術的にすごく進化していると思います。
1と2のときはまだシミュレーションの技術が存在しなかったんですが、3からシミュレーションの技術を導入しました。その技術でキャラクターの表情や体の動かし方、感情を服に出す事ができるようになり、全体としての表現方法が豊かになったと思っています。
――テクノロジーの進化とアニメーション制作の進化は不可分な関係だと思います。ピクサーにおけるアニメーション制作現場での時代の変化を、どうとらえていますか
小西さん:技術的なことだと、レンダリングした画像や、シミュレーションした動きの結果の待ち時間が短くなりました。ただ、求められるレベルもどんどん高くなってきたので、全然追いつかないですね(笑)。プラスマイナスゼロかな? って思うくらいです(笑)。
やっぱり常に「こうしたい」「もっとできるんじゃないか」と思うので、技術が進んで処理速度が速くなっても「もっとよくしたい」という欲望が大きくて、早く終わることはありません(笑)。
見る側も作り手も、作品に求めるレベルが上がってきているので、「もっとよくしたい」という気持ちが大きいです。それでも『トイ・ストーリー』の世界観を壊してはいけないので、そこで一度立ち止まることもあります。
――一貫して「妥協しない」姿勢があるのでしょうか
小西さん:“諦めない”ですね、ピクサーは(笑)。
――長年在籍されているピクサーのスタジオ内の変化をどうとらえていますか
小西さん:ピクサーには若い世代はもちろんいろいろな国の人がいるので、ものすごくダイバーシティ(多様性)な職場です。ピクサー内で世界を感じることができるんです。他のスタジオを経験してきた方も増えて、変わってきましたね。
ピクサーではストーリーがまとまる毎にスクリーニング(試写会)をして毎回フィードバックを募るんですが、さまざまな国から来た異なるバックグラウンドを持つスタッフが正直にレビューするので、作品を見直すものすごくいい機会と環境になっていると思います。
今回の『トイ・ストーリー5』も、新しいテクノロジーのすごく“今”の話ですよね。『トイ・ストーリー』シリーズをずっと作ってきたアンドリュー・スタントン監督とケナ・ハリス共同監督という、熟練した方と若い方がコンビを組んだので、非常にアップデートされた作品になったのではと思います。
――最後に最新作『トイ・ストーリー5』を楽しみにしている読者へメッセージを
小西さん:今回の『トイ・ストーリー5』はまさに『今』を表現したストーリーで、ものすごく考えさせられるお話だと思います。きっと映画を見終わった後に、友人や家族など、映画を見た人と『トイ・ストーリー5』について話してくれるんじゃないかなと思っていて、それがすごく楽しみです。作品を見終わった後にする会話を大切にしてほしいな、と思います。
(了)
■監督:アンドリュー・スタントン(「トイ・ストーリー」シリーズ、「ファインディング・ニモ」「ファインディング・ドリー」)
■共同監督:ケナ・ハリス
■製作:リンジー・コリンズ
■全米公開:6月19日
■原題:Toy Story 5
■日本公開:7月3日
■声:唐沢寿明(ウッディ)、所ジョージ(バズ)、日下由美(ジェシー)、竜星涼(フォーキー)、広瀬アリス(リリーパッド)、佐野勇斗(スマーティー・パンツ)、井上和/乃木坂46(スナッピー)、松井ケムリ/令和ロマン(アトラス) ほか
■配給:ウォルト・ディズニー・ジャパン
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