FC町田ゼルビア・黒田剛監督はサッカー日本代表をどう見たか「やられたところは完全に"個"の部分、そして"原則"の部分だった」

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2026年07月30日 10:20  webスポルティーバ

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FC町田ゼルビア 黒田剛監督インタビュー 後編

 FC町田ゼルビアの黒田剛監督にインタビュー。後編では、先日行なわれたFIFAワールドカップ2026について話を聞いた。Jリーグの監督はサッカー日本代表、そして大会全体をどう見たか。

>>前編「チームとしてJ1初優勝を狙う! 黒田監督が語るその理由」

【日本代表にとって非常に悲劇的な大会】

――FIFAワールドカップ2026で、日本代表はラウンド32でブラジルに1−2で敗れました。監督は今大会の日本の戦いぶりを、率直にどうご覧になりました?

「ファン・サポーターにとって大変悔しい結果だったと思います。一方で、指導者の目線から見ると、非常に悲劇的な大会になってしまったというのが率直な感想かもしれません」

――指導者の視点で悲劇的とは、どういったところに感じました?

「久保建英選手や三笘薫選手といった主力にケガが相次ぎ、冨安健洋選手も本来の力からすると万全ではありませんでした。日本にとって武器であり、核となる選手を欠いた状態で戦わざるを得なかったことは、見た目以上に大きな痛手だったと思います。

 そのなかでメンバーや戦術の選択が正解だったかを判断するのは難しい。ただ、相手に脅威を与えられる選手がピッチにひとりでも多くいなければ、W杯を勝ち抜くのは難しいと。そこを痛感させられた大会になりました」

――攻撃の主力を欠いた一方で、守備面では何が課題だったと思いますか?

「グループステージから失点が多かったことが挙げられると思います。ペナルティエリア外からのカットインシュートを安易に許したり、マークを見失って背後を取られたり、失点の原因については"局面における緩さ"だったことは明確だったと思います。そうした失点が続けば、当然ながら勝ち上がるのは難しくなります」

――監督が町田で重視している守備原則からすると、少し安い失点だったと思います。

「グループステージ3試合で、ああいう失点は多くてもひとつに抑えたい。それが3つ重なり、ノックアウトステージでもその癖は抜けていませんでした。物事を語るうえで推測はよくありませんが、もしかしたら守備原則が細部まで徹底されていなかったのかもしれません」

【ゲームの流れや読みの部分で甘さが出た】

――ブラジル戦で同点に追いつかれた場面も、監督が町田で徹底する「マークを背中に置かない」という守備原則からすると、軽率な対応と言えますか?

「この世界最高峰のレベルで偉そうなことは言えませんが、確かにアディショナルタイムの逆転弾を見ても、自陣のゴール前で個人のマークが散漫となり、危険なエリアでフリーな選手を作ってしまいました。たったひとりでも守備原則を怠ると一瞬で勝負が決してしまいます。そこは事前キャンプで詰めるべき部分なのか、個人戦術なのかわかりませんが、十分に対応しきれていないように見えました。世界ではたった一度のポジションミスですら許してもらえませんね」

――後半はブラジルにクロスを多く入れられ、押し込まれる時間帯が続きました。あの流れをどう見ていましたか?

「得点後は、必ず相手が勢いを持って奪い返しにきます。クロスを多く入れられたから持ち堪えられなかったという観点よりも、セカンドボールを拾って相手陣に押し返していけなかった、ということが問題かなと。ブラジルとの親善試合で日本が勝利したように、サッカーでは負けている側が圧力をかけて勢いづくのは当然の展開ですから。

 先制した後、猛烈に襲いかかってくる相手に対し、どのような思考や戦略で立ち向かい、相手陣にどのように押し返していくのか。また、試合をどう進めていくのか。非常に難しいマネジメントだったことは間違いありません。このような局面で、どのように戦略を浸透させ、実践していくのか。これは日本サッカーの大きな課題なのかもしれません」

――「押し返して自分たちの時間をどう作るか」は、町田が課題として取り組んでいることにもリンクしている部分があるのではないでしょうか?

「そこは結局、目に見えないものに対して、どう提案し、どう理解させ、どう実践させていくかが重要なポイントになると思います」

――目に見えないものと言いますと?

「たとえば、先にも述べましたが、日本で行なわれたブラジルとの親善試合では、日本は2点を先行されてからスイッチが入り、『振りきって前から行こう』と切り替えたことで逆転することができました。逆に、自分たちがリードした時は、相手も同じように前へ出てくることを想定しなければならない。そこで心理的に受けに回ってしまうと、試合を困難な展開にしてしまいます」

――相手が出てくるのがわかっていながら、心理的にもゲームの進め方的にも受け身になってしまったのがよくなかった、と。

「その流れの読みの部分で、やはり弱さがあったかなと。サッカーの試合ではよくあることですが、その心理という目に見えないものに対して、状況を予測し、どこまで細部に踏み込んで言葉にできるか。そして選手の思考やモチベーションを引き出し、冷静に実践できるか。このような大会ではそういった心理や思考、ゲームの機微が極端に勝敗を左右するのではないでしょうか。いずれも目に見えないものの話です。根拠もない非常に難しいアプローチにはなりますが、そんな『究極の差』が明暗を分けるんだと思います」

【強豪国は攻守の切り替えレベルが非常に高い】

――監督は日本以外で注目していた国はあるんですか?

「特定の国というより、強豪国が組織としてどう洗練されているかに注目していました。現代のサッカーは攻守のトランジション勝負がひとつのカギと言えます。強豪国はボールをロストした瞬間の、相手を囲む速さと強度が、非常に高いレベルにあります。単純ミスは許してもらえません。

 失ったところから絶対にボールを逃さない。逃げられたとしても、その後の帰陣と組織の再構築のスピードが尋常ではありません。それを、勝ち上がっている国はどこも高い水準で備えています。

 そのうえで、例えばアルゼンチンはリオネル・メッシ以外の10人が守備をして、ゴール前でメッシに最高の形でボールを渡せる状況を作っていく。それが彼らのなかでの勝利の方程式となっています。そうやって強みを生かした方程式が確立されている国は強いなと感じました」

――確かに、今大会は取るべき役者がゴールランキング上位に並んでいます。それはその方程式が、強豪国は確立されているということですね。

「代表レベルでも、そういう役割がはっきりとしたサッカーになってきたというのは、ひとつのトレンドと言えると思います。Jリーグでも、昨年の鹿島アントラーズはレオ・セアラが21点を挙げ、アシストは0でした。はっきりしているわけです。『ストライカーにゴール前でボールを渡しておけば得点を取ってくれる』という、チームの役割と矢印がしっかりと勝利に向いている。そういうサッカーをしているチームは強いですね」

【個の質を上げないといけない】

――日本代表がここから成長するために必要なものはなんだと思いますか?

「日本は組織力として、確かに体を張って球際でいい守備をした場面はありました。ただ、やられたところは完全に"個"の部分。『なぜその選手に侵入させたの?』『なぜその選手を走らせたの?』『なぜ背後を取られたの?』『なぜ急にマークを外したの?』と、これは全部"個"の問題です。

 グループとして統一感をもって何かができている時はすごくいい守備をしているし、すばらしいチーム組織だなと感じます。日本が守備を強化しているのもよくわかります。ただ、最終的に原則上やってはいけない、起こってはいけないプレーを選択し、失点を重ねてしまいます。やられているのは"個の意識"のところです」

――組織としての綻びが見える時は、必ず個の判断や質の部分が足りなかったと。

「そこをトレーニングのなかでどこまで詰められたかはわかりませんが、プロだからといって、あるいは海外でプレーしているからといって、当然みんなが意識高くできるというわけではありません。またチームとしての守備は、自分の目に見えている範囲だけで完結するわけではなく、背後の対応、体の向き、距離、グループでの連結連動など、すべてでチームとしてより洗練させていかなければなりません。でも最後は"個の差"が勝負の明暗を分けていたのは否定できないと思います」

――組織としてより洗練させたうえで、最初におっしゃったように脅威を与えられる選手の数をもっと増やしていかなければいけないわけですね。

「出場国が増え、ラウンド数も増えた今のW杯において、上に勝ち進むには実力だけでも運だけでも難しく、より総合力の勝負になってきたと感じます。非常に難しい大会になったからこそ、そのなかでトランプのジョーカー的存在が何枚いるか。

 日本人選手が欧州のトップリーグで活躍できるようになってきましたが、勘違いしがちなのは周りのチームメイトのレベルも高いから活躍できる面があるということです。世界で自分自身がもっと光らなければならないし、世界のトップリーグの中心選手がもっと増えないといけない。それは今後、日本が世界で勝ち上がるための十分な根拠にもなるのです。

 イングランドやフランス、スペインなど、伝統ある国は違いを作れるタレントがいるし、勝ち上がっていくだけの選手層もあるし、勝つための理念をチームとして持っている。日本が勝ち上がっていくには難しいレギュレーションになってきたと思いますが、心技体すべてにおいて、より総合的に力をつけていくしかないと思います」

篠 幸彦●取材・文 text by Yukihiko Shino

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