※写真はイメージです年間登山者数20万人を数える世界文化遺産・富士山。3000メートル級の山であるにもかかわらず、登山道が整備されており、誰でも登りやすいイメージがあります。
しかし、毎日のように富士山での救助要請のニュースが後を絶たず、今年、静岡県側では富士山での7月の救助要請の件数が22件と(※)、2025年を上回るペースで推移していると言います。※静岡県警発表
高齢者や外国人観光客の無謀登山も問題視されていますが、最近増えているのが親子富士登山でのトラブル。
直近では8月20日、富士山の山小屋付近で1人でいた7歳の男子小学生が警察に保護される出来事がありました。男の子は父親らと富士山を訪れていましたが、父親はぐずった息子をあろうことか富士宮ルート6号目の山小屋付近に残したまま、登山を続けていたといいます。
7月末には、親子で来ていた男子小学生が富士宮口9合目で動けなくなり、山岳遭難救助隊員に救助されています。
筆者は大学山岳部出身の父親と共に小学校3年生で富士宮口から富士山登頂、その後も趣味で登山を楽しんでいます。何度も登山を経験するなか、驚きの光景を目にすることが多々ありました。筆者自身や知人の経験から、トラブルが起きがちな「親子登山」について考えてみたいと思います。
◆登りたくないとぐずる子供に、親が1時間の説得
「登山道にうずくまっている小学校5年生くらいの子どもがいました。心配になり、自分も近くで休憩して様子を見ていたんです。
どうやら横の両親は『そんなんじゃ何もかも諦めることになるぞ』『頂上は絶対綺麗だよ』『みんなに自慢したいんでしょ』などと、登りたくないと首を振り続ける子どもを説得している様子。その後、私は登頂。たまたま剣ヶ峰の写真撮影行列でその親子と前後になり、話しかけてみました。
すると『あれから1時間ごねて、やっと登ることが出来たんです。本当に子供の成長が見えて……ここまで来れて、この子のガッツに感動しました』と母親。横の子どもがぐったりしているのを見て『すごいですね』としか言えませんでした」(50歳・女性)
子どもに「根性をつけて欲しい」「素晴らしい景色を見せたい」と思うのも教育であり、愛情でしょう。反面、嫌がる子どもを無理やり登らせて親自身の“感動ポルノ”の材料にしている可能性もあるのではないでしょうか。子供の意見もしっかり聞いてあげたいものです。
◆体調不良でも諦めず、ほか参加者は困惑
「初心者向けのガイド付きツアーに参加しました。同じグループには中学1年生の女の子と父親の親子が。その子は部活をやっており、中体連をレギュラーで勝ち進んでいる最中だったそうです。
富士登山の繁忙期は山小屋やツアーの予約が5月くらいで埋まってしまいますから、その時点では予定が読めなかったのでしょう。元気な女の子でしたが、途中で体調不良に。ガイドは1人しかいなかったので、全員がたびたび足を止めることになりました。10歩進むたびに立ち止まり休むという進み具合。女性二人組はしびれを切らして、許可を取りつつ先に行ってしまいました。
ガイドはやんわりと撤退を促していましたが、本人や父親は行く気満々。結局、私たちもガイドなしで山小屋まで行くことに。最終的に親子は撤退したようです」(30代・男性)
子どもにとって大切な部活の大会を断念してまで参加したからには、親子ともども絶対に登頂したいという思いがあったのでしょうか。
また、初心者ツアーと謳っているなら安心というおごりもあったのかもしれません。登山ツアーでの参加は他の人との足並みを揃える大変さもあります。じっくり検討して判断したいものです。
◆7合目に女の子がひとり…親の行動にゾッ
筆者が小学生の時に実際に経験した忘れられない出来事もあります。数十年前のこと、父親と共に富士登山をしていた際、ひとりで登る小学校4年生くらいの女の子がいました。話しかけたところ、その女の子は山形から家族で富士登山をしにきていたと言います。
体調不良となり7合目で休んでいたところ、しびれを切らした家族が「登頂して戻ってくる」と山小屋休憩所に残して行ってしまったそう。
しばらく待っていたけど不安になって、ひとりで家族を追って登り始めたのだとか。同世代くらいの私がいるからと、父と私とで途中まで一緒に登りましたが、8合目で彼女は高山病で嘔吐。山小屋に託し、警察に連絡をしてもらうことにしました。
後日、父が女の子に渡していた名刺を頼りにお礼の手紙が届き、無事が確認されました。ですが振り返ると、富士山という危険な山に小さな子供をひとりで残したその子の親にゾッとします。山形からきたからには、どうしても登頂したいという気持ちはわかりますが……。
◆それ本当に「子供のため」ですか?
筆者は今年、小学3年生の子どもを連れて、家族3人で富士登山にアタックしました。しかしながら、子どもは足が痛いと7合目で断念することに。
私だけ登頂をし、子どもは夫と共に下山しました。自身が小学3年で登頂したため、自分ができるなら我が子も大丈夫だと甘く見ていたことを実感しました。
日本最高峰・富士山にわざわざ親子で登頂を目指す理由としてあげられる大きな理由は「子どもを成長させたい」「頑張った子どもを自慢したい」。そして、いざ予定を立ててしまったからには「お金や時間がもったいない」という親本位の理由がほとんどではないでしょうか。
根性を養い、不便な生活を実感できる富士登山は何ものにも代えがたい経験でしょう。ただ、それで親子関係に亀裂が走ったり、他の人や救助隊に迷惑をかけたり、その後の健康に重大な支障をきたすようなことになったらもってのほかです。
◆頂上には小さい子供の姿はほぼない、という現実
筆者が登頂して目にした現実は、当然ながら頂上にはほとんど子どもがいない、ということ。いたとしても中学生くらいか、ぐったりと倒れている小学校高学年ほどの男の子。5〜6合目付近にはかなりの数の親子連れを見かけたにもかかわらず、です。
SNSや登山愛好家向けのサイトには元気な子どもの登頂写真が目につきますが、それはあくまでもレアケースか、良い部分だけを切り取ったものだと思った方がいいでしょう。
子連れの富士登山は途中断念をすることを念頭に入れて進めることが、余裕ある登山をする上で必要です。
<文/小政りょう>
【小政りょう】
映画・テレビの制作会社等に出入りもするライター。趣味は陸上競技観戦