
夏本番は修理や交換の依頼が集中するため、本来すぐに直せる故障でも長い順番待ちになる可能性がある
猛暑の命綱であるエアコンに異変が。ナフサ不足によって、配管などの部材が不足・高騰しているのだ。それにより、故障箇所によっては、修理や交換がすぐにはできない可能性もあるという。空調設備のプロが、現場の実情と今すぐ取るべき対策を解説します!
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【本体があっても取りつけられない】
もはやエアコンなしでは過ごせなくなった日本の夏。ところが今、イラン情勢を背景とするナフサ不足が、エアコンの設置・交換工事や、一部の修理を直撃しているという。
「ナフサ不足がエアコン業界に与えている影響はかなり大きいですね」
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そう語るのは、空調設備や冷凍・冷蔵設備の設計、施工、メンテナンスなどを手がける不二熱設備。の代表で、YouTubeで「アキ兄(に)ィ」の名でエアコンにまつわる実用的な情報を発信する堤 昭人氏だ。
では、ナフサ不足によって現場にどのような影響が起きているのか。
「やはりプラスチックや断熱材に関係する部材が足りなくなっています。具体的には、室内機と室外機をつなぐ銅の配管を包む保温材や電源系の配線、エアコン内部で発生した水分を屋外へ排出するドレンホース、配管類を覆うカバーなど。細かいところでは、壁の穴を埋めるパテも不足しています。
ただし、今あるエアコンの本体だけを新しいものと入れ替え、既存の配管や配線を生かすのであれば、影響はそれほど大きくありません。
問題は、工場や住宅の新築に合わせて、新たにエアコンを設置するケースです。新設では配管や配線も一(イチ)から用意しなければならず、必要な部材がひとつでもそろわなければ工事に取りかかれません。
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そのため、工場や事業所用でも一般住宅用でも、部材不足で設置工事に入れないケースが出ています。当初は春先に予定されていた工事が大幅にずれ込み、夏場のピークシーズンと重なってしまった現場も少なくありません」
室外機につながる配管や保温材、ドレンホースなどの部材を、ナフサ不足が直撃している
部材の不足とともに、現場を直撃しているのが価格の高騰だ。
「実はナフサ不足が起きる前から、エアコンの設置工事に必要な部材は、何度も値上げが繰り返されていました。製品によっては数年前に比べてすでに3〜4割ほど値上がりしていました。
そこにナフサ不足が直撃し、プラスチック部材はもちろん、被覆にビニールを使う電線類まで値上がりしています。配管カバーを扱うメーカーも、6月から製品を約2割値上げすると発表しました。
当然、部材の大幅な値上がりは工事費にも直接影響します。仮に人件費を上げずに我慢しても、これまでと同じような設置工事費では済まなくなっています」
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特に注意したいのが、「標準工事」で収まらなかった場合だという。
「お客さんは、量販店やインターネットで『標準工事費込み』の価格を見て注文します。ところが、いざ現場に行ってみると、配管の延長や電気工事、穴開けなどの追加作業が必要になることがある。そうなると、値上がりした部材の費用がダイレクトに加算されます。
また、最近は大手家電量販店でも、エアコンを『標準工事費込み』ではなく、本体だけの価格で大きく表示し、工事費込みの総額を別に示すケースが出始めています。
ここで週プレの読者に伝えたいのは、例えば数年前にエアコンを買った人は、『確か1台、このくらいの値段で取りつけられたはず』という昔の相場感を一度リセットしてほしいということです。
インターネットで2、3年前の相場を調べて、現在の見積もりを『高すぎる』『ぼったくられているのではないか』と感じる人もいるかもしれません。しかし、設置工事費が上がっても、工事業者の手元に残る金額が増えているわけではありません。
相次ぐ部材の値上げ、それに追い打ちをかける今回のナフサ不足。さらに、2027年度には、国が定める省エネルギー基準が引き上げられる『エアコン2027年問題』が控えています。
新しい基準を満たせない廉価なベーシックモデルが店頭から姿を消し、今後は本体価格の引き上げや、安い機種の選択肢が狭まることが予想されます。
設置工事関連の費用も含めて、エアコンの価格を巡る状況はここ数年で以前とは比べものにならないほど厳しくなっているのです」
【故障箇所によっては修理もできない!?】
本体も工事費も高くなるなら、今あるエアコンを修理しながら使い続ければいい。そう考える人もいるだろう。
だが、故障の内容によっては、修理にもナフサ不足の影響が及ぶという。
「基板やセンサーなど本体内部の故障なら、大手メーカー製で交換部品が残っている機種であれば、基本的には修理できるでしょう。
ただし、配管に亀裂が入って冷媒ガスが漏れているなど、配管系のトラブルは別です。配管や保温材の交換が必要になるため、部材不足や値上がりの影響を受ける可能性があります。
また最近は、日本の夏が高温多湿になりすぎて、昔の基準の厚さの断熱材では対応できず、結露によって天井から水滴が漏れる問題も起き始めています。そうなると、配管や断熱材の取りつけをやり直す大がかりな工事が必要になります。
もちろん、すべての故障が修理できないわけではありません。しかし、故障箇所によっては『部材がないので今すぐには直せません』という事態も起こりうるんです」
エアコン修理の現状を語った堤昭人氏
そこで、夏本番を迎えた今こそ、エアコンの異変を見逃さないことが重要だ。
「もう暑くなっている今は修理や設置工事の依頼が集中しているため、エアコンが完全に止まってから相談しても、すぐには順番が回ってこない可能性があります。
そのため、以前より冷えにくい、異音や異臭がする、水漏れがあるといった症状があれば、『まだ動くから』と放置せず、早めに修理か買い替えかを判断してください」
特に、10年近く使い続けたエアコンを「この夏だけは持ちこたえてくれ」と使い続けるのは危険だという。
「エアコンは休ませても直りません。猛暑のさなかに突然止まっても、部材不足や作業者への依頼集中ですぐに直せるとは限らない。まだ動いているうちに相談してほしい。
今や夏のエアコンは、単なる家電ではありません。命を守るためのインフラ、いわば『生命維持装置』だと考えてほしいのです」
●堤昭人 Akito TSUTSUMI
株式会社不二熱設備。代表、エアコンYouTuber「アキ兄ィ」。20代の頃、大手エアコンメーカーのサービス担当者として、皇居・吹上御所のエアコン管理を担当。その後、官庁施設や議員宿舎、フランチャイズ店舗、介護施設などの空調設備に携わる。YouTubeで「アキ兄ィ」という名でエアコンにまつわる実用的な情報を発信中
取材・文/川喜田 研 写真/AdobeStock

