画像提供:マイナビニュース コスモ石油は製油所への四足歩行ロボットの導入を検討中だ。犬のような形をした自動運転のロボットは、製油所でどんな役割を果たすのか。
製油所のデジタルプラント化とは?
コスモエネルギーホールディングスは長期ビジョン「Vision 2035」において、石油事業の安定供給と徹底した競争力強化を掲げている。その一環として、コスモ石油は製油所のデジタルプラント化に取り組んできた。中でも特に力を入れてきたのが予兆保全や予知保全といった領域だ。
これまでに、運転管理をリアルタイム管理する「IOW」(インテグレーテッドオペレーションウィンドウ)や、3つの製油所を仮想空間で1つの製油所と見立て、機能集約と集中監視を行う統合モニタリングルーム「RCoE」(Reliability Center of Excellence)などを導入してきた。次のステップとして実現を目指すのが、AI駆動型の保全だ。
これはいわゆる「AIドリブンメンテナンス」のこと。AIエージェントを活用し、製油所保全の効率化、高度化を目指す取り組みだ。コスモ石油 工務部 保全戦略グループ長の吉井清英さんは「現場にフィジカルAIをロボットのように導入し、AIをフル活用しながら安全・安定な稼働をさらに強固にしていきたい」と説明した。
○四足歩行ロボット「Spot」の性能とは?
四足歩行ロボット「Spot」のPoCは、製油所における設備の信頼性向上と安全・安定操業のさらなる高度化を目的とするものだ。
検証内容としては、Spotに聴覚や視覚、あるいは熱を感じ取る感覚といった人間の五感に相当するいろいろなセンサーを搭載し、人間に代わって視覚検査や熱検査、超音波検査、音響検査を実施させる。Spotが撮影した3D画像を解析し、仮想空間にプラントを再現する「デジタルツイン」をリアルタイムで作っていくことも検討中だ。
「Spotだけでは単なる現場の情報取得にしかなりませんが、アプリを使ってSpotを管理しながら、IBOS DXというツールを使ってAIで画像を解析し、その結果を我々が使っているデータ統合基盤と連携させて、保全に活用していくコンセプトで検証を行います」と吉井さんは説明する。
ゴールデンレトリーバーほどのサイズ感となる「Spot」だが、単体ではデータの取得ができない。そこで今回は、機材として「SpotCAM2」(球体カメラ、光学カメラ、サーマルカメラ、LEDライト、集音マイク)、「Sorama L642」(超音波カメラ、音響マイク)、「LEICA BLK ARC」(デジタルツインを撮影するための点群撮影カメラ)、自動走行を機能させる「EAP 2」(自動走行機能センサー)、可燃性ガス、酸素、一酸化炭素、硫化水素を検知する「ポータブルガスモニター」を搭載。加えて、危険設備内を走行するため、可燃ガスや硫化水素などを検知した場合に自動シャットダウンする仕組みも搭載する。
Spotの自動走行レベルはどのくらいなのか。説明によると、階段の上り下りはもちろんのこと、設定されたルートに人や障害物があった場合、それを自動で認識して回避し、自動でルートに戻ることが可能だという。道路を横断する際も、クルマがいないタイミングを見計らって進むことできるというからなかなかのものだ。
○人が見落とすわずかなガス漏れもSpotなら検知可能
コスモ石油では2026年5月24日〜28日にかけて、堺製油所(大阪府)の排水処理設備エリアで試験的な現場検証を行っている。その結果を基に、PoCでは以下のような内容の実証を行う。
まずは、Spotによる予兆保全だ。具体的には「ガス漏れ検知」「保温配管の劣化状況確認」「軸受け温度検知」「ポンプの音響検知」となる。
中でも、現場実証で目覚ましい成果が得られているのは「ガス漏れ検知」だ。搭載する超音波センサーの画像から、人間のオペレーターでは気付けなかった空気漏れを検知した。これにより、水素などの危険なガスを扱う他設備において、オペレーターも気づかない極微小のガス漏れをより早期に発見できる可能性があるという。
通常はオペレーター業務となる巡回点検のSpotによる代替も検証する。
5月の現場実証では、計器類(圧力計や電流計、液面計、油面計など)を読み取って正確に記録できるかどうかの検証を実施。夜間でも正確に読み取り可能なことを確認済みだという。油漏れによって水路に油膜が張っていないかなどについても、Spotでデータを取得してAIで解析する検証を実施済みだ。
今後の展開について吉井さんは、「まずはどこかの製油所に1台を本格導入して、ノウハウを蓄積し、ある程度の知見が溜まったタイミングで残り2つの製油所にも展開したいと考えています。全ての製油所に導入した暁には、導入台数を増やし、10台、20台のSpotが常に点検をしている状態を目指したい思います」とした。
一方で、Spotを導入したとしても、全ての管理業務がロボットに取って代わることにはならないというのが吉井さんの見解だ。
「例えば、はしごを登って高所で作業する場合もありますが、それは人でないとできません。ただ、人がしている仕事の一部はロボットで代替できますし、逆に人ができないこともロボットであればできるようになります。超音波を使ってガス漏れを見つけるのは、人にはない能力です」
その上で、「人を置き換えるのではなく、人+ロボットで製油所のトラブルを未然に防ぎ、安全・安定な操業と稼働率の向上を図る。それが結果的に、競争力の強化につながると信じていますし、そこを目指してロボットの導入を進めていきたいです」とのことだった。
○【画像】四足歩行ロボット「Spot」
安藤康之 あんどうやすゆき フリーライター/フォトグラファー。編集プロダクション、出版社勤務を経て2018年よりフリーでの活動を開始。クルマやバイク、競馬やグルメなどジャンルを問わず活動中。 この著者の記事一覧はこちら(安藤康之)