画像提供:マイナビニュース子どもの遊び道具として誕生したポケモンカードは、なぜ1枚数十万〜数百万円で取引される市場へと成長したのだろうか。2023年ごろに過熱のピークを迎えたとされるポケモンカード市場だが、その後、市場はどのように変化したのか。本記事では、リユース・トレーディングカード業態を専門とするコンサルタント 菊地正樹氏に取材。ポケモンカード人気を押し上げた要因や市場の変化、そして30周年を迎える今後の展望について聞いた。
人気爆上げの背景にある2つの要因
新作の発売ともなれば、ショップには行列ができ、販売に関して制限が敷かれることも多いポケモンカード。コロナ禍中の2020年末ごろからその人気ぶりが一気に顕在化し、現在でも高値での取引報告を見る機会も少なくない。
そんなポケモンカードだが、かつてはトレーディングカード市場において、主役ではなかったという。では、なぜ現在のような高い人気を得ることになったのかについて、「2016年ごろからPSA鑑定を受けたカードが出回るようになったことで、潮目が変化した」と菊地さんは話す。
PSAとは、アメリカに本社を構える世界有数のトレーディングカードおよびメモラビリアの鑑定機関だ。同社のグレーディングサービス(カードのコンディションを評価した上で、半永久的なケースで安全に保存することで、カードにグレードを付与するサービス)は世界で多く利用されているが、メリットはカードの状態や価値が保証されることだ。
「鑑定品スキームができたことは結構大きくて、PSA評点で最高の10点を取得したカードは、コンディションが保証されているので多少高くても売買されます。そうしたものが出始めたことで、徐々に注目度が上がっていきました」
ポケモンカードが初めて発売されたのは、今から30年前の1996年のこと。当時大ブームを巻き起こした初代のゲームボーイソフト「ポケットモンスター 赤・緑」をバックボーンとするため、ポケモンカードを買う層といえば子どもか、もしくはゲーム自体のファンが大半だ。
「純粋にカードゲームとして楽しんでいた人も多い一方、コレクションとして大事にされていた方も一定数おられます。すると、やっぱり昔買ったカードが自宅に残っているんですよ。そして、2020年のコロナ禍においてポケモンカードが人気であることが知られると、探してみたらあったから売ろうという人と、もう1回プレイしてみようという人の2軸に分かれました。こうした巣ごもり需要も追い風となり市場価値を押し上げたことが、いわゆるポケモンカードバブルが起きた原因だと考えられます」
IP知名度の高さで成り立った「プレイヤー、コレクター、投機家の3軸」
ポケモンカードバブルの背景に、PSAによるカードコンディションの保証と、巣ごもり需要の2つがあることはわかった。しかし、それはかつてトレーディングカード市場の主役であったカードにおいても、同様のように感じられる。なぜ、脇役であったポケモンカードは、一気に主役へと躍り出たのか。菊地さんに尋ねると、コンテンツ力を挙げた。
「他のトレーディングカードと比べて、知名度が抜群に高いですよね。それこそピカチュウと聞けば子どもから大人まで、誰もが姿形をイメージできるほど知られています。これはポケモンならではの強みだったと思います。そうした巨大IPコンテンツの下、プレイヤー層、コレクター層、投機家層の3軸が成り立ったことが大きかったと、私は解釈しています」
コンテンツ力もあって、一般流通品が100万円、200万円といった値をつけることも珍しくなかったポケモンカードだったが、こうした状況は2024年で区切りを迎える。
「私は勝手に『第1次ポケカバブル終了』といった呼び方をしていますが、2024年で一般流通品が100万円や200万円の値をつける時期は終わった印象があります。単純にみんながポケモンカードにお金をつぎ込み過ぎてしまったんですね。また、人気コンテンツの性とも言えますが、偽物や人気を利用した商法が目立ち始めたことで、安心して買えなくなってしまった。それらが重なったことで、2023年をピークに、2024年にかけて価格が一気に下落しました」
現在もその当時のような価格感には戻っていないという菊地さんだが、一方で当時高値をつけていたようなカードはまだ資産という側面を残していると見ている。
「結局、株と同じような動きで推移しているので、ピークよりは下がっても、依然として価格が安定していたり、価格に上昇傾向が見られるカードも存在します。そう考えれば、完全に資産価値を失ったとは言えないと思います」
ポケモンカード市場は今後どうなる? 動向をプロが読み解く
一時の過熱状態から脱したポケモンカード。今後はどのような方向に進んでいくのか。以下は、菊地さんの見解だ。
「9月16日からはポケモンシリーズ30周年に向けて、さまざまな記念プロダクトの投入が予定されています。ポケモンカードも1パック6枚の中にピカチュウが必ず入っているものや、競技にはレギュレーション的に使えないものの、昔人気があったカードを再録するものが目玉として取り上げられています。また、ポケモンのなかでも『御三家』と呼ばれるキャラクターのプロモカードと紙製カードスタンドがセットになった『30th CELEBRATION カードセット』も販売されます。トレーディングカード市場は、来年ぐらいまでは大きな動きが起きやすいのではないでしょうか」
資産としての魅力も認めつつも、一方で菊地さんは競技シーンが市場に与える影響として次のような懸念も口にした。
「例えば、プレイヤーの急増に伴い大会規模が拡大した場合、カードの需要も急増します。現状であれば使用するカードも1枚当たり10円のものがたくさんありますが、供給がその需要に追いつかなくなれば、同じカードが1枚3,000円になってしまうかもしれません。ポケモンカードの本質はゲームです。子どもたちが安価に遊べる環境を維持するためにも、適正な供給と需要のバランスが維持されていくことを望みます」
安藤康之 あんどうやすゆき フリーライター/フォトグラファー。編集プロダクション、出版社勤務を経て2018年よりフリーでの活動を開始。クルマやバイク、競馬やグルメなどジャンルを問わず活動中。 この著者の記事一覧はこちら
菊地正樹 きくちまさき 株式会社lunaless代表取締役ブランドリユース越境ECモールの立ち上げやリユースPOSシステムのセールスマネージャーを経てリユース・トレーディングカード・ECを専門にコンサルティングを行い、株式会社lunalessを設立。NHK「クローズアップ現代」をはじめ各種メディアにコメンテーターとしても出演。 この監修者の記事一覧はこちら(安藤康之)