35歳を超えても転職できる人、できない人 企業は何を見ているのか

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2026年07月23日 08:21  ITmedia ビジネスオンライン

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「35歳を超えたら転職は無理」は過去の話?

 35歳を超えると転職は難しくなる――かつて転職市場では、そんなイメージを持つ人もいたのではないだろうか。しかし、その状況は変わりつつある。


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 ミドル世代のための転職サイト『ミドルの転職』を運営するエンが、同サイトを利用する人材紹介サービスの転職コンサルタントを対象に実施した調査では、81%が「2026年は35歳以上のミドル人材を対象とした求人が増加すると思う」と回答した。ミドル採用が増える理由として、最も多かったのは「若手人材の不足」だった。


 とはいえ、企業は単純に「若手が採れないから40代を採る」ようになったのだろうか。それとも、40代ならではの価値を評価し始めているのだろうか。エン 執行役員 商品企画室長の峯崎直哉さんに話を聞いた。


●「35歳転職限界説」は本当に終わったのか


 今回の調査結果について、峯崎さんは「日頃から企業や人材紹介会社の動きを見ているが、実感に近い数字」と話す。


 ただし、企業が求めているのは「35歳以上なら誰でもいい」という単純なものではない。重視されているのは年齢ではなく、これまでの経験を生かし、事業や組織を前に進められる力を持っているかどうかだ。


 若手不足を背景に採用対象を広げる企業は増えている。一方で、変化のスピードが速まる中、経験者や管理職層そのものへの需要も高まっている。


 「若手不足はきっかけの一つですが、それ以上に、企業が必要とする人材像が変わってきました」。峯崎さんはそう説明する。


 では「35歳転職限界説」は、終わったと言えるのだろうか。「終わったと言い切るのは少し乱暴だと思います。ただ、『35歳を超えたら一律に転職が難しい』という時代ではなくなりました」


 かつては年齢で採用を判断する企業も少なくなかった。しかし現在は、年齢よりも「入社後にどのような価値を発揮できるか」が問われるようになっている。


 評価されるポイントも年代によって変わる。20代ではポテンシャル、30代ではこれまでの成果。そして40代では、成果だけでなく、それまでの経験を別の環境でも再現できるか、周囲を巻き込みながら組織に影響を与えられるかが重視される。


 「35歳限界説が終わったというより、年齢だけで線を引く採用が限界を迎えていると言ったほうが近いでしょう。企業は『何歳か』ではなく、『入社後に何を前に進められるか』を見始めています」


●企業が40代採用を増やす本当の理由


 ミドル採用が増えている背景には、若手人材の不足だけでは説明できない事情がある。企業が直面する課題が複雑になっていることも、その一因だ。


 近年はDXやAIへの対応に加え、人材不足や管理職不足、既存事業の変革など、企業が同時に抱える経営課題が増えている。こうした課題に対しては、時間をかけて育成する若手人材だけでは対応が難しいケースもある。


 そこで注目されているのが、すでに現場経験を持ち、入社後すぐに成果を出せる人材だ。


 「経験者や管理職層への需要そのものが高まっています。若手が採れないから採用対象を広げるという側面もありますが、事業を伸ばすために経験者が必要だという積極的な理由もあります」


 峯崎さんによると、特に評価されているのは、単なる経験年数ではなく、過去の経験を別の環境でも生かせる力だという。


 例えば、プロジェクトの炎上、組織再編、重要顧客とのトラブルなど、仕事では予定通りに進まない場面も多い。そうした経験を乗り越え、改善につなげてきた人は、新しい職場でも価値を発揮しやすい。


 重要なのは、失敗経験の有無ではない。そこで何を学び、次の成果につなげられるかだ。


 また、DXやAIの普及もミドル人材への需要を押し上げている。企業が求めているのは、単にITツールに詳しい人ではない。現場の業務を理解しながら、デジタル技術を活用して仕事の進め方を変えられる人材だ。


 例えば建設、物流、製造などでは、業界知識を持ちながら業務改革を進められる経験者への期待が高まっている。


 「40代だから採りたい」というよりも、「経験を価値に変えられる人材だから採りたい」という企業が増えている。実際にミドル人材を採用した企業からは、「早期に戦力になった」「若手育成にも貢献してくれる」「組織改善まで進めてくれた」といった評価も聞かれるという。


●求められる40代は昔と変わった


 では、企業が求めるミドル人材像は、以前と比べてどう変わったのだろうか。エンの調査では、35歳以上の転職者に対して企業が求めるスキルとして、「高い専門性と、それに基づく業務遂行能力」が最も多かった。


 ただし、専門知識を持っているだけでは十分ではない。求められているのは、「知っている人」ではなく「実際に成果を出せる人」だ。例えば、前職で営業改革やDXを進めた経験がある場合、それを新しい会社でも再現できるかどうかが評価される。


 以前は、管理職経験や業界経験そのものが評価材料になりやすかった。しかし現在は、肩書や経験年数だけではなく、周囲を巻き込みながら成果を生み出す力が重視されるようになっている。


 「部下を管理していたことよりも、多様な人材と協力しながら成果を出せるかが重要になっています」


 峯崎さんは、これからのミドル人材には「過去の成功体験を持つこと」よりも、「変化に対応できること」が求められると指摘する。


 特にAIの普及によって、管理や承認を中心とした従来型のマネジメントは変化している。これから必要になるのは、メンバーの力を引き出し、新しい価値を生み出すマネジメントだ。


 企業が採用したいと考える人材について、峯崎さんは次のように説明する。


 「専門性があり、現場感覚もある。それでいて過去の成功体験に固執せず、若手からも学び続けられる人です。AIなど新しい技術にも向き合い、自分のやり方を押し付けるのではなく、その会社に合わせて価値を出せる人は強いと思います」


 一方で、採用で慎重になるのは、変化への対応が難しい人材だ。過去の肩書や成功体験だけを語り、新しい技術を学ぼうとしない人は評価されにくい。年齢そのものではなく、変化を受け入れられるかどうかが、これまで以上に問われるようになっている。


●40代採用はさらに広がるのか


 今後、ミドル人材への需要はさらに高まっていくのだろうか。峯崎さんは、この傾向は今後も続く可能性が高いとみている。


 背景にあるのは、若手人口の減少だけではない。DXやAIへの対応、人手不足、管理職層の不足など、企業が抱えるこうした課題は短期間で解決するものではないからだ。


 「若手人口は急には増えませんし、DXやAIへの対応、管理職不足も短期間では解消しません。経験者への需要は今後も続くでしょう」


 特に需要が見込まれるのは、建設や物流、製造など人手不足が深刻な業界のほか、デジタル技術を活用した業務改革を進める企業、成長に伴って管理職層を必要としている企業だ。


 一方で、ミドル世代であれば誰でも転職市場で評価されるわけではない。採用市場が広がる一方で、人材を見極める企業の目は、むしろ厳しくなっている。求められるのは、過去の役職や経験年数ではなく、それを新しい環境でどう生かせるかという点だ。


 「アップデートし続けている人にはチャンスが増えます。一方、変化が止まっている人には厳しくなります。転職市場は広がりますが、評価の二極化も進むでしょう」


 今後は50代にも活躍の場が広がる可能性がある。ただし、それは「50代だから採用される」という意味ではない。年齢に関係なく、企業が必要とする価値を生み出せる人材が選ばれる市場になっていく。


 企業側に求められるのは「何を任せたいのか」を明確にすること。一方、求職者側には「自分は何ができるのか」を言語化することが、これまで以上に重要になる。


 「35歳を超えたら転職は難しい」という考え方は、少しずつ変わり始めている。ただし、単純に年齢の壁がなくなったわけではない。


 これからのミドル世代に問われるのは、これまで積み重ねてきた経験や成果を、新しい環境でも再現できる力だ。過去の成功体験に頼るのではなく、変化を受け入れ、学び続ける人材には、年齢に関係なく、転職の可能性が広がっている。


(熊谷ショウコ)



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