「三冠馬」と「三冠王」に関する展示(c)netkeiba 今週末の8月9日は、「野球の日」。東京競馬場内にあるJRA競馬博物館では、9月27日(日)まで、特別展「競馬と野球 記録と記憶のスポーツ」を開催している。100年以上の歴史を持つ両競技の貴重な資料がそろった今回の展示。同博物館で競馬と他ジャンルを組み合わせた企画として、ここまで大規模な特別展は初めてだという。実現までの道のりや展示へのこだわりを探った。
「競馬」と「野球」には、驚くほど多くの共通点がある。ともに1860年〜70年代、外国人たちの娯楽として横浜の居留地に上陸した。野球で同一年に首位打者、最多本塁打、最多打点を獲得する「三冠王」という言葉は、競馬の「三冠馬」に影響を受けたとされる。また、有馬記念はプロ野球のオールスターゲームを参考に、第1回からファン投票による出走馬選定制度を採用。近年では佐々木主浩氏や三浦大輔氏、吉井理人氏や柳田悠岐氏ら、球界のスターが馬主になるなど、その縁は枚挙にいとまがない。
今回、取材に応じてくれたのは、企画を担当する同博物館の廣瀬薫さんと前田和泰さん。発起人の廣瀬さんは「両者の深いつながりに企画のヒントを得た」と話す。「ともに青空の下で行われるスポーツで、データ分析や勝敗予想を楽しめることや、時代を彩るスーパースターの存在もある。そういった様々な魅力こそ、ファン層が重なる理由だと思います。文化的にも共通点が多く、まとめて紹介したらおもしろいのではないかと考えました」。
JRA競馬博物館において、競馬と他ジャンルを組み合わせた企画として、ここまで大規模な特別展は初めて。2023年のワールド・ベースボール・クラシック(WBC)で、侍ジャパンが世界一に輝いたことをきっかけに計画は始動したが、開催までには約3年を要した。展示物の提供にあたっては、全国の博物館や個人に一件ずつ依頼。競馬に対するイメージから中には慎重な反応もあったというが、スポーツや文化的な魅力を伝えることで理解を得ていった。さらに、展示物の中には、プロ野球の応援グッズや競馬のゲームソフトなど、学芸員が持ち寄った思い出の品々もある。前田さんは「発起人としてアイデアを形にしたのは彼女ですが、開催に向けての準備は職員が一丸となって進めてきました」と振り返った。
館内では競馬と野球を結ぶエピソードや資料を数多く見ることができる。エントランスではディープインパクトと23年WBC監督・栗山英樹氏の物語を紹介し、1階奥のギャラリースペースでは両競技の歴史をたどる。2階の展示室では「三冠馬と三冠王」「世界の頂を目指す日本の競馬と野球」などをテーマに共通点を深掘り。廣瀬さんが「双方のお宝が同時に公開されているところが見どころです」と話すように、ナリタブライアンのゼッケンやオルフェーヴルが三冠を達成した際の馬主服、野球では王貞治氏のユニフォームやミット、ランディ・バース氏のバットなど貴重な品々も並ぶ。
来館者にも好評を博しており、会場を訪れた栗山英樹氏や山本昌氏、里崎智也氏といった球界関係者も、両者の深い関わりに驚いた様子だったという。100年以上の歴史が刻んできた記録と記憶。競馬と野球のつながりを知れば、どちらの競技もより身近に感じられるはずだ。
(取材・文:中川兼人)
■展覧会名
特別展「競馬と野球 記録と記憶のスポーツ」
■会期
開催中〜9月27日(日)まで
■会場
東京競馬場内 JRA競馬博物館
■開館日時
中央競馬開催日10時〜17時
月・火除く平日10時〜16時(東門のみ開放)
※祝休日は開館し、直後の平日を休館
■入館料
無料
■主催
公益財団法人馬事文化財団