写真 服飾学校 エスモード東京校が、多様化する時代のニーズに合わせた方向転換を図っている。現在、総合コースやパリ校留学コースといった昼間部の2〜3年制コースは新規募集を停止した一方、今年に入り1日〜半年間の多様な短期コースを新設。国内外の受講者から想定以上の好評を得ているという。運営方針の転換とその背景について、エスモード東京校 ジェネラルマネージャーの大谷氏に話を聞いた。
エスモードは、世界初のファッション専門教育機関として1840年にパリで創設。フランスや日本を含む世界12ヶ国で18校舎を運営している。エスモード東京校は、初のフランス国外校として1984年に設立され、現在は恵比寿にキャンパスを構える。
同校では、パリ校と日本校独自の教育プログラムをミックスしたカリキュラムを実践。フランス人講師や現役のプロフェッショナルが指導を行うほか、国際的なネットワークを活かした教育環境により、国内外のコレクションブランドや大手企業、メゾンブランドで活躍する人材も多く輩出してきた。卒業生には、「トーガ(TOGA)」の古田泰子や、「ハトラ(HATRA)」の長見佳祐、「コトハヨコザワ(kotohayokozawa)」の横澤琴葉、「ハルノブムラタ(HARUNOBUMURATA)」の村田晴信、「フェティコ(FETICO)」の舟山瑛美などがいる。
これまで同校では、パターンから縫製までを網羅的に学び即戦力を育成する「総合コース」や、同カリキュラムを英語で学ぶ「イングリッシュコース」、3年次にパリ校へ留学できる「パリ校留学コース」等をメインに開講してきた。しかし、近年は人口減の影響などもあり学生の募集に苦戦していたことから、上記の昼間部コースの新規募集停止を決断したという。
代わって現在注力しているのが、働きながら学べる既存の夜間・土曜コースに加え、多様なニーズに柔軟に対応する「短期コース」の拡充だ。1日完結の「ワークショップ」をはじめ、3ヶ月単位の「ショートコース」、半年間で実践的な技術を学ぶ「ステップアップコース」、海外学生向けの「インターナショナルショートコース」などを複数展開している。
短期コースの受講者は、趣味として学びたい層と、本格的な進学前に体験したい潜在的な層に二分されるという。大谷氏は「『デザイナーになりたいけどどうしたらいいかわからない』という方に、まずは安価で短期間学んでいただき、ご自身の道を確かめてみてはどうかと提案している」と話す。
特に、以前は無料だったワークショップを1回4000〜5000円に有料化したことで、意欲の高い参加者が増加。ベテラン講師の指導のもと、高いクオリティのブラウスを1日で完成させられる満足度の高さから、本格的な長期コースへの強力な足掛かりとしても機能しているという。また、日本のファッションの魅力やエスモードの伝統と技術に加え、円安の追い風も受けて、海外からの受講者も急増している。「海外の方にとっては学費が半額ほどの感覚になることも人気の理由で、想像以上に人が集まっている」(大谷氏)。
8月には、前半と後半の2回に分けた短期集中型の「サマースクール」を新たに開講。初心者から現役服飾学生、社会人まで、それぞれの目的やレベルに応じた5つのプログラムを提供する。また、フランス国立工芸院(CNAM)と提携し、日本にいながらインターナショナルバチェラー(学士号相当)が取得できる「フランス国立工芸院バチェラーコース」も継続して開講する。同コースは今年度すでに満席となっており、来年度は定員枠の拡大を予定。コースの魅力をより明確に伝える発信を強化し、さらなる受講者の拡大を目指すとしている。
さらに、今年開講した新たな短期コースの成功を土台に、来年には経験者を対象としたプロ育成のための「1年間コース」の開講準備も進めているという。「我々は学生さんたちが何を欲しているのかを考えながら、新しい試みを積極的に行っている。まずは時代のニーズに合わせた短期コースから、エスモードのメソッドを幅広くいろいろな方に伝授していけたら」と同校の新たなヴィジョンを語った。
■エスモード東京校:公式サイト/公式インスタグラム 佐々木エリカ (Erika Sasaki) FASHIONSNAP 編集記者 埼玉県出身。早稲田大学国際教養学部卒業後、国内大手アパレルメーカー、ケリング傘下ブランドのMDなどを経験した後、2023年にレコオーランドに入社。現在はウィメンズのデザイナーズブランドを中心に、サステナビリティやSDGs、教育分野も担当。ファッションやカルチャーに加えてジェンダーや社会問題にまつわるトピックにも関心があるため、その接点を見出し、思考や議論のきっかけとなるような発信をしていけたらと願っている。