
ロジクールから、同社初の折りたたみ式ワイヤレスマウス「Mobi Fold MF900」が発売された。物理ホイールではなくタッチ式のスクロールを採用しており、折りたたむとポケットにすっぽり収まるコンパクトなボディーが特徴だ。
高級携帯マウスの選択肢が少なくなった今、同社直販価格で1万4850円のこの1台は、我々のニーズにどう応えてくれるのだろうか。
●軽量モバイルマウス“枯渇期”に光るか
最近、外出時に持ち歩く携帯性の高いマウスの選択肢が少ないと感じている。
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筆者が長年愛用していたのは、日本マイクロソフトの「Designer Bluetooth Mouse」だ。ボタンがへたってきても、同モデルを買い替えて使い続けてきた。しかし、同社は2023年頃にMicrosoftブランドのアクセサリー販売を終了している。
もともと、Designer Bluetooth Mouseを選択した理由は、約26mmという薄いボディーながらも物理的なホイールを搭載していたことだった。
その前に使っていた携帯用モデルは、同じく日本マイクロソフトの「アークタッチマウス」だったが、こちらはホイール部分がタッチ式であり、微妙な操作感に慣れず、物理的なホイールを持つ同モデルに乗り換えたという経緯がある。
そのため、次のモデルとして検討した際にも持ち運びがしやすいだけでなく、物理的なホイールを持つことを最優先としていたのだ。
一応、後継としてはSurfaceブランドである「Surface モバイル マウス」があるのだが、同社の方針次第で今後の入手性が左右されるということに不安を感じ、マウスメーカーの製品を探すことにした。
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だが、今の薄型/折りたたみモバイルマウスはサプライメーカー製が主で、ロジクールのようなマウスを主力製品の1つとするメーカーからはあまり新製品が出ていないように感じる。
結局、代わりに購入したのがロジクールの「Pebble Mouse 2 M350s」(以下Pebble)だった。
Pebbleは扱いやすいコンパクトマウスではあるが、モバイルに振り切った製品ではない。ロジクールが2024年に発表したユーザー調査では、外出先でPC作業をする人のマウス所有率は72%だが、実際にマウスを持ち歩いて使う人はわずか17%だという。「持ってはいるが、結局持ち歩かない」――その55ポイントの差分こそが、軽量モバイルマウス枯渇の背景にあるのだろう。
そんなタイミングで届いたのが、ロジクール初の折りたたみマウスであるMobi Fold MF900(以下Mobi Fold)だ。
物理ホイールではないタッチスクロール式ということで、ちょっと対象外かな、とも思ったのだが、折りたたみ時のコンパクトさと利用時の大きさはかなりひかれるものがある。そもそもタッチスクロール式の操作感もアークタッチマウスの時代からは変わっているかもしれない。何にしろ、1万4850円というハイエンド帯における久々の新製品には胸が躍る。
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果たして、Mobi Foldは同社初の折りたたみ、かつハイエンドモデルとしてどのようなソリューションを見せてくれるのだろうか。
●そっちに曲がるの?
パッケージを開けると、Mobi Foldはくの字に折れた状態で入っていた。サイズは約57(幅)×122(奥行き)×33(高さ)mm、重量は約79gだ。これだけ見ると、同社のPebbleの約58.7(幅)×106.7(奥行き)×26.62(高さ)mm、約76gとほぼ同等だ。グラファイトの本体はマット仕上げで、表面のシリコン素材が指によくなじむ。
携帯時の形状を確かめようと、本体をぐいっと伸ばす……が、伸びない。あれ、どこかにロックがあるのかな、と思ったがそんなものは見当たらない。そこでようやく、Mobi Foldは携帯時に「伸ばす」のではなく「たたむ」ということに気が付いた。
分かってはいたはずなのだが、アークタッチマウスの感覚が染み付いてしまっていたようだ。どちらかというと、携帯時に伸ばすアークタッチマウスの方が直感に反する気もするが、身に付いた感覚はなかなか消えないらしい。
冷静に考えてみれば、蛇腹状になっている部分が上側についているのだから、そちらが外側になるように折れることは予想できるのだが(アークタッチマウスでは蛇腹は逆の下側に付いていた)。
折りたたまれた状態でのサイズは、約57(幅)×66(奥行き)×21(高さ)mmと片手に収まる。中央で縦に折れるため、単純に奥行きが約半分になるだけで幅は変わらない。高さは使用時の隙間がなくなるので12mmほど低くなる。
持ち運びやすさは、最長辺の短さに左右されるが、Mobi Foldの場合は約66mmだ。フットプリントとしてはクレジットカードよりも小さく、携帯性はずば抜けている。
これだけ軽量でコンパクトだと、うっかりバッグから飛び出して落としてしまう危険性もあるが、同社によると最大約90cmの落下テスト、5万回以上の折りたたみテストをクリアしているという。
さらに現在、ロジクールストアでは専用ポーチのプレゼントを実施している。持ち運び中の傷や落下が気になる人は保護ケースとして利用するといいだろう。
Mobi Foldの接続方式はBluetoothもしくはLogi Boltだ。合わせて3つの接続先を登録でき、底面のEasy-Switchボタンで切り替えられる。Logi Bolt USBレシーバーは付属していないが、利用シーンを考えるとほぼBluetooth接続になると思われるし、Logi Boltで接続したいという人は既にLogi Bolt USBレシーバーを持っているだろう。
ボディーカラーはグラファイトとオフホワイト、ライラックの3色展開だ。ライラックのみロジクールオンラインストア専売となっている。近年の同社はかなり熱心に環境保護に取り組んでいるが、Mobi Foldでもグラファイトが36%、オフホワイトとライラックが29%の再生プラスチックを使用しているという。
バッテリーは100mAhと、アルカリ型単四乾電池の8分の1程度の容量ながら、1分間の充電で約22時間、満充電時で30日以上の利用が可能だ。これはセンサー部にPixArt Imaging製のPAW3222、無線接続方式にBluetooth Low Energy/Logi Boltを採用するなどの低消費電力設計によるところが大きそうだ。
なお、充電ケーブルは別売で、USB Type-Cの充電環境は別途用意する必要がある。
●「Logi Options+」で使い勝手は大きく変化
Mobi Foldに電源スイッチはなく、広げることで電源オン、たたむと電源オフ、となる。本体上部は左右ボタンとタッチスクロール領域で埋められているので、折りたたむときにはどうしてもいずれかのセンサーが反応してしまいそうなものだが、底面センサー部が接地していないときは各ボタンは反応しない。
ただし、タッチスクロール部分は電源オン時に常に反応する。
物理ホイール派の筆者としては、やはりタッチスクロールに戸惑ってしまうのだが、いろいろ試しているうちにタッチスクロール面がペコンと押下できることに気づいた。押し込めるポイントは上下2カ所ある。
はて、これはどういうものだろうと思って確認してみると、進む/戻るボタンであることが分かった。なるほど、ここにボタンを持ってくるとは意表を突かれた思いだ。なお、左右ボタンは静音だが、進む/戻るボタンは音は抑えられているものの静音仕様ではない。
しかし、どうにもすんなりと活用できない。通常の親指で操作する進む/戻るボタンに慣れきってしまっているためか、そこにボタンがないと単に「進む/戻るボタンのないマウス」として使ってしまうようだ。
こういった普段の感覚、「戻るぞ」と思ったときに無意識に押すスイッチを切り替えることは(筆者の場合)なかなか難しく、新しいスイッチを追加することを考える方がよさそうだ。
そこで重宝するのが、カスタマイズツール「Logi Options+」である。通常のマウスであればLogi Options+によるカスタマイズはあくまでプラスαの機能だが、Mobi Foldにおいては製品評価にすら影響を及ぼすほどの重要なものだと感じた。
裏を返せば、筆者の場合はデフォルトセッティングがあまりなじまなかったということでもある。
進む/戻るそれぞれのボタンへの割り当てとして特に有用だと思われるのが、ジェスチャーとActions Ringだ。ジェスチャーは単独クリックと押したまま上下/左右の4方向に動かしたとき、計5パターンの動作を割り当られる機能で、2ボタン両方に割り当てれば最大10種類の機能を呼び出せる計算となる。
割り当ては仮想デスクトップやメディアコントロールなどのプリセットの他、1つずつアクションを設定するカスタムも可能だ。
Actions Ringは、カーソル周辺に最大8つの機能を円形に表示するランチャーの1種となる。対応アプリの場合はメニューバーに移動することなく、マウスカーソルの周囲にメニューが表示されるので、マウスカーソルの移動が激減する。
もう1つ、Logi Options+による効果を期待したカスタマイズがスクロール方向だ。これは完全に個人的な感覚によるものではあるが、毎回タッチスクロールで「あれ、どっちが下スクロールになるんだっけ」と迷ってしまう。
もっとも、下スクロールという表現がビューを下に移動させるのか、画面が下に向かって移動するのか、どちらを示しているのか混乱してしまうこともある。構造的に仕方がないのかなと思いつつも、物理ホイールではそのように感じることはない。手前側に引けば画面は上に向かって流れていく、そのことは正しく身に付いている。
では、どうしてタッチスクロールのときだけ混乱するのだろう、と考えて思い当たったのが、スマホ操作との相違だ。スマホでは画面を下に引っ張ると上スクロール、上に引っ張ると下スクロールになる。
紙面のメタファーとして直感的な操作と言えるだろう。ノートPCのプレシジョンタッチパッドでも同様で、指二本で上に滑らせれば下スクロールになる。だが、スクロールホイールでは指を上方向に動かせば上スクロールだ。
このスクロールホイールを操作するときの動きを模すか、それともスマホを操作するときの動きを模すかでまるっきり逆になってしまう。Logi Options+では(Mobi Foldに限らず)スクロール方向をカスタマイズできる。
実際にスクロールを逆方向に設定してみると、ずいぶんと使いやすくなった。Mobi Foldではゆっくりなぞると精密スクロール、素早くスワイプすると慣性のついた高速スクロールとなるアダプティブタッチスクロールに対応しているが、高速スクロール時の操作感がスマホにかなり近くなる。
勢いよくスライドさせると慣性が働いているかのようにスクロールし、次第に勢いが失われて停止する。MagSpeedホイールでのフリースピンモードのエミュレーション、という捉え方ではなく、スマホの操作と同じ、という受け入れができたことで違和感がなくなった。
このあたりは、無限にスクロールが続くスマホ体験が現在の主流であるという時代の影響も大きいのかもしれない。
●携帯できるからこその普段使い
Mobi Foldを、しばらく日常の出先専用マウスとして使ってみた。
カバンの片隅に放り込んでも、約79gという重量は存在感をほとんど主張しない。約21mmの厚さも、手の中にすっぽりと収まるフットプリントと相まってバッグの隅にスッと沈み込むコンパクトさだ。
では、いざ広げて使うときはどうだろうか。幅や奥行き、高さは一般的なコンパクトマウスと同等なのに、どこか違和感を覚えてしまう。その原因は側面部分にあるようだ。
個人差はあると思うが、通常のマウスを握ったときの親指の位置は比較的低い位置にあるのではないだろうか。ところが、Mobi Foldは側面が中空になっているため、左の縁を親指で、右の縁を薬指で挟むようなフォームになる。
小指はマウスの下側に回り込むような形だ。そのために、自然とMobi Fold特有の持ち方となってしまう。
もしかしたら、そのような指を保持できる側面があればまた違うのかもしれない。今のMobi Foldは上下部分が同サイズだが、左上部と右下部が張り出すようにL字と逆L字にして、折りたたんだときには上下をかみ合わせるようにするなど、折りたたんだときのサイズを維持しつつ、親指と小指の置き場を作るというようなことはできないだろうか、とも思う。
だが、素人がちょっと考えて出てくるようなアイデアは既に検討済みか、検討にも値しないようなものだろう。あるいは、通常のマウスの操作感に近づける、という考え方自体がそぐわないという可能性もある。
操作感が近くなればなるほど、タッチスクロール領域に設けられた進む/戻るボタンになじみにくくなる、という考え方もあるだろう。
結論として、PebbleとMobi Foldのどちらを選ぶか、と問われれば実に悩ましいところだ。
ロジクールストアで4000円を切るPebbleと、1万5000円に迫るMobi Foldを同列で語れないとしても、自分の使い方に合っているのはどちらか、携帯時のコンパクトさ、アダプティブタッチスクロールの高速性、進む/戻るにも使えるボタンの数――そこに1万1000円近い差額の価値を見出すかどうかによるだろう。
個人的には、むしろモバイル用でありながらも、普段使いからこだわり抜いたカスタマイズを見いだしていくことこそが、Mobi Foldの価値を最大限に引き出すための最善の策のような気がしている。
逆説的ながら、持ち運べるということは自宅でも会社でも常に使える相棒になりえるということだ。携帯用マウスだからといって、据え置き用マウスを別に用意する必要はないのかもしれない。
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