「まるで水風呂」の水冷ウェア なぜ軽さを捨てた? 重さ2キロでここまで冷える理由

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2026年08月22日 06:21  ITmedia ビジネスオンライン

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「冷やす」に振り切った水冷ウェア

 各地で記録的な暑さが相次ぐ中、暑さ対策グッズの選択肢が年々増えている。体を直接冷やす「着る」タイプでは、ファン付きウェアが主流だ。ただ近年は、より強い冷却をうたう商品も目立つ。


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 そうした中、電気で冷やした水を循環させる水冷ウェアが登場した。家電やIoT機器などの開発を手掛けるShiftall(シフトール、東京都中央区)の新モデル「ChillerX Pro」(3万9900円)だ。前回モデルから冷却性能を約1.6倍に高め、軽さやコンパクトさよりも「冷やす」ことに特化した。


 ChillerX Proは、電動ポンプで冷やした水を服の内側に循環させて、上半身を冷やす「ペルチェチラー方式」を採用している。ペルチェ素子(電気を流すと片面が冷える半導体)で水を冷やし、その冷水を体に巻いたシートに巡らせる。


 一般的なファン付きウェアは、服の中に外気を送り込み、汗の気化熱で涼しさを得る。そのため、外気温が高いほど涼しさは弱まる。一方の水冷は、外気温に左右されにくい。Shiftallによると、気温45度でも水冷シートの表面温度は約15度に保たれるという。15度は水風呂に近い冷たさで、同社は「常に水風呂に浸かっているような感覚」と表現する。


 氷で水を冷やすタイプの水冷ウェアとも異なり、電気で冷やし続けるため、長時間使っても冷たさが持続する。大容量のモバイルバッテリーなら長時間、USB PD対応のACアダプターにつないでいる限り、冷やし続けられる。


 同製品は肌に触れる冷却面積も広く、上半身を面で冷やす。ペルチェ素子を肌に直接当てて冷やす自社の従来方式(ペルチェ直冷)に比べ、冷却面の表面積は約14倍としている。重量は約2.0キロ(バッテリーを除く)で、使う水は約140ミリリットルとなっている。


●前回モデルの反響が、新モデルを生んだ


 具体的な販売台数は非公開だが、2025年に発売した前回モデル「ChillerX」の反響は想定以上だった。水冷ウェアはShiftallが初めて手がける領域だったが、参入1年目から手応えをつかんだ。新モデルのProも、6月の発表以降、販売は概ね計画を上回って推移しているという。


 Shiftallが開発でこだわったのは、「とにかく冷える」ことだった。ペルチェ素子で肌を直接冷やす方式は、凍傷を防ぐために電力を抑えねばならず、単体では冷やす力を高めにくい。強く冷やそうとするほど、この方式では限界がある。そこでたどり着いたのが水冷だった。


 「圧倒的に冷えるため、冷えを求める人には評価してもらえるはずだと考え、商品化した」と代表取締役CEOの岩佐琢磨氏は説明する。


 ただ、水冷も万能ではない。冷たさと冷やす面積が強みだが、その分、重量と消費電力がかさむ。それでも冷却を優先したのは、ユーザー層が明確だったためだ。同社は、前回モデルから、炎天下で働くプロの職人と、暑さで趣味を諦めたくない層の双方をターゲットに据えていた。いずれも、冷えることへの要求が強い層といえる。


●「軽さ」や「コンパクトさ」よりも「冷え」を重視


 前回モデルの利用者からは、「もっと冷やしてほしい」という要望が最も多く寄せられた。Proはこの声に応え、軽さやコンパクトさよりも、冷却を最優先とした。


 ChillerXは、冷却に2つのペルチェ素子を使う。これらを強く働かせるほど発熱も増え、その熱をうまく逃がさなければ、冷却性能を高められない。そこでProは、4本のヒートパイプを備えた大型のヒートシンク(放熱部品)を新たに積み、放熱能力を高めた。その結果、本体は大きくなり、重量はバッテリーを除いて約2.0キロと、前回モデル(約1.6キロ)から増えた。


 軽量化とコンパクト化の要望も寄せられているが、岩佐氏は「軽量化とコンパクト化は冷却性能とトレードオフの関係にある。Proでは冷却を選んだ」と語る。あわせて、気温が40度を超える環境でも動くよう改良した。ポンプの動作音も、利用者の声を受けて前回モデルより抑えたという。


 空調の効かない屋内工場や、建設、屋外の警備や誘導、農業など、暑さから逃げることが難しいシーンでの利用を想定する。加えて、屋内外を歩き回る大規模なイベントや、走行中に日陰を確保しにくいバイクなどでの使用も見込んでいる。


●「水冷式の中でもかなり冷える」の声も


 発売後、ユーザーからは冷却性能を評価する声が寄せられている。中には「水冷式の中でもかなり冷える」との反応もあるほか、延長チューブを買い足し、自分の用途に合わせて使うユーザーもいるという。


 一方で、岩佐氏は「バッテリーの持続時間と重量は課題として認識している」と語る。


 2025年6月、職場での熱中症対策が事業者に義務付けられた。暑い屋内や屋外で働く現場では、対策の必要性が一段と高まっている。Shiftallによると、1社からまとまった数の購入もあり、法人利用も広がりつつある。


 また、海外展開も視野に入る。同社はもともとVR関連製品をグローバルに展開し、製品によっては売り上げの8割を海外向けが占める。ChillerXシリーズも、日本を起点に海外へ広げる考えだ。


 猛暑が当たり前になり、熱中症のリスクを避けるためにも体を冷やす手段が問われている。冷却に振り切ったChillerX Proは、その答えの一つになり得るか。


(カワブチカズキ)



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