終了発表の縦読み漫画「comico」――元重課金ユーザーが振り返る「いつしか開かなくなった」理由

0

2026年08月21日 09:10  ITmedia NEWS

  • チェックする
  • つぶやく
  • 日記を書く

ITmedia NEWS

写真

 縦読み漫画サービス「comico」が、2027年1月6日に終了する。運営元のNHN comicoが8月17日に発表した。2013年のサービス開始から約13年、「ReLIFE」「ミイラの飼い方」「こえ恋」など、多くのオリジナル作品を送り出してきたサービスが幕を閉じる。


【その他の画像】


 記者は学生時代、comicoを毎日のように開き、アルバイト代の多くをつぎ込んだ読者の一人だ。覚えている範囲でも、数年間で累計10万円以上を課金した。2桁以上の作品の更新をリアルタイムで追うほど生活の一部になっていただけに、終了には驚きと寂しさを覚えた——のだが、振り返ってみると、いつの間にかアプリを開かなくなっていた自分にも気づく。


 この記事では、当時の利用体験を振り返りながら、記者がなぜcomicoから離れていったのかを整理する。


●「ReLIFE」「ミイラの飼い方」……ヒット作を生んだcomico


 comicoは、スマートフォンやWebサイトで利用できる縦スクロール型のデジタル漫画(Webtoon)サービスだ。13年に提供を開始し、国内におけるWebtoonの先駆けとして地位を確立。17年8月には国内累計1500万ダウンロードを突破した。サービス開始当初は公式作品を無料で公開しており、その手軽さが呼び水となった。


 当時を知る人なら、聞き覚えのある作品名もあるだろう。「ReLIFE」はテレビアニメ化したほか、舞台化や実写映画化も実現。「ナンバカ」「ミイラの飼い方」はアニメ化され、「こえ恋」はテレビドラマとなった。今回の終了告知をきっかけに、XなどのSNSでは、これらの作品を懐かしむ声が多く寄せられた。


●記者はいつから読まなくなったのか


 重課金ユーザーだった記者が、comicoからなぜ離れてしまったのか。振り返ると、一番の理由は、comicoが取り扱う作品のラインアップが自身の読みたいジャンルと合わなくなったことだ。記者はもともと、comicoを通して「パステル家族」などの日常系漫画を読んでいたが、次第にファンタジーやアクション系のジャンルを好むようになった。一方でcomicoは、記者の目には、遅くとも2019年ぐらいには女性向け作品の比重が高まっていったように映った


 こうした感覚は、記者だけのものではなかったようだ。今回、サービス終了を受けたXユーザーの投稿でも、「女性向けに特化し始めた頃から読まなくなった」「路線変更してから全く開いてなかった」といった声が複数あり、注力ジャンルの変化を感じたユーザーは他にもいたことがうかがえる。


 一方、Xでは別の理由からcomicoを離れたとするユーザーの声もみられた。中でも目立ったのが、16年に導入された課金制度への言及だ。それまでのcomicoでは、公式作品を基本的に無料で読むことができたが、同年11月のリニューアルで、作品ごとに用意する専用の「作品レンタル券」を使って読む仕組みが導入された。


 作品レンタル券は、1枚で1話を8日間閲覧でき、使った券は一定時間後に自動で回復する。券の回復を待てば読みたい作品を無料で読めるが、まとまった話数を一気に読み進めたい場合は、有料の「応援ポイント」を購入しなければならなくなった。


 当時のSNSの反応をみると、この仕様変更についてはユーザーから多くの反発が起きたようだ。Twitter(現在のX)では「#comicoリニューアル反対」というハッシュタグまで生まれ、「レンタル券をやめてほしい」「無料で読めるのが魅力だった」などの投稿が寄せられていた。今回の終了を受けたXでも、課金制への切り替えをきっかけにcomicoから離れたとする声がみられた。


 記者の場合、当時は「ナンバカ」など愛読しているオリジナル作品があったため、課金制に切り替わってもcomico自体から離れることはなく、自然と課金ユーザーに切り替わった。しかし、これにより新規作品に手をつけづらくなったのは確かだ。


 補足すると、当時、他の漫画アプリはすでに課金制を採用していた。ピッコマは16年4月のサービス開始当初から「待てば¥0」を展開し、LINEマンガも有料のマンガコインを導入済みだった。それでもcomicoで反発が起きたのは、「無料だから読んでいた」ユーザーにとって、それまでのサービス体験を大きく変える仕様変更だったからとみられる。


 もっとも、無課金層の離脱だけであれば、収益への影響は限定的だったはずだ。comicoの存在感が薄れた背景には、別の要因もあったように思う。


 記者がcomicoを読み始めたのは2015年末ごろ。それから21年ごろまで、波はありつつも、スマートフォンのホーム画面にはいつもcomicoのアプリアイコンがあった。公式作品を基本無料で公開していた時期から、一人の読者としてサービスの変遷を見てきたつもりだ。そのうえで、特に印象に残っているのが、連載・掲載を途中で終える作品の多さだ。


 学生時代とコロナ禍が重なったこともあり、記者はcomicoに限らず、複数の縦読み漫画サービスにのめり込んだ。それでも他のサービスと比べて、comicoでは作品が途中で終わるケースが次第に目立つようになっていった。記者はランキング上位以外の作品も読んでいたが、一時期そうした作品が立て続けに掲載終了となったほか、「ネト充のススメ」「ナンバカ」などの人気作品も、作者の体調不良などを理由に途中で連載・掲載を終えた。


 その後、作者が別のプラットフォームで既存話を再公開したり、作品の展開を続けたりする一方、comico上では過去の公開話が読めなくなったケースもあった。当時、こうした状況に対し、記者自身も不満を感じていたほか、コメント欄でも戸惑いや不満を訴える読者が少なくなかった。Xでも、「面白い作品ほど途中で終わった印象がある」「立て続けの打ち切りで読む作品がなくなった」など、連載作品の終了を振り返る声が上がっている。


 終了した作品の傾向や当時の作者コメント、コメント欄の反応などを踏まえた記者個人の見方になるが、こうした“立て続けの終了”は、前述したcomicoの「女性向け作品への注力」と時期こそ重なるものの、それが主な原因だったとは考えにくい。


 特に違和感を覚えたのは、人気作品であっても物語の途中で連載が終わったり、作者の体調不良を理由に終了したりするケースが相次いだことだ。一部作品では、作者と運営側の関係悪化をうかがわせる動きも表面化し、作者がXで自殺をほのめかすような投稿をするといった騒動もあった。読者から見ても、運営と作家の足並みがそろっていないのではないかと感じる場面が少なくなかった。


●「comico」で生まれた作品は今後も続いていく


 NHN comicoは今回の発表で、サービスの終了理由については明らかにしていない。ITmedia NEWSが同社に問い合わせたところ、終了に至った背景や理由については「回答を控える」にとどめた。


 記者自身、comicoから離れてすでに時間がたっており、その後の動向を継続的に追ってきたわけではない。ただ、利用を続ける中でサービスへの違和感を覚える場面が増えていったのも事実だ。終了理由が明かされていないため、直接結び付けることはできないものの、こうした変化がユーザー離れを招き、サービス終了に至る要因の1つになった可能性はあると思われる。


 同社は、 19年12月期から6期連続で最終赤字を計上している。20〜22年には3年連続で10億円超の赤字となり、22年12月期には15億4500万円まで膨らんだ。 一方、直近の25年12月期は1億6400万円の最終黒字に転じている。なお、同社は「comico」以外の事業も手掛けており、どういった内訳になっているのかは不明だ。


 一方、comicoで生まれた作品が消えてしまうわけではない。同社は8月18日、サービス終了後も連載中の作品の制作を続け、他のプラットフォームを通じて国内外に展開すると明かしている。今後は漫画の編集・制作事業に注力するという。10年以上培ってきた縦読み漫画(Webtoon)のノウハウを生かしながら、Webtoonに限らない漫画表現にも取り組むとしている。



    ニュース設定