セブンはなぜ苦戦するのか コンビニ王者を支えた「勝ちパターン」が曲がり角

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2026年08月05日 08:21  ITmedia ビジネスオンライン

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セブンとは真逆? これまでになかった店舗が続々

 コンビニの絶対王者・セブン-イレブン(以下、セブン)の業績が振るわない。


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 2026年3〜5月期決算では、ローソンは純利益が25%増の206億円、ファミリーマートも3%増の218億円で過去最高益を更新。一方、セブンは国内コンビニ事業の営業利益が4.2%減となった。「未来へのインフラ投資に力を入れているからだ」と擁護する声もあるが、現在、コンビニ大手3社はいずれも同様の取り組みを進めているため、やはり「王者の凋落」を感じざるを得ない。


 ただ、そんなパッとしないセブンだが、一点だけ往時の勢いをキープしているところがある。それは伝家の宝刀「ドミナント戦略」に象徴される「拡大路線」である。


 ドミナント戦略とは、特定エリアに店舗を集中的に出店し、配送コストの削減と地域シェアの拡大を図る戦略だ。セブン創業の立役者である鈴木敏文氏は「競争力は突き詰めるとドミナント戦略に行き着く」と語っており、その大方針は現在の経営陣にも受け継がれている。


 その証拠に、今期の決算資料でも「店舗ネットワークの強化」として2030年度までに1000店舗の純増を目指す方針を掲げており、2026年度も550店を出店し、200店の純増を計画している。


 ただ、2019年の「コンビニ24時間問題」から本連載で繰り返し述べてきたように、ドミナント戦略は人口が右肩上がりで増加し、商圏内の業態も限られていた高度経済成長期に誕生した戦略だ。毎年90万人規模で人口が減少し、商圏内に多種多様な「コンビニキラー」が存在する現在の日本では、メリットよりも、カニバリゼーションや長時間労働といったデメリットのほうが大きくなっている。


・“変態セブン”が生まれた背景に、地獄のドミナント戦略(ITmedia ビジネスオンライン 2018年9月25日)


・セブン店長が過労で命を落とした コンプラ重視の時代に“心を壊す人”が増えているのは、なぜか(ITmedia ビジネスオンライン 2025年4月09日)


 実際、ファミマは2019年、澤田貴司前社長が「ある一定の地域でドミナント(集中出店)して商品の配送効率を上げて、という時代は終わりました。収益の見通しの立たない出店はしません」と決別を宣言。ローソンは2020年の統合報告書で、竹増貞信社長が「ローソンは従来からドミナント戦略を採らず、本当に必要とされるマチに出店し」と語るなど、この戦略を採らない立場を示している。


・ファミマ澤田社長激白、加盟店の過度な負担「反省している」(ダイヤモンド・オンライン 2019年12月6日)


・ローソン社長メッセージ「マチの幸せを支えるのが私たちの役割 確かな使命感と責任感のもと、コロナ後の成長を目指します」(出典:2020年 公式Webサイト)


 そんな“時代遅れ”ともいうべき「ドミナント戦略」に固執しているセブンが勢いを欠く一方で、早々に「拡大路線」から見切りをつけたファミマやローソンが「過去最高益」と聞けば、やはりこの大方針に原因があるのではないかという疑念はどうしても拭えない。


●コンビニが生き残るための次の戦略


 さて、次に気になるのは、日本のコンビニの成長を支えてきたドミナント戦略が、もはや機能しないのであれば、これからのコンビニはどうやって戦っていけばいいのかということだろう。


 よく言われるのは「マルチフォーマット戦略」である。


 コンビニといえば、日本全国どこでも同じ店内、同じ品ぞろえ、同じサービス品質というのが常識であり、この均一性こそがコンビニBIG3の強みとされてきた。しかし、人口減少や消費志向の多様化を踏まえ、それぞれの立地や周辺環境、顧客の特性に応じて店舗フォーマットをカスタマイズすべきだという考え方が広がった。


 分かりやすいのはローソンだ。一般的な青い看板のローソン以外にも「ナチュラルローソン」「ローソン100」、OTC医薬品の販売に特化した「ヘルスケアローソン」、介護拠点を併設した「ケアローソン」、病院内の「ホスピタルローソン」など、さまざまなフォーマットを展開している。


 このような地域のニーズにきめ細かく対応したマルチフォーマットがコンビニの未来となるという考えは、ファミマも同じだ。それを象徴するのが7月10日、東京・麻布台にオープンした「FAMIMA PARK AZABUDAI」である。


 これはコンビニの新たな可能性を追求する「Next FamilyMart Project」初の旗艦店で、クリエイティブ・ディレクターNIGO氏との共創で生まれたものだ。店内では人気の「コンビニエンスウエア」がアパレルショップのように並び「試着室」が設置されているほか、店頭にはコーヒーや軽食がテークアウトできる「FAMIMA STAND」もある。


 超高級マンションやチームラボのデジタルアートミュージアムもある麻布台ヒルズというロケーションならではのフォーマットといえる。


 店舗網を広げ、全国どこでも同じ店舗で同じような商品を販売し、商圏内での顧客ロイヤルティーを高めるという発想から、それぞれの地域の特色や事情に応じて、コンビニ側も柔軟に戦い方を変える時代になっている。


●「マルチフォーマット」の動きが加速


 実際、コンビニ市場に参入しようという「新参者」たちの動きを見ても、「ドミナントよりもマルチフォーマット」を強く感じる。


 例えば、ドン・キホーテはZ世代をターゲットにしたカラコンや化粧品、菓子などを中心に扱う「キラキラドンキ」を全国で8店舗を展開。大阪府内の3大学では、コンビニよりも小規模な無人店舗「キャンパスドンキ」も展開している。


 専用アプリに登録すればレジに並ばずに買い物ができる利点のほか、小規模であることを生かして、利用者である学生にアンケートを実施し、品ぞろえを決めている。大学内のコンビニが抱える「レジ待ちの長さ」や「品ぞろえの課題」を解決している。


 「キャンパスドンキ」に慣れ親しんだ学生が社会に出たとき、職場が入るオフィスビルに「オフィスドンキ」ができていたら自然に受け入れるだろう。店舗数の拡大ではなく、顧客とのエンゲージメントを高めることでLTV(顧客生涯価値)の向上を目指す、新しい方向性を示す業態だ。


・客単価は通常ドンキの約3割、それでも儲かる「キラキラドンキ」の仕組みとは(ITmedia ビジネスオンライン 2026年2月10日)


・ドンキ初の「無人店舗」はどう運営しているのか 大学内で挑む、コンビニより小さな新業態(ITmedia ビジネスオンライン 2026年8月03日)


 このように「客」や「立地」に合わせて店舗フォーマットや品ぞろえを柔軟に変えていくマーケットインの発想は、ドミナント戦略とは対照的だ。


 「なにがあるかな、セブン-イレブン。」というCMのキャッチコピーが示すように、コンビニ側がマーケティング力を駆使して「客」がワクワクするものを先回りして開発。それを高密度な出店と高度な物流・流通システムによって広めることで、商圏内のブランド力やロイヤリティーを高めていく――。こうしたプロダクトアウト型の発想が、ドミナント戦略の根底にはあるのだ。


 では、マルチフォーマット戦略以外にはどんな戦い方があるのか。個人的には「ローカライズ戦略」ではないかと思っている。


 地域の風土や文化、客層を徹底的に調査したうえで、その土地の人々に愛される商品、サービスを提供する「地元色の強い個人商店的コンビニ」を目指していく戦略だ。


●外食のノウハウを生かした“謎コンビニ”も


 そこで気になるのは「すき家」「はま寿司」などを運営する日本最大級の外食グループ、ゼンショーホールディングス(以下、ゼンショーHD)の「実験コンビニ」である。


 ゼンショーHDは「さくらみくら」というコンビニを群馬県で9店舗、神奈川県で1店舗運営している。「外食のノウハウを生かしたコンビニ」を模索するための実験店舗であること以外、具体的な狙いや各店舗で行っている実験内容は一切明らかにされていない。そのため“謎コンビニ”などと呼ばれている。


 本連載でも2022年に取り上げ、「店内調理の弁当」を売りにしていることから、ゼンショーグループの「中食」の市場調査の機能があるのではないかと考察した。


・なぜ群馬に“謎コンビニ”ができたのか ゼンショー「実験店舗」の正体(ITmedia ビジネスオンライン 2022年2月15日)


 ただ、あれから4年半、「さくらみくら」の立地や展開しているエリアを見ると、単なる中食市場のリサーチだけではないように思える。


 「さくらみくら」は群馬県内に9店舗が集中している。この理由についてマスコミからの問い合わせがあってもゼンショーHDは答えていない。これはあくまで筆者の想像に過ぎないが、以下のような新しいコンビニの店舗戦略を確立しようとしているのではないか。


 企業城下町で働く人々の間で口コミによる支持を広げ、競合コンビニとは異なる土俵でロイヤルティーを高めていく。


 群馬県内の店舗のうち、「太田下浜田」「太田新田市野井」「太田内ケ島」と太田市に3店舗が集中している。そう聞けば、ピンとくる人も多いだろう。太田市には「スバル町」という地名があるほど、スバルの群馬製作所(本工場や矢島工場など)が立地している。さらに、周辺には部品を供給するサプライヤー企業も多く集まり、「スバルの企業城下町」となっている。


●ゼンショーHDの狙いは


 「そんなのただの偶然でしょ」と思うかもしれないが、「大泉東小泉店」は「スバル大泉工場」から車で8分。太田下浜田店は「スバル矢島工場」の目と鼻の先で車でわずか2分、太田内ケ島店もスバル本工場まで車で7分ほどの立地だ。この傾向は太田市と隣接する大泉町と桐生市でも確認される。桐生広沢町1丁目店もスバルグループ・桐生工業の本社工場まで車で約8分だ。


 10店舗のうち5店舗がスバル製造拠点エリアにあるということは、さくらみくらが進める「実験」は、この立地にこそ意味があるのではないか。


 スバルの工場には大きくて立派な食堂が併設されているので、徒歩圏内にコンビニをつくってもあまり利用されない。しかし、工場から車で数分のロケーションならば、仕事が終わって車で自宅に帰る途中に立ち寄ってもらえる。


 運転中に飲めるコーヒーや軽食、家で使う生活用品、さらに、自炊をしない単身者やテークアウトで済ませたい人には、「できたて弁当」を購入してもらえる。そこで「さくらみくらは安くておいしい」という評価を得られれば、スバルの従業員の間で口コミが広がる。


 また、スバルに部品を納入するサプライヤー企業の中には、規模的に自社食堂を備えていない企業もある。そういう人々がお得意様になってくれたら、スバルグループや関連企業の間で「さくらみくら」の認知度が上がっていくかもしれない。


 そうした「企業城下町マーケティング戦略」を実験的に確かめている可能性はないか。「さくらみくら」という屋号の「みくら」(御蔵・御倉)とは一般的に、神宝や貴重な物品を納める「重要な蔵」を意味することが多い。もちろん、深読みかもしれないが、この実験コンビニの裏コンセプトは、日本のモノづくり企業を支える商品を納める「重要な蔵」という発想なのではないか。


 そう考える理由は、スバル城下町以外の立地にもある。「館林瀬戸谷店」は、「カルピス」を製造するアサヒ飲料群馬工場から車でわずか4分の距離にある。他店舗の周辺を見ても、大小さまざまな工場が立地している。


 さらに特筆すべきは、これらの店舗の周辺には弁当店が競合として存在することだ。


●絶対王者が考える「新しい時代のコンビニ」とは


 例えば、「笠懸阿左美(かさかけちょうあざみ)店」は、道を挟んだ向かいにコメダ珈琲、斜め向かいには弁当チェーン「ほっともっと」がある。「伊勢崎境上渕名(いせさきさかいかみふちな)店」は、すぐ隣にセブンがあり、少し先には「ニューまごころ弁当」がある。「太田内ケ島(おおたうちがしま)店」も200メートルほど先には「ほっともっと」とセブンがある。


 企業城下町で、できたて弁当を武器に支持を広げようとする場合、競合となるのは既存のコンビニや弁当チェーンだ。それらに対してどれほど優位性があるのか、どれほど選ばれているのかというデータを収集しているようにも見える。


 もちろん、これらは全て筆者の想像に過ぎない。ただ、確実に言えるのは、ゼンショーもドン・キホーテも、ローソンやファミマも、もはやコンビニを次々と出店して商圏支配を強める従来型の「拡大路線」とは異なる方向へ進んでいるということだ。


 住宅業界にも似たような構図があるが、企業というのは苦しいときこそ「拡大路線」を推し進めたほうがラクな場面がある。


 「産めよ増やせよ」ではないが、新しい立地を見つけて、店舗を新たに出店したほうが売り上げは上がる。工事をする側も、物流を担う企業も、そして社内でも仕事が増えるため、「成長している」と錯覚しやすい。だから、「ムラ」の中では反対の声はほとんど上がらない。


 しかし、冒頭でも述べたように、このビジネスモデルは日本の人口が右肩上がりで増えていたから成立した。子どもの数が減り、高齢化が進み、消滅自治体が雪だるま式に増えていくこの国で「拡大路線」を続けることが、結果として衰退を早める可能性もある。


 絶対王者セブンがその変化にいつ気付き、「拡大路線」から方針転換するのか。今後も注目していきたい。


(窪田順生)



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