
既報の通り、クレジットカード決済代行の全東信(大阪市中央区)が7月6日、大阪地裁に自己破産を申請し、同日破産手続き開始決定を受けた。“飲食店”向けのカード決済サービスを提供することで知られる同社だが、破産に至る背景と今後の影響について少し補足したい。
●飲食店(風俗関係を含む)を中心とした加盟店開拓の死角
説明のように“飲食店”が対象加盟店の中心となる全東信だが、実際にはその大部分(7〜8割程度とも言われる)は広義の意味での夜職、水商売、風営法に絡んだ業態(※風営法1号)だったとされる。
そのルーツは1987年に設立された「大阪南飲食事業協同組合」で、大阪ミナミの歓楽街にあった飲食店や風俗店の経営者らの相互扶助を目的としており、90年代に入って米American Expressをはじめとする国際ブランドとの提携でクレジットカードの取り扱いを開始する。99年には名前を「全東信飲食事業協同組合」に変更し、ここで「全東信」ブランドを掲げて全国展開をスタートすることになる。
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※ 「風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律」における「1号営業」に該当するもので、いわゆる「キャバクラ」「ホストクラブ」「高級クラブ」「スナック」など接待を伴う“飲食”を提供する店舗
そんな全東信だが、全国展開にあたって基礎となったのは歓楽街における店舗ごとのつながりだ。一般に水商売や深夜営業の飲食店はカード加盟店の審査が通りにくく、加えて入れ替わりの激しい飲食を含む業態において、開業間もない店舗は実績となるものがないため審査もシビアになりがちだ。
ゆえに「全東信だったら審査を通してくれる」という口コミが広がることで、「水商売や飲食店の最後の駆け込み寺」としての評価を得ることで、決済代行業者(PSP:Payment Service Provider)としては全国でも大手の地位に押し上げることになった。
他方でこの加盟店審査が今回の破産にいたる死角になった側面がある。特に風営法にかかる業態や酒類を提供する飲食店において、いわゆる「ボッタクリ」や「泥酔中の注文で覚えていない」といったトラブルが多発するため、後の返金トラブル(決済用語で『チャージバック』)につながりやすい。
チャージバックは本来、カード利用者からカード会社を介して最終的に加盟店に入金される売上金をカード利用者に返金する仕組みで、こういったリスクは加盟店を抱える全東信がある程度受け持つことになる。もともと水商売の加盟店審査が厳しい理由の1つがこのチャージバックにあるわけだが、それも踏まえて「駆け込み寺」となっていたのは、全東信がそれだけリスクを内包していたことに他ならない。
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そして今回の全東信破産に至る2つの事件が同社にとどめを刺すことになる。
1つは2020年代前半のコロナ禍で、主要加盟店である飲食店が軒並み休業に追い込まれ、取扱高が激減した。これが問題になったのは後述する「月6回払い」などの「早期支払いサービス」で、本来であれば一般的なクレジットカードの支払いサイクルである「月1回翌月払い(マンスリークリア)」に対応するために入金サイクルが先延ばしとなるのだが、全東信では飲食店のキャッシュフロー事情も踏まえて売上を即現金化するサービスを提供するため、銀行等から相当額の借入金があり、取扱高の激減によってこの金利負担が重しとなっていた。
2つめが致命的となるのだが、「不正加盟店問題」で24年に警察の摘発を受けて書類送検が行われている。同年1月、警視庁は”本来なら加盟店審査が通らない”ような悪質店やフィリピンパブなどに対し、全東信が他人名義での不正な加盟店契約を行おうとしていたとして関係社員らが逮捕されている。
さらに問題となったのが、これらが特定社員による暴走などではなく組織的に行われていたものだということが後に発覚した点だ。組織犯罪処罰法違反ということで法人そのものが書類送検されるに至り、前述の融資元であった金融機関らが資金提供を一斉にストップしたことで一気に資金ショートへと向かうことになる。もともとはコロナ禍での業績悪化の穴埋めもあったと思うが、これが結果的に会社のコンプライアンス違反を加速させることになったのだと推察する。
余談だが、もともと米Visaや米Mastercardなどの国際ブランドは主にマネーロンダリング(犯罪組織の資金源となる)を理由に成人向けコンテンツや性風俗産業の取り扱いに厳しいのだが、全東信ではこうした業態でもある程度(何かと理由をつけて)審査を通していたため、24年の事件を契機に国際ブランドや国内信販各社から契約の見直しを迫られていたという話がある。
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本来であれば加盟店審査を通らないこれらの業態は(より審査の甘い)海外のPSPを利用するケースが多いのだが、こうしたPSPは手数料が非常に高いこともあり(10%は軽く超えるとされる)、このグレーゾーンの隙間を縫う形で全東信の利用があったという話だ。
●今後の影響と代替手段
まず直近の影響は2つある。1つは未回収の「売上金」の存在で、2つめは全東信に代わるカード決済代行業者の選定だ。
前述の通り、クレジットカードを通して決済された「売上金」はカード利用者からカード発行会社(イシュア)とアクワイアラ(とPSP)を通じて最終的に加盟店に売上金として支払われる。その過程で手数料が引かれていくが、最終的に“売上”からアクワイアラ(またはPSP)から提示される“決済手数料”を引いた金額が加盟店の銀行口座へと支払われる。
今回、本来はPSPである全東信から支払われるべき売上が途中でストップしてしまっているため、未回収の売上金である「プール資金」が宙に浮いた状態になっている。加盟店は“債権者”としてこのプール資金に手を付ける権利があるが、たいていの場合は全額回収は難しいうえ、「すぐに必要な資金を回収できない」という最大の問題が控えている。
日本国内には数多の飲食店があるが、全東信が対応していたような店舗のほとんどは中小規模のものだ。つまり体力がほとんどなく、ちょっとしたきっかけでのキャッシュフロー不足が資金ショートにつながりかねない。
理由としてはいくつかあり、つねに仕入れのために資金を必要としていることと、人手が必要なサービス業であり従業員への支払いが一定タイミングで発生して一気に資金が動くといった部分だ(もちろん家賃や光熱費負担も大きい)。
先ほど「月6回払い」などの「早期支払いサービス」を全東信が提供していて好評を博していることに触れたが、それだけ入金サイクルを短くすることがメリットにつながる業態であることを表しており、これが大規模な連鎖倒産を誘発する危険性を秘めていることにもつながっている。おそらくは、今後半月から1カ月以内に資金ショートに関するかなり深刻な話題がいくつか出てくるはずだ。
問題の2つ目は代替手段だ。当面は現金決済に切り替えるにしても、将来的には全東信の代わりとなるカード決済代行業者を選定する必要があるだろう。なぜなら、飲食店の営業時間帯が夜に傾くほど酒類提供などで顧客単価が上昇する傾向があり、結果としてカード決済需要が高まるからだ。
全東信は入金サイクルの短期化だけでなく、加盟店審査が“比較的緩い”というメリットがあり、これで多くの加盟店を獲得していた。ただ前述のように全東信の加盟店の多くは水商売に近い業態であり、可能性の話だがAirペイや米SquareといったPSPでは審査が通らないかもしれない。
だが近年、全東信の代替になるといわれ加盟店を増やしているのがUSENだ。なぜUSENなのかといえば、もともと同社はそうした店舗に有線放送による音楽配信やWi-Fiサービスなどを提供しており、そのつながりで「決済もできるUSEN」という形で営業を行っている点が大きい。
一方で、前述の風営法1号に該当する店舗は加盟店審査でも問題なく通過できることが多いが、全東信がグレーゾーンとして扱っていた問題店や性風俗店などは性質上USENは通さないため、代替にはならない。他の国内の主要PSPが受け入れるとも考えられず、不利を承知に“代替となる事業者”を探し出すことになるだろう。
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