「だまされて加担」でも送検、有罪の見込みがなくても逮捕!? 警察が乱発する"無理筋逮捕"に正義はあるのか?

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2026年07月29日 18:20  週プレNEWS

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警察庁と金融庁が作成した「送金犯罪」新設を周知するポスター


警察庁と金融庁が作成した「送金犯罪」新設を周知するポスター


「結果的に犯罪に加担したことを反省している」

沖縄タイムスなどの報道によると、沖縄県警・豊見城署が7月21日に書類送検した40代の会社員の女性は、同署の調べに対しこう口にした。この女性は、犯罪収益移転防止違反(犯収法違反)の容疑で刑事処分を受けていたというが、一体何があったのか。

「女性が問われたのは、7月10日から新たに施行された『送金犯罪』の容疑です。犯収法違反の改正に伴って新設された罰則で、『商取引・金融取引などの正当な理由がないのに、有償で他人に送金犯罪を依頼・誘因する行為』あるいは『依頼を受けて実行・勧誘する行為』が摘発対象となったのです」(地元メディア関係者)

有罪になった場合、2年以下の拘禁刑あるいは300万円以下の罰金のいずれか、またはその両方が科される。また、行為が反復継続されていた場合は、さらに拘禁刑が5年以下、罰金は500万円以下とさらに重くなる。

豊見城署は全国で初めて、送金犯罪の刑事処分にこぎつけた形だが、女性が罪に問われた背景を見ると、他人事として片づけられそうもない事情があるようだ。

【「知らずに加担」でも摘発】

「女性はインスタグラムで副業を探していた時、素性の知らないアカウント主から誘われて事件に巻き込まれたようです。LINEに誘導され、『短期バイトのスタッフへの報酬支払い』のためと称して自身の金融機関の口座での取引に応じた。女性の口座には計約175万円が振り込まれ、ネットバンキングを通じてほかの6口座への送金が確認されました。金融機関側が不自然な取引に気づいて口座を凍結したことを不審に思った女性が、豊見城署に相談して事件に巻き込まれたことに気づいたそうです」(同前)

女性が自身で警察に相談している点からも、女性側に「犯罪に加担した」という自覚がなかったことが容易に想像される。

捜査当局が法改正による捜査対象の拡充を急いだ背景に透けるのは、近年の特殊詐欺やSNS型投資・ロマンス詐欺の被害拡大がある。警察庁によるとこうした詐欺被害について、2025年の被害総額は約3257億円にのぼるとされている。


「送金犯罪」の新設により、見知らぬものからの依頼を受けてのネット送受金はその目的を知らなかったとしても検挙されるリスクがある


こうした犯罪の背後に常にちらつくのは「トクリュウ(匿名・流動型犯罪グループ)」の影であり、警察庁がマネーロンダリング(資金洗浄)捜査の拡充を新たな組織犯罪への対応策と位置づけているのは明白だった。

「犯収法に『送金犯罪』の罰則が加わる直前の5月には、フィリピンを拠点とした強盗グループの資金洗浄に関わったとして男女3人が詐欺容疑で逮捕されています。グループによる犯罪収益の一部が海外の暗号資産経由所を経由し、少なくとも30の暗号資産口座などを通して"洗浄"されたとみられますが、逮捕された男女の一部は詐欺罪での立件は困難として不起訴になっています。捜査当局の念頭には、マネーロンダリングの典型となっている、銀行送金と暗号資産が混在した多層の資金移動があるのは間違いないでしょう」(大手紙社会部記者)

【捜査当局に好都合な解釈】

今回の法改正による制度設計上の狙いは、他人名義口座を買い取る従来型だけでなく、自分の口座番号を教え、自分で操作して資金を横流しする新しい資金洗浄の担い手を直接捕捉することにある。警察庁は6月、「送金犯罪」の罰則施行に先駆けて公表した資料で、この手口を既存の口座売買規制が及びにくい「脱法的行為」と明確に位置づけてもいる。

しかも「有償」の解釈は広く、現金のみならず暗号資産、各種ポイント、商品券、宝石・貴金属、借金の帳消しといった利益の供与や約束も含まれるとしている。

法改正で、「犯罪収益そのもの」であることの完全な確定を待たず、資金移動インフラへの参加行為そのものを切り出して処罰できるようになった点も、捜査当局にとっては好都合だった。ただ、法改正が犯罪検挙の一層の強化につながったことは間違いないが、そこには危うさも潜む。そして、その危うさを浮き彫りにしたのが、法改正後の初摘発の事例となった沖縄のケースだ。

刑事弁護に詳しいある弁護士は、「書類送検された女性にどこまで犯意があったのか疑問は残ります。ただ、注意すべきなのは、法改正によって女性が仮に『だまされた側』だったとしても摘発はまぬがれなくなったということです。

送金のログ、LINE履歴、本人名義口座、本人端末からの操作が残っていれば、外形上は罰則の構成要件を満たすことができる。対象が犯意の認定がしやすい『口座売買』から故意性の認定が困難な『送金役』へと広がったことで、一般人の摘発リスクは格段に上がった。

ただ、検挙されたからといってすべてのケースで起訴にまで至るかといえば、それはあまり現実的ではありません。それでも、一般市民にとって起訴されないまでも刑事処分の対象になるだけで社会的なダメージは大きい。特に暗号資産の取引にかかわる人にとっては、事件に巻き込まれるリスクがかなり増大したといえるでしょう」と警鐘を鳴らす。

【有罪の見込みがない逮捕に正義は?】

社会問題化する犯罪に対処するために、ときに拙速ともいえる積極的な摘発が行われているのは収益犯罪移転法だけではない。

暴力団関係者らの間で使われる隠語の中に、「パイになる」というワードがある。検察の判断で不起訴になったり、「処分保留」で釈放されたりする場合に使われる隠語だが、近年、暴力団排除の流れが強まっていく中で「パイになる」ケースは相次いでいる。

直近でも、熊本地検は7月15日付で、19歳の知人女性に金を借りようとして断られた後、暴行を加え、現金50万円を奪った強盗容疑で逮捕された指定暴力団道仁会系団体の組員(23)を不起訴処分にした。

また、静岡地検沼津支部は同21日までに、強盗傷害事件をめぐり、被害金約1,800万円の一部を受け取ったとして組織犯罪処罰法違反(犯罪収益等収受)の疑いで逮捕された指定暴力団山口組系団体の幹部(50)をそれぞれ不起訴処分にしている。ともに検察は不起訴理由を明らかにしていない。

こうしたパイ事案の背景には、「暴力団絡みの事件では、一般市民による事件よりも、『事件化』することへの意義があるとされ、有罪に持ち込めなくても検挙さえできればいい、という発想が捜査現場の間で広がっている」(前出の弁護士)という現状があるとの指摘もある。

マネーロンダリング捜査の拡充で、こうした「無理筋」な事件捜査がさらに増えはしないか―。懸念が止むことはない。

文/安藤海南男 写真/photo-ac.com、警視庁

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