KDDIローミング終了後も万全? 楽天モバイル幹部が明かす「ネットワーク強化」「衛星通信」の現在地

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2026年08月12日 19:40  ITmedia Mobile

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楽天モバイルと楽天サービスを併用するユーザーは88.2%に及ぶ

 楽天グループが8月5日〜7日に開催したイベント「Rakuten AI Optimism」にて、イベント最終日の7日、「AIが拓く楽天モバイルとエコシステムの未来」と題して、モバイル関連のパネルディスカッションが行われた。


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 2026年はスマホ・ケータイジャーナリストの石川温氏をゲストに招き、ラジオ番組「スマホNo.1メディア」の公開収録という形で実施。同番組のアシスタントとしてもおなじみのフリーアナウンサー、松代有生氏も参加した。


 楽天モバイルは2025年12月1000万回線を超えて勢いに乗るが、依然としてネットワークに対する不満の声が絶えない。2026年9月末には地方エリアを除きKDDIのローミングも終了する予定で、ローミング終了エリアの通信品質が懸念される。こうしたネットワークの穴を埋める手段としても期待される、スマートフォンと衛星の直接通信サービスを、米AST SpaceMobileと共同で2026年内に開始する予定だ。


 楽天モバイルは今後、どのようにユーザー数を伸ばし、通信品質を改善していくのか。楽天モバイルからは代表取締役 共同CEOの鈴木和洋氏、代表取締役 共同CEO 兼 CTOのシャラッド・スリオアストーア氏、代表取締役社長の矢澤俊介氏が参加し、石川氏の疑問に答えた。


●楽天モバイルユーザーの88%が楽天のサービスを利用


 モバイル事業と楽天エコシステム(経済圏)の連携状況について問われた鈴木氏は、楽天モバイルに加えて楽天経済圏のサービスを利用している「クロスユース」が特に高いことに言及する。通常の楽天経済圏全体のクロスユース率は77.1%だが、楽天モバイルと併用しているユーザーは88.2%に達するという。


 モバイル回線が70以上のサービスへの「入り口」となっており、ポイント利用やカード決済、楽天市場での買い物へと利用領域が横に広がっているという。


 現在、楽天サービスを毎月利用する月間アクティブユーザーの約4600万人に対し、楽天モバイルのユーザー数は1000万人強のため、「ここにはまだまだ成長の余地があると考えている」と鈴木氏は述べる。


 他社経済圏との違いについて話が及ぶと、鈴木氏は「さまざまな機能やサービスがシームレスに連携して使いやすくなっている点が大きな違い。楽天IDとポイントの基盤を使って連携できている。ECの世界で培った30年近い経験とノウハウは簡単には追い付けない」と自信を見せた。


●「Rakuten Link」はAIによって進化 通話の要約機能も実装


 無料アプリ「Rakuten Link」について、鈴木氏は「単なる無料通話アプリを超え、経済圏への送客プラットフォームになっている」と強調。毎月の送客回数が5000万回を突破している現状を明かした。


 さらに、アプリ内でのAI活用や最新機能について次のように紹介した。


 「既にAIコンシェルジュ機能を実装している。例えば友達と会話の途中で『来週末に海に行こう』となった際、AIに『1万円以内ではやりの水着を探して』と話しかければスムーズに検索し、楽天市場で購入できる。ユーザーが『AIを使っている』と強く意識せず、自然な行動の中で使える形が一番あるべき姿だ」(鈴木氏)


 イベント初日に発表された注目の新機能「AI通話要約機能」についても触れた。


 「通話中に『これから話が難しくなりそうだ』あるいは『外国人の上司と話していて分かりづらい』といった際にボタンを押すと、録音・文字起こしを行い、さらに内容を要約してくれる」(鈴木氏)


 買い物データや位置情報などのビッグデータ連携についても「膨大なデータを組み合わせ、生活を豊かにするサービスを今後も出していきたい」と意欲を示した。


●AIを駆使した迅速なネットワーク改善と災害対策


 ユーザーが最も気になる「ネットワークの品質と拡大」について、矢澤氏が楽天モバイルならではのアプローチを解説した。


 楽天モバイルではAIを活用し、ユーザーからの品質改善リクエストに対してAIが即座に基地局の設置候補地を割り出す仕組みを導入している。さらに建築図面の作成などにもAIを活用し、効率的なエリア展開を進めている。現在、都内の山手線25駅での5G構築完了に加え、地下鉄(東京メトロ・都営地下鉄)のプラットフォームおよび駅間でのキャパシティー増強がほぼ完了し、現在は名古屋や大阪でも順次進行中だという。


 また、インフラとソフトウェアを分離している完全仮想化技術は、災害時にも有効に機能すると矢澤氏は説明する。「停電が起きた際には本社からのコントロールで被災エリアの基地局を『省エネモード』に切り替えられる。これにより、予備電源を通常の基地局に比べて最大3倍程度長く稼働できる」


 こうした対策が功を奏し、2026年7月末に発生した熊本地震では早期に復旧できた。また、今回は4キャリアで総合のローミングを行う「JAPANローミング」が機能したことも大きかったと振り返った。


●「Rakuten最強衛星サービス」は2026年内開始に向け「最後の詰め」


 2026年内に開始予定のスマートフォンと衛星の直接通信サービス「Rakuten最強衛星サービス」について、矢澤氏は他社サービスとの明確な違いに触れる。


 「ASTのアンテナは(Starlinkなど)他社に比べて30〜40倍ほど大きく、ビーミング能力が非常に高いのが特徴。他社がSMS程度にとどまるのに対し、われわれは山や海などあらゆる場所でブロードバンド通信を提供できる」と述べ、衛星経由でも高速通信できることをアピールした。


 気になるサービスの開始時期について矢澤氏は「現在、最後の詰めに取り掛かっており、今年(2026年)内に開始できるよう全力を尽くしている」と述べた。


 なお、イベント会場の楽天モバイルブースでは、Rakuten最強衛星サービスをより身近に感じられるよう、ARを用いて、ASTのアンテナの大きさを体感できるデモを実施していた。


 iPadでアンテナを模した紙を撮影すると、アプリ上にアンテナが現れ、実際のサイズが約223平方メートルであることや、人間約608人分、車22台分、テニスコート約1コート分であることが表示される。さらに、「リアルサイズにする」をタップすると、実寸大のアンテナが表示され、iPadを天井に向けてかざすと、あたかも上空に巨大なアンテナが浮かび上がっているように見える。


 この巨大アンテナで通信できる日が待ち遠しい。


●KDDIローミングは「ユーザーのご迷惑にならないよう」調整


 当初は2026年9月末が終了予定となっているKDDIとのローミングについて矢澤氏は「KDDI様とは真摯(しんし)に協議を重ねている。今までローミングを提供してくださって感謝しているし、KDDI様の作ったネットワークの精密さはすごいと思っているので、どこかのタイミングでお話ができると思う」と述べる。


 「でも9月で終わるのでは?」という石川氏の問いに対し、矢澤氏は「お客さまにご迷惑にならないことをKDDI様にも理解いただいている」と含みを持たせながら回答した。もちろん、ローミングがどういった形になろうと、ネットワークを強化する姿勢は変わらず、「終わりはないので、先行する3社はいるが、ナンバーワンを目指していく」と矢澤氏は力を込めた。


 このイベントの数時間後に開催された7日のKDDI決算会見と、8月10日の楽天グループ決算会見では、2026年10月1日以降のローミングについては、地方や山間部などのエリアでは、ローミング継続を視野に入れていることが明かされた。さらに8月12日には、楽天グループの三木谷浩史会長兼社長が、一部エリアで2026年10月以降もローミング継続をすることをX公式アカウントで発信するという異例の事態になった。それほどまでに、ローミングの行方が多くのユーザーから注目を集めていることが分かる。


●ネットワークの「シンプル化」とAI自動運用で低料金を維持


 競合他社が値上げへとかじを切る中、楽天モバイルはいまだ値上げを行っておらず、現行の料金を継続する方針だ。同社はなぜ低価格を維持できるのか。その技術的・構造的理由について、CTOのシャラッド氏は、一言で言うなら「シンプル化」だと説明する。


 ネットワークのハードウェアとソフトウェアを分離した完全仮想化技術と、異なるメーカーのネットワーク装置を運用できるOpen RANを採用したことで、クラウド、OSS(オペレーション支援システム)、ネットワークをシングルレイヤー化(単一階層化)することで大幅なシンプル化を図れたという。


 この構造により、現場に毎回エンジニアを派遣する必要がなくなり、設備投資費を約40%削減、事業運営費を約30%削減するという、大幅な運用コスト削減を実現している。


 ネットワーク運用におけるAI活用について、シャラッド氏はAIでRAN(無線アクセスネットワーク)を制御する「RIC(RAN Intelligent Controller)」などの事例を挙げた。


 「現在、ネットワーク上で7つのAIアプリが稼働しており、約20%の効率化を達成している。例えばある基地局で問題が発生した場合、人の介入なしに近隣の基地局が自動でアンテナの角度を変えてカバー、自動復旧を行う。また、自律型ネットワークの導入により、加入者が増加してもネットワーク運用の人員を1人も増員せずに対応できるのが大きな強みだ」


 Open RANの導入当初は業界内から懐疑的な声もあったが、現在ではグローバルで他のベンダーも採用している。「6G時代にはオープンランがデフォルトになる」とシャラッド氏は自信を見せる。


 それでも、電気代の高騰など、ネットワークに依存しない部分でのコストも増大しているが、「先端テクノロジーを使うことでコストを下げられる」とシャラッド氏は自信を見せた。言葉通りに受け取るのなら、楽天モバイルはコスト増のインパクトをOpen RANやAIで軽減しており、楽天モバイルの料金プランが値上げされる心配はなさそうだ。


 セッションの終盤、今後の注目ポイントについて鈴木氏は「AIの融合」「衛星通信サービスの始動」「最新テクノロジーを基盤としたネットワークのさらなる進化と拡張」の3点を挙げ、引き続き楽天モバイルの挑戦に注目してほしいと呼びかけた。


 石川氏は「AIの力によってネットワークのコストが抑えられているという話は非常に頼もしい。強い経済圏とのシナジーを含め、第4のキャリアとして業界に緊張感を与え続けてほしい」と期待を寄せた。



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