
「閉店間際、ネタの量バグ」――8月上旬、回転すしチェーン「くら寿司」の店舗で撮影された写真が、Xで物議を醸した。写真にはネギトロが山のように盛られた軍艦巻きや、一貫に3枚分のネタが乗っているすしが映っていた。
この投稿には大きな反響が寄せられた一方、「こういった非公式なサービスは載せないほうがいいのではないか」といった批判的な意見も多く集まった。だが実は、このサービスはくら寿司公式のものだったのだ。
店も客も悪気がなかったのに、なぜ炎上してしまったのだろうか? この出来事は、SNS時代における「例外的な対応に見えるサービス」の難しさが詰まっている。
●閉店間際の「特別サービス」という誤解と紛糾
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閉店間際に、店が食材を使い切るために大量放出したのか?――こういった誤解とともに広まった今回の投稿。
Xでは店舗に対して、一部の客のみが有利になる対応を問題視する声が相次いだ。一方で「どうせ廃棄するのであれば、その分を顧客に提供したほうが、フードロスの観点から良いのではないか」といった擁護の投稿もあった。
さらに「たとえフードロス対策という理由があったとしても、現場の勝手な判断でこうした対応を行うのもいかがなものか」と反論する声もあり、議論は大きな波紋を呼んだ。
●実は、公式のフードロス対策だった
だが、これは現場の暴走でも“バグ”でもなかった。週刊女性PRIMEがくら寿司広報に取材した記事によると、「得々ゾーン」という正規のサービスだという。
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仕込みすぎたネタや、注文後にキャンセルが出た商品などを、115円(店舗によって変動)で回転レーンに流す取り組みだ。全店舗で導入しているが、提供する品や時間は決まっておらず、あえて大々的な宣伝はしていない。
食材廃棄を最小限にしつつ、客にもお得だと感じてもらえる価格で提供する。ふたを開けてみれば、くら寿司の取り組みはスーパーの「見切り品」や「おつとめ品」で見られるような、ごくありふれた合理的な対応だったのだ。
しかし、このサービスを知らなかった人には「不公平さ」を感じさせたり、「店側がこっそり行う特別サービスをなぜSNSで晒すのか」といった反感を買う結果になってしまった。あえて大々的にアピールしてこなかった「粋な配慮」が、SNS時代においては予期せぬ炎上の火種になってしまったのだ。
●“マニュアル化”か“粋”か 企業が抱えるジレンマ
事態の真偽が判明したとはいえ、こうした事案が起きると「トラブルになるくらいならマニュアルにないサービスは全て禁じるべきだ」、あるいは「サービスが存在するならもっと全面的にアピールするべきだ」という極端な議論になりがちだ。
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サービスの解釈が顧客に委ねられているからこそズレが生じる。それならば、最初から解釈の余地がないほど“厳格な運用”に落とし込めばトラブルは防げるという考え方だ。
だが、それでは少し惜しい。細かく明示されていないサービスには、店の「粋」や「宝探しのようなワクワク感」を演出し、ブランド価値を高める側面があるからだ。また、イレギュラーで生まれる商品ゆえに安定供給も難しい。“裏メニュー”だからこその利点も確かに存在するのだ。
そうであるなら、現代の企業に求められるのは、「SNSで誤解を含めてひとり歩きすること」を前提に、その“粋”をどこまで緻密に設計できるかだ。同時に、拡散された後の迅速な情報コントロールも欠かせない。今回、くら寿司が「得々ゾーン」という正式名称を早々に明かしたことは、沈静化に向けた非常に有効な一手だったといえる。
●SNSでの「説明」の難しさ
ちなみに、今回“バグ”を報告したユーザーは投稿後、冒頭の発言を「店員への感謝」の現れだと説明している。そして店側に迷惑がかからぬよう、他の客が従業員に「写真と違う」などと要求しないよう呼びかけた。
しかし、この補足ポストは約300いいねにとどまっている。元投稿の300分の1だ。表示回数で言えば、元投稿が約4215万回だったのに対して、補足は約7万回。大きな差がついている。
ここから浮き彫りになるのは、SNSにおける“初報”と“続報”の関心度には、残酷なまでの格差があるという事実だ。週刊女性PRIMEの検証記事についても同様で、後からどれほど丁寧に「説明」しても、それが最初に誤解した人々にまで届くとは限らない。
デジタル空間で「予期せぬ拡散」と「誤解の定着」が隣り合わせにある今、企業と利用者はどのようにして「お店の粋」を守り、付き合っていくべきなのだろうか――そんな難題を、今回の事案は突き付けている。
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