「フェラーリより別荘」を選ぶ若者たち 年10泊から買える!? NOT A HOTELの“新・経済圏”とは

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2026年07月25日 09:11  ITmedia ビジネスオンライン

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NOT A HOTEL 代表取締役 Co-CEO(共同最高経営責任者)の江藤大宗氏(編集部撮影)

 別荘というと、富裕層が軽井沢などに所有して、避暑に訪れる。かつてはこんなイメージが主だったのではないか。


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 滞在できるのは年間でも数十日程度。維持管理も大変そうだ――別荘とは縁のない筆者でもそれくらいは想像がつく。そうしたイメージがあるだけに、シェアリングエコノミーの考えが広がる中で、別荘を複数人で利用するシェア型・サブスク型サービスの登場は、仕組みとしてイメージできた。


 ところが昨今注目を集めるサービスは、単純なシェアやサブスクにとどまらない設計になっている。 


 NOT A HOTEL(ノットアホテル、東京都中央区)が展開するサービスは、最小で年間10泊分から所有権を購入可能だ。自身が使わない日数分はホテルとして貸し出すこともできる。


 購入したオーナーは1カ所の別荘だけでなく、全国のノットアホテルの別荘を相互利用できる。「所有権」の購入となるため、売却・相続も可能。ホテルとも別荘とも異なる、その中間のようなサービスだ。


 同社の代表取締役 Co-CEO(共同最高経営責任者)である江藤大宗氏は、別荘を富裕層だけのものではなく「より多くの人が利用できる形を目指した」と話す。


 創業から6年で契約高は約800億円、オーナー数は約1200人まで拡大した。どのような層が購入しているのか。同社が描くサービスの未来図とは。


●「お金をためてフェラーリ」の代わりにNOT A HOTELを選ぶ若者


 石垣、三浦、北軽井沢、那須――。


 同社は現在、これらを含む全国10拠点に39部屋を開業(2026年6月時点)し、2029年度までに開業予定を含む約30拠点への拡大を計画する。これまで開業済みの中で最も高額なものが、広島県三原市・佐木島の物件で、年30泊分の所有権が約4億円となっている。


 実際に、どのような層が購入しているのか。


 同社の設立は2020年。サービスを開始した当初の購入者は、30〜40代の起業家や金融業界出身者など、比較的若く資産形成を進めた層が中心だったが、現在はその裾野が大きく広がっているという。


 象徴的なのが若年層の変化だ。


 「以前なら、新卒で頑張ってお金をためたらフェラーリを買いたいと考えていたような若い人が、その代わりにノットアホテルを選ぶケースも出てきている」と江藤氏は話す。


 一方で、引退後の生活や、子や孫との時間を見据えた高齢世代の利用も増えている。


 職業も多様化しているという。起業家や投資家だけでなく、高所得の会社員や士業、開業医、地方の企業経営者など、利用者層は年齢・職業の双方で広がりを見せている。


 利用者の広がりは金融資産の規模にも表れている。10億円以上の資産を持つオーナーの購買力が大きい一方、江藤氏が特徴として挙げるのは、資産1億円前後の層が購入している点だ。


 確かに現在、エントリークラスに位置付ける年間10泊分利用の所有権は、例えば神奈川県三浦市の物件で約2900万円といった価格帯のものもある。ホテル宿泊費の上昇や円安による海外旅行費用の増加もあり「毎回ホテルに泊まるなら購入した方が合理的」と考える人を後押ししているという。


●コロナ禍で変わった「時間の使い方」


 購入者の層が広がった背景について、江藤氏は自社の認知度が高まったこと以上に、社会全体の価値観の変化が大きかったと分析する。


 特に同社の創業期に起きた新型コロナ禍の影響が大きかったという。


 「富裕層ほど、プライバシーのある場所を持ちたいという優先順位が上がった。家族や親しい友人、会社のメンバーなど、近しい人と過ごす時間を重視する人が増えた」


 ホテルでは大人数になると複数の客室に分かれる必要がある。一方、ヴィラタイプであれば3世代が一つの空間で過ごせる。こうした利用シーンが支持を集めたという。


 ライフスタイルの変化は一時的な流行ではなく「文化として定着し始めている」と江藤氏は見る。「流行のようなものから、文化へと変化していく感覚に近い」


●富裕層だけを狙わないマーケティング


 こうした広がりを見せる新たな顧客は、どのようにしてノットアホテルを知るのだろうか。江藤氏は「富裕層だけに知ってもらいたいとは考えていない」と話す。


 同社のマーケティング戦略では、Instagramやタクシー広告、雑誌など複数のチャネルを組み合わせながら情報を発信している。


 建築家やクリエイターがSNSで紹介した投稿をきっかけにノットアホテルの存在を知り、タクシー広告で再び目にして興味を持つ――。複数の接点が積み重なることで、資料請求や問い合わせにつながるケースが多いという。


 「新しい暮らし方や生き方を探している人が、SNSやタクシーなどで見かけた広告などを思い出して、自分から情報を取りに来てくれる」


 江藤氏は、企業側から積極的に売り込むよりも、興味を持った人が自ら問い合わせる流れが強まっていると説明する。


●日本各地をつなぎ「日本の価値」を高める


 現在、ノットアホテルの物件を購入したオーナーは約1200人。このうち、海外のオーナーは約25人で、台湾、韓国、香港、シンガポール、英国などから購入している。


 「海外のオーナーは、スペシャルなものを先に押さえるという感覚が強い」


 オーナー全体の1回当たりの単価平均が6000万〜7000万円なのに対し、海外オーナーは3億円弱と高価格帯の物件を選ぶ傾向が強いという。


 海外オーナーの関心は、人気観光地だけでなく、北軽井沢や宮崎など、これまで旅行先としてあまり注目されてこなかった地域にも広がっているという。


 「日本の魅力は一つの有名観光地だけではなく、南北に長い列島に各地の文化や食、自然が連なっているところ。その魅力を知るきっかけとなってほしい」


 1カ所の物件を所有すれば全国の拠点を利用できる仕組みによって、オーナー自身が新しい地域と出会う機会が生まれている。同社が目指すのは、有名観光地だけに人を集めることではなく、日本各地の魅力をネットワークとしてつないでいくことだという。


●「別荘」から広がる一つの経済圏


 同社はいま、別荘だけでなく、ジェットやヘリコプター、クルーザーなどの乗り物を必要な分だけ所有できるガレージ事業や、ホテル事業など、周辺サービスも広げている。


 背景には「購入した別荘そのものの価値を高め続けたい」という考えがある。


 例えば別荘オーナーがホテルやガレージのサービスも利用できるようにすれば、新たな施設やサービスが増えるほど既存オーナーの体験価値も高まる。


 江藤氏は、一つの拠点を起点として、その周囲にサービスや体験を積み重ねていくイメージを描く。「一つ一つを独立した事業として考えるより、全体としてつながる経済圏をつくっていきたい」


 さらに、今後「ヘリコプターからノットアホテルを知る」「クルーザーからノットアホテルを知る」といった層が増えていけば、新しいオーナーとの接点構築にもつながっていく。


 その構想を実現する上で、最大の課題は“人材”だという。


 土地の開発から建築、運営、メンテナンス、二次流通まで幅広い機能を自社で担う同社では、それぞれの領域を担う専門人材が必要になる。


 ただ、単に人数を増やせばいいわけではない。「ホスピタリティを大切にしたい人が、ここで働き続けたいと思える環境をつくることが重要」


 テクノロジーで効率化できる部分と、人が担うべき体験。双方をどう組み合わせるかが、今後のサービスづくりの鍵になると江藤氏は考える。


 創業から6年。別荘の所有権を小口化する仕組みから始まったノットアホテルの挑戦は、宿泊や移動、地域との接点まで含めた新たなサービスへと広がろうとしている。



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