
猛烈な勢いでペンを走らせる私。しかし集中が深まりかけたその瞬間、嫌な予感がして顔を上げました。案の定、5メートルも進まないうちにハルタが立ち止まり、水面から顔を出してこちらを凝視しています。私は慌ててタブレットの上にタオルを被せ、手を振りました。ハルタはにっこりしています。
いつも熱心に見ているユウキくんのママ。今日も相変わらず、スマホひとつ、本1冊すら出していません。まわりを見わたしてもスマホを見たり、本を読んだりしている人ばかりなのに。この人は1時間、ただひたすらガラス越しにわが子と並走しているのです。私には、それがどうしようもなく非効率に見えてしまいました……。
ユウキくんのママはいつも片時も目を離さず、応援していました。ユウキくんのママは「こういうとき親って応援しかできないから、もどかしいですよね〜!」と、話します。その言葉を聞いたとき、私は衝撃を受けました。私は今まで、正直そんなふうに思ったことがなかったからです。
ハルタが潜る隙を狙い、数秒単位の細切れ作業でネームを進めます。しかし中断の連続で思考はカクつき、効率の悪さに焦燥感が募るばかり。一方で、1時間ただわが子だけを見守り続ける隣のユウキくんのママ。その姿を、「非効率さが信じられない」という思いで見つめてしまいます。しかし視線を外しているあいだ、ハルタが水の中で私と目が合うのをじっと待っていることに気づき、胸が痛みました。親の義務と仕事の板挟みのなか、ペンの重みに葛藤しています。
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