写真恋愛のカタチは人それぞれ。それでも抑えておくべきポイントや確認が必要な部分など根本的なところはあまり変わらないのかもしれません。今回は根本的な部分をすべてすっ飛ばした結果、地獄をみたという水田由衣さん(仮名・20代後半)の話を紹介します。
◆驚くほど理想の男性
しばらくお付き合いする相手とも巡り合えず悩んでいたとき、「もう20代後半なんだからもっと大人の恋愛をしたほうがいい」「なにも言わなくてもわかりあえる意思疎通とか最高よ」などと複数の友人からアドバイスを受けた由衣さん。
「やきもちを妬いたり妬かれたり、常にドキドキしていたいと学生のような恋愛ばかりを好んできました。でも結婚願望もあるし、このままではダメだと思って友だちが言うように落ち着いた大人の付き合いをしてみようと思ったんです」
友人に勧められたマッチングアプリに登録し、アドバイス通り“包容力のある大人な男性”を希望して複数人と会っていくうちに、驚くほど理想の人とマッチング。新境地を開いた由衣さんはそのとき、「友だちの助言は正しかった」と自分の恋愛観念を改めます。
「智明(仮名・30代)はイケメンではないけれどやわらかい雰囲気で、話し上手で退屈しないんです。『落ち着いた恋愛がしたい』という点でも意見が合いました。そこで友だちのアドバイスを思い出し、多くを語らず相手の気持ちを察する大人の恋愛を実践することにしたんです」
◆大人の恋愛をはじめてみた
何度目かのデートで、智明さんが雇われ店長を務める小さなカフェに招待され、「由衣がいてくれると仕事にハリが出る。ずっと店にいてくれたら嬉しい」と言われた由衣さんはハートを撃ち抜かれてしまいます。それ以降、友だちそっちのけで智明さんの店へ。
「ドリンクや料理もすべてサービスだったので、よほど私といたいのだと思いました。智明の本心を確認しようかと悩むたびに『相手の気持ちを察する大人の恋愛をしたほうがいい』という友人のアドバイスが蘇り、勇気が持てなくなったというのも正直なところです」
由衣さんのなかで「友だちの助言があったから智明と出会えた。これまで私がしてきたような子どもっぽい恋愛を智明は好まないだろうし、いまうまくいっているのに、この雰囲気を悪くするのは怖い。相手の気持ちを察する大人の恋愛をしなければ」という思いが強くなっていきます。
「平日は会社帰りに店へ行き、休日はランチも兼ねてそのまま店に居座り、店が休みの日には待ち合わせて映画館や買い物へ出かける感じ。『由衣は大事な人』と言われたり、『由衣と結婚したらにぎやかになりそう。子どもは何人くらい欲しい?』と聞かれて将来の話をしたりして、完全に舞い上がっていました」
◆未来の夫が困っている
恋愛経験が少なく、相手と長く続いたこともなかった由衣さん。「返信が遅いからすごく心配した」「仕事、忙しいんだね。労わってあげたい」など穏やかでやさしい言葉をくれる智明さんには歴代彼氏とは違った癒しオーラもあり、かけがえのない存在になっていました。
「そんなとき、智明が自分の店を持つのに300万円近く足りないと独り言のように言ったんです。このままつき合いが続けば未来の夫になるかもしれない人。助けてあげたいと思い、貯金を切り崩して半ば強引に『応援したいから』と300万円を渡してしまいました」
智明さんは「どうして? こんなの受け取れない」「いまの関係を壊したくない」などと困惑していましたが、「私だって毎日のように行くカフェなんだから投資させてよ」と言った由衣さんの言葉に恐縮しながらも納得。お金を受け取り、店の内装工事に取り掛かったのです。
「新しい店の改装が終わったら、仕事を辞めて自分も店を手伝うべきかと考えていました。なので『どうせ毎日お店へ行くわけだし、このままつき合ったら結婚するかもしれないし、改装が終わったら仕事を辞めて私も店を手伝おうと思うんだけど、どう?』と聞いてみたんです」
◆真相は藪の中
逆プロポーズのつもりだった由衣さんに智明さんは「……え? 俺たちが結婚ってどういうこと? 友だちなのに?」と戸惑うばかり。由衣さんは驚き、「友だち? 私たち、友だちなの? だったらいままでの思わせぶりな発言は何だったの?」と過去の発言を挙げて問い詰めます。
「すると智明には『大事な人というのは、友だちとして』『ほしい子どもの人数は興味があって聞いただけ』などと言われてしまいました。ショックでしたが、思い返すと智明の言葉はすべて曖昧。そのときはじめて、はっきり好きだと言われたことさえないと気づいたんです」
由衣さんは、「人生で初めてレベルの恥ずかしさに、その場にいられなくなって退散。思い返せば、確認するのが怖いと自覚した頃くらいから余計、智明の言動を独自に解釈して『大丈夫。こんなにも好きでいてくれている』と自分を安心させていたように思います」と振り返ります。
「それから連絡がないと話す私に友だちは『由衣の性格を見抜いて、お金を融通してもらうために曖昧な言葉をかけてたんじゃない?』と怒ってくれました。智明の目的がお金だったのかは謎ですが、付き合っているか確認もせず勘違いして結婚まで夢見たのは私です」
由衣さんは300万円を「あげる」「返さなくていいから」と無理やり押しつけたこともあり、自ら連絡や返金請求をできずに泣き寝入りしています。恋は盲目。お互いの気持ちや関係を確認し、金銭の授受や貸し借りをしない結びつきこそ大人の恋愛といえるのかもしれません。
―シリーズ「男と女の「ゆるせない話」」―
<取材・文/山内良子>
【山内良子】
フリーライター。ライフ系や節約、歴史や日本文化を中心に、取材や経営者向けの記事も執筆。おいしいものや楽しいこと、旅行が大好き! 金融会社での勤務経験や接客改善業務での経験を活かした記事も得意。