『離婚しても終わらない 共同親権がはじまる日』(とーやあきこ著、KADOKAWA)より〈2026年4月1日、「共同親権」が日本で正式に導入されることとなりました〉
という一文で始まる漫画『離婚しても終わらない 共同親権がはじまる日』(とーやあきこ著、KADOKAWA、2026年7月)。
今までは、離婚して子供がいる場合、親権は母親か父親、どちらかが持つという単独親権でした。これが民法改正により、単独親権のほか、父母双方を親権者と定められる共同親権も選べることになったのです。
離婚しても両親が子どもの教育に責任を持つというメリットはありますが、嫌で別れた配偶者と関係を切れないことは、人によっては深刻な事態。
という難しい問題に焦点を当てたのが、この実録漫画です。作者のとーやあきこさんは、自身の経験を元に、母子の間で起こる葛藤を描く漫画に定評があります。監修は、柳原由以先生(アリエ法律事務所)です。
◆顔も見たくない夫、でも縁が切れない
今作の主人公、澤井薫は正論をふりかざしてダメ出しばかりをする夫に疲れ果て、幼い娘のゆりかを連れて離婚することを決意。しかし夫が突然、「共同親権を持ちたい。僕も娘の親だ」と言い出したのです。一刻も早く夫と縁を切りたい薫にとって、人生が暗黒に包まれた瞬間でした。
法律では、DVや虐待の恐れがある場合は、裁判所が「単独親権」と定めることになっていますが、DVの証拠が必要だったり双方の主張が食い違ったりで、トラブルも起こりえます。
主人公・薫の夫は、すべて正論で押し通すタイプです。ゆりかが生まれたばかりの頃、体調不良だった薫がミルクを作ってくれるよう夫に頼んでも、「すぐに作ってほしいとは言わなかったよね? 希望があるなら言葉に出さなきゃ伝わらないってことくらい、君にはわからないのかな?」。一事が万事、この調子です。
◆「夫が嫌い」だけでは難しい?
共同親権を持ったら、夫に縛りつけられたままになる――と危機感を覚えた薫は、弁護士に相談に行くのですが、
〈不倫やDVもない。ギャンブルもない。借金もない。さらに身体的暴力もない〉(〈 〉は同書からの引用、以下同)という夫の、共同親権希望を阻止するのは難しいという答え。
薫の離婚事由は夫への生理的嫌悪感です。夫と話をするのも嫌だという、薫のいわば“感情論”では法的に闘うのが難しいというのです。
〈共同親権とは「子どもの利益」になるという考えのもとに作られた法律〉だとわかってはいても、薫は思い悩みます。
◆離婚した後でも適用される共同親権
片や薫の同僚でシングルマザーの久保真理は、別の角度から共同親権について悩んでいました。
真理は30代前半で、息子は12歳の小学6年生。19歳で出産し、6年後に離婚。離婚原因は元夫のギャンブルや浮気と、薫とはまったく状況が異なります。離婚後は連絡もなく、養育費も払われていませんでしたが、突然元夫から電話があり、和斗(息子)に会いたい、と懇願されたのです。
真理からすれば不信感しかありません。ところが会ってみると、今は改心して真面目な暮らしぶり、息子に会いたい! と頭を下げられた真理は、和斗に父親に会いたいか、直接たずねるのです。すると和斗の答えは――。
離婚後に新たな親の形を見出した真理。反面、まだ自我が芽生えない年齢のゆりかを抱えて、薫は離婚未満の状態から抜け出せずにいました。果たして彼女たちは、どのような結論を出すのでしょうか。
◆子どもの幸せは何なのか、難しい選択
離婚は、夫と妻の軋轢で起こります。子どもの幸せは何なのか、特に子どもが小さなうちは親自身が選択するしかありません。
私は同じ女性として、薫の言い分も痛いほどわかるのですが、子どもにとっては頼もしい父親かもしれません。父親と一緒にいたい、ゆりかの意思を薫がどう尊重するのか。薫と夫が見出した解決策を、ぜひ本書を手にして見てみてください。
巻末には、柳原由以先生ととーやあきこさんとの特別対談付き。親子関係と法改正による制度をどうすり合わせていくのか、きっと参考になりますよ。
<文/森美樹>
【森美樹】
小説家、タロット占い師。第12回「R-18文学賞」読者賞受賞。同作を含む『主婦病』(新潮社)、『私の裸』、『母親病』(新潮社)、『神様たち』(光文社)、『わたしのいけない世界』(祥伝社)を上梓。東京タワーにてタロット占い鑑定を行っている。X:@morimikixxx