
「ホッピング」が携帯キャリアを悩ませている。ホッピングとは、MNP(同じ電話番号のままキャリアを乗り換えること)で得られる特典を目当てに、利用者が短期間でキャリアを乗り換え続ける行為だ。各社は違約金の請求などで防ぎたいところだが、制度上高い違約金を設けることはできず、手を打てずにいる。
【キャンペーン例を画像で見る】ドコモ miniの還元キャンペーン
キャリア各社は総務省に対し、足かせとなっている制度の改正を求めている。ホッピングの実態と横行する背景を解説する。
●MNPの特典で集客を図る携帯キャリア
携帯キャリアを乗り換える際、かつては電話番号を引き継ぐことができなかった。だが2006年に総務省が価格競争を促す目的でMNPを導入し、移転先でも同じ番号を使えるようになった。
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現在、携帯キャリア各社は利用者を取り込むべく、MNPで乗り換えたユーザーを対象にさまざまな還元キャンペーンを実施している。
NTTドコモは「ドコモ mini」に乗り換えた利用者を対象にdポイントを最大2万ポイント還元するほか、機種変更では4万4000円の割引を実施している。dポイントは「1ポイント=1円」相当としてコンビニやドラッグストアなどでの支払いに使える。他社も同様に、乗り換えで2万円相当のポイントを提供する事例が多い。
端末をセットで購入した場合の割引キャンペーンも実施されており、楽天モバイルではMNP契約者に対してiPhone 16を4万円引きで販売している。
2万円相当のポイント特典が目立つのは、電気通信事業法のガイドラインで還元額が最大2万円(税別)に制限されているためだ。同様に、端末を購入した場合の値引き額も最大4万円(同)と定められている。
値下げ制限は総務省が自由競争を促すために定めたルールだ。こうした制度により、かつてキャリアの乗り換えや新規申し込みなどを条件に、端末を極端に安い価格で販売していた「1円スマホ」のようなキャンペーンは行いにくくなった。
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●2万円還元を目当てに「ホッピング」が増加
MNPの特典を目当てに、携帯キャリアを頻繁に乗り換える「ホッピング」が問題になっている。ホッピングをする人はA社で契約して特典を得た後、すぐに解約してB社と契約し、同様にC社、D社へと乗り換えを続けていく。5社で契約と解約を繰り返せば、最大10万円分の還元を受けられる。また、4万円の値下げにより、機種によっては中古品販売店より安く新品を購入できる。
1社で複数の回線に申し込む場合、キャリアによっては回線の数だけMNPの特典を受けられる。契約ごとに事務手数料はかかるが、それを差し引いても1社で6万ポイント以上を得られる場合がある。
ホッピングはポイ活や副業の一環で行う人が多いが、アルバイトと称してSNSで人を集め、組織的に行う事例もあるようだ。組織的なケースでは、集めたポイントで換金性の高い商品を購入し、売却して現金化する。その一部が報酬としてアルバイトに支払われる構図だ。
利用者にすぐに解約されてしまうと継続的な収入が得られないため、携帯キャリアにとって悩みの種だ。特典のコストを回線利用料で回収するには、2〜3年間の契約が必要とされる。そのため、キャリアは契約違約金によって短期のホッピングを防ぎたいところだ。
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だが「2年縛り」として機能していた違約金の上限は、2019年の法改正で9500円から1000円に引き下げられ、抑止力としての効果をほぼ発揮していない。違約金の引き下げも、前述の値引き制限と同様に競争の自由化を目的としたものだ。
「短期契約を繰り返すとブラックリスト入りする」といううわさもあるが、短期解約を理由に契約拒否することは違法だという見解を総務省が示している。ホッピングをする人はこうした制度の穴をくぐり抜けることで利益を得ている。
●総務省にルール変更を求めるキャリア
キャリア各社は総務省にルール変更を求めており、6月24日の有識者会議では主に3つの案が示された。1つ目は、一定期間の継続利用後や通信サービスの利用状況に応じて特典を提供できるようにする案だ。現行ルールでは継続利用を条件とした特典の提供が禁止されているため、その規制を見直す内容となっている。
2つ目は違約金の上限を1000円から1カ月分の利用料金まで引き上げる案だ。ただし、MNP特典が最大2万円なのに対して金額が小さいため、他の案と組み合わせなければ効果は薄い。
3つ目は、SIMのみの新規契約を対象とした特典の上限を2万円から引き下げる案だ。「他社が2万円の特典をやめない限り、自社もやめられない」というのが各社の本音だろう。
総務省は競争を促し、通信費を下げる目的でさまざまな規制を設けてきた。携帯キャリアは1円スマホなどの手法が使えなくなったため、現在はMNPの特典で集客を図っている。だが、制度の穴を突いて「ホッピング」する人が増え、キャリアが総務省に助けを求めた構図だ。
もっとも、ホッピングを防止するには特典をやめればよいが、貴重な集客手段であるためキャリアはやめられない。総務省がルールを変更しない限り、ホッピングの現状が変わることはないだろう。
自由化のために現状ルールを継続するのか、キャリアの要請に応えるのか、総務省の方針に注目だ。
●著者プロフィール
山口伸:経済・テクノロジー・不動産分野のライター。企業分析や都市開発の記事を執筆する。取得した資格は簿記、ファイナンシャルプランナー。趣味は経済関係の本や決算書を読むこと。
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