写真子どもって、大人が思う以上によく見ているなと感じることはありませんか?
今回は、孫思いの優しいばあばに見えた義母の本性が、ある出来事で浮き彫りになってしまったエピソードをご紹介しましょう。
◆孫を溺愛するばあば、優しさに潜んでいた違和感
松田加奈子さん(仮名・35歳)は、結婚5年目。夫と4歳の息子・優馬くんと3人で暮らしています。
「近所に住む義母は、いわゆる孫溺愛ばあば。『この子は、私の宝なのよ』とデレデレなんですよね」
優馬くんを抱き上げて頬ずりし、会うたびにお菓子やおもちゃを買い与える義母の姿を見ていた周囲からも「優しいお義母さん」と思われていたそう。
けれど、その優しさにはどこか不穏なものが混じっていました。
「義母は、『加奈子さんはね、要領が悪いのよ。そんなんじゃ子どもに迷惑かかるじゃない』とか『そんなに料理が下手じゃ、この子がかわいそうでしょ?』などと、優馬の前でも、遠慮なく私を貶すんですよ」
しかも義母は、決して怒鳴ったり露骨に喧嘩腰になるわけではなく、ニコニコ笑いながらまるで世間話でもするような軽い口調で言うのだそう。
「最初は私も、年配の人特有の口うるささかなって我慢していました。でも、義母って孫を可愛がる優しいばあばをやりながら、同時にその母親である私を下げ続けるんですよね」
それでも、加奈子さんはなるべく笑って受け流していました。場の空気を壊したくありませんでしたし、幼い優馬くんを大人同士の揉めごとに巻き込みたくなかったからです。
◆義母の誘いを、4歳の息子がまさかの拒絶
「ですがそんなある日、義母は当然のように『今日はばあばが公園に連れていってあげるわ!』と優馬の手を握ったのですが……」
すると優馬くんは、その手をパッと振り解き「やだ」とハッキリ拒絶しました。
義母は一瞬、何が起きたのか理解できないような顔をして「どうしたの? ばあばと行くの、好きでしょ? また自動販売機でジュース買おうよ?」と誘ったそう。
慌てたように笑顔を作る義母。しかし優馬くんは首を横に振ります。
義母はさらに「ジュースよりお菓子の方がいい? 両方でもいいのよ」と畳みかけました。まるで“機嫌を取れば言うことを聞くはず”とでも思っているようだったそう。
◆「ママのこと、もういじめないで」
「ですが次の瞬間、優馬は義母を真っすぐ見て『ママのこと、もういじめないで』と言ったんですよ。私は驚いて、一瞬呼吸を忘れてしまいましたね」
振り返った優馬くんの表情は、いつもの甘えん坊な4歳児の顔ではなく、必死に母親を守ろうとしているような、こわばった顔をしていました。
「『ママ、いつも頑張ってるよ。ばあばはいつもイヤなこと言うもん。あと顔がこわい……』と優馬が必死に伝えようとすると、義母の顔から笑みが消えました。そして『いい加減にしなさい!』と、ヒステリックな鋭い声が部屋中に響き渡ったんです」
その瞬間、優馬くんの身体がビクッと震え、加奈子さんの後ろへ隠れます。
「義母は怒りで鬼のように顔を真っ赤にして頭を掻きむしっていましたが、私は優馬の背中をゆっくり撫で『大丈夫だよ。ママとお散歩行こうか』と、義母を置いて一緒に外に出てしまいました」
義母は怒りに任せて何かを言おうとしていましたが、孫の手前、必死に我慢している様子だったそう。
◆孫に拒絶され、義母が失ったもの
「それ以来、義母が来ても優馬は近づかなくなりました。好物のお菓子を差し出されても、すぐ私の後ろに隠れてしまい、無理に距離を詰めようとすればハッキリと拒むようになったんです」
義母は次第に焦り始め、以前のような強気な態度ではなく、どこか下手に出るように優馬くんへ話しかけるようになりました。
「義母は『孫が可愛い』と言いながら、結局は自分の思い通りにしたいだけだったのかな? と思います。私を下げる言葉も、やり方に口を出すのも、孫のためというより、ただ自分が正しいとアピールしたかっただけなのかもしれません」
自分のやり方を受け入れ、自分に従う家族を見て安心したかった。あの怒鳴り声は、その本音が剥き出しになった瞬間だったのでしょう。
「でも優馬はちゃんと分かっていたんです。優しさと、そうじゃないものの違いを。あの瞬間、私は優馬に救われたし、私はもっと優馬をちゃんと守ってあげなくちゃと強く思いました」と微笑む加奈子さんなのでした。
<文・イラスト/鈴木詩子>
【鈴木詩子】
漫画家。『アックス』や奥様向け実話漫画誌を中心に活動中。好きなプロレスラーは棚橋弘至。著書『女ヒエラルキー底辺少女』(青林工藝舎)が映画化。Twitter:@skippop