画像提供:マイナビニュース「今は症状がないから大丈夫」という油断が、将来の健康リスクにつながるかもしれない。『毎日の小さな習慣が病気をつくる ヤバイ健康負債』(Dr.パンダ/あさ出版)では、高血圧や糖尿病、認知症などの病気と生活習慣の関係を「健康負債」という新しい視点で解説。日々の小さな選択が将来にどう影響するのか、医学的な知見をもとに読み解いていく。
今回のテーマは「浴び続けた紫外線は、10年後の肌と細胞にも残る」。
○猛暑の夏こそ、紫外線対策を忘れてはいけない
「皮膚がん」と聞くと、ほくろや皮膚の異変で気づきやすい病気だと思う人もいるかもしれません。しかし実際には、初期の皮膚がんは、ただのシミ、ほくろ、治りにくい傷のように見えることがあります。痛みやかゆみがないまま進行することもあるため、「見ればすぐにわかる病気」とは限りません。
近年、日本の夏は猛暑日が増え、「外に出るだけで危険」と感じるほどの暑さになることがあります。こうした暑さの中では熱中症対策に意識が向きがちですが、同時に忘れてはいけないのが「紫外線対策」です。
ただし、ここで知っておきたいのは、暑さと紫外線の強さは同じものではないということです。私たちが「暑い」と感じる主な原因は赤外線や気温ですが、日焼けや皮膚へのDNA損傷を引き起こすのは紫外線です。環境省の「紫外線環境保健マニュアル2020」でも、日焼けは紫外線によるもので、暑さを感じるのは赤外線によるものだと説明されています。
つまり、「暑くない日だから日焼けしない」とは限りません。春先や曇りの日、風があって涼しく感じる日でも、紫外線が強いことがあります。逆に、気温が非常に高くても、雲の量や時間帯、場所によって紫外線量は変わります。紫外線の強さは、季節、時刻、天候、オゾン量、標高、地面からの反射などに左右されます。
そのため、紫外線対策では「今日は暑いかどうか」ではなく、UVインデックスを見ることが大切です。UVインデックスとは、紫外線が人体に及ぼす影響の度合いをわかりやすく示すために、紫外線の強さを指標化したものです。気象庁も、日々の紫外線対策に役立てるため、UVインデックスを用いた紫外線情報を提供しています。
まずは自身の生活を振り返ってみてください。
日焼け止めを使わずに屋外に出る
真昼に長時間の日光浴や屋外活動をする
日焼けサロンを利用している
肌が白く、日焼けすると赤くなりやすいのに無防備でいる
曇りの日や涼しい日は紫外線対策をしなくてもよいと思っている
汗をかいたあとも日焼け止めを塗り直していない
上記のいずれかに該当していたら、日常的な紫外線対策を見直す必要があります。紫外線による肌へのダメージは、一度で終わるものではありません。浴びる量が日々積み重なることで、皮膚細胞のDNAに変異が生じ、将来的に皮膚がんが発生しやすくなると考えられています。
○どれくらいの日焼けが過度になる?
若年期に繰り返し強い日焼けをした人ほど、後年に皮膚がんを発症しやすく、20代までに重度の日焼けを6回以上経験した人では、経験がない人に比べ、メラノーマ(悪性黒色腫)、基底細胞がん、扁平上皮がんの発症リスクが高かったとの研究結果があります。
では、どのくらいの日焼けを「過度」と考えればよいのでしょうか。
一つの目安は、「日焼け後に皮膚が赤くなり、ヒリヒリ痛む状態」です。これは、皮膚が紫外線によって炎症を起こしているサインです。水ぶくれができるほどの日焼けは、明らかに強い紫外線ダメージを受けた状態です。一度でも水ぶくれができるような強い日焼けを経験すると、将来のメラノーマリスクが高まるという報告もあります。
もう一つの目安が、前述のUVインデックスです。UVインデックスは、1〜2が「弱い」、3〜5が「中程度」、6〜7が「強い」、8〜10が「非常に強い」、11以上が「極端に強い」と分類されます。3以上では日中に日陰を利用し、長袖、帽子、日焼け止めを使うことがすすめられ、8以上では日中の外出をできるだけ控える目安になります。
つまり、過度の日光曝露(日光を浴びること)とは、単に「長時間外にいた」という意味だけではありません。短時間でもUVインデックスが高い時間帯に無防備で外にいる、肌が赤くなるまで日焼けする、水ぶくれができるほど焼ける、日焼け止めを塗り直さず汗で流れた状態で過ごす。こうした状況は、皮膚に強い負担をかけます。特にもともと色白で、日焼けすると黒くなるより先に赤くなりやすい人は、紫外線ダメージを受けやすい体質です。そうした人が十分な日焼け対策をしていない場合は、より注意が必要です。
○皮膚がんが発生するメカニズムとは?
ここまで見てきたように紫外線を過度に浴びることは、皮膚がんの最大の危険因子です。WHOの国際がん研究機関は、太陽光による紫外線と日焼けサロンなどの人工的な紫外線を、人に対して発がん性があるものとして分類しています。ではどのようにして紫外線が皮膚がんを引き起こすのでしょうか。
まず、肌が必要以上に強い紫外線にさらされると、皮膚の細胞にあるDNAが傷つきます。DNAは、細胞が正しく働き、正しく増えるための設計図のようなものです。通常、細胞には傷ついたDNAを修復する仕組みがあります。しかし、紫外線を繰り返し浴び続けると、修復が追いつかず、遺伝子に変異が残ることがあります。
紫外線には主にUVBとUVAがあります。UVBは皮膚の表面に強く作用し、日焼けやDNA損傷を起こしやすい紫外線です。一方、UVAは比較的皮膚の深い部分まで届き、酸化ストレスを通じて皮膚の老化や細胞ダメージに関わります。どちらも皮膚にとって無視できない刺激です。
こうしたDNAの傷や酸化ストレスが積み重なると、細胞の増殖を制御する仕組みに異常が起こります。通常なら異常な細胞は修復されたり取り除かれたりしますが、その制御がうまく働かなくなると、異常な細胞が増え続け、がん化する可能性があります。
このため、メラノーマや基底細胞がん・扁平上皮がんといった皮膚がんの発症には日光曝露が深く関係しているのです。
○皮膚がんになるとどうなるのか?
皮膚がんが発生した場合、早期と進行後とで症状や生活への影響が大きく異なります。初期の皮膚がんは、一見するとただのほくろやシミの変化に見えることがあります。皮膚がんの一種であるメラノーマの場合、ほくろの形や色、大きさが変化してくるのが初期症状の一つです。一方、基底細胞がんや扁平上皮がんでは、新しくできた皮膚のしこりや数週間経っても治らない傷として気づかれることが多いです。このような兆候に早く気づけば、病変が小さいうちに対処できるため治療も比較的簡単で、傷跡も小さくてすみます。
しかし皮膚がんを放置してしまうと、症状はより深刻になります。がん細胞が皮膚の深部に浸潤して潰瘍が拡大したり、メラノーマの場合はリンパ節や肝臓・肺・骨などほかの臓器に転移したりしてしまうこともあります。
進行した皮膚がんでは、皮膚のしこりが大きくなって出血し、転移により体重減少や倦怠感、リンパ節の腫れなどといった全身症状があらわれることもあります。治療のために広範囲の手術が必要になれば、皮膚やその下の組織を大きく切除することになり、顔や体に大きな傷跡が残ることがあります。
皮膚がんは「見える場所にできるから大丈夫」と考えられがちですが、実際には、早期の変化を本人が見逃すことも少なくありません。だからこそ、日頃の紫外線対策とセルフチェックが重要なのです。
○すでに若い頃に日焼けしてしまった人はどうすればよい?
「若い頃に部活や海水浴でたくさん日焼けしてしまった」「昔は日焼け止めを塗る習慣がなかった」「今さら対策しても遅いのでは?」そう思う人もいるかもしれません。しかし、今からの対策にも意味があります。
過去に浴びた紫外線ダメージを完全に消すことはできません。しかし、これから紫外線を浴びる量を減らせば、新たなダメージを積み上げずにすみます。皮膚へのダメージは、過去の蓄積だけでなく、今後どれだけ紫外線を浴びるかにも左右されるからです。つまり、若い頃にたくさん日焼けした人ほど、これ以上のダメージを増やさないことが重要です。また、すでに紫外線を多く浴びてきた世代では、皮膚のセルフチェックも大切です。新しいほくろができた、昔からあるほくろの形や色が変わった、治らない傷がある、出血を繰り返す皮膚のしこりがある……。こうした変化に気づいたら、早めに皮膚科で相談するようにしましょう。「過去は変えられないが、これからの紫外線量と発見の早さは変えられる」。これが、すでに日焼け経験が多い人への最も重要なアドバイスです。
【前提】●日焼け止めを複数回使う
SPF値の高い(日常ではSPF30+程度)広域スペクトラム(UVA・UVB両方対応)の日焼け止めを選び、外出の少なくとも30分前には露出する肌にまんべんなく塗布します。特に塗り忘れやすい耳・首・足の甲・手の甲などにも丁寧に塗りましょう。汗をかいたり水に入ったりしたあとは、ウォータープルーフタイプであってもタオルで拭いた時点で落ちてしまうため、2時間おきあるいは水泳・大量の発汗後にはこまめに塗り直すことが大切です。日焼け止めは一度塗ったら終わりではなく、適切に使ってこそ十分な効果を発揮します。
【パンダ式健康習慣】
・日傘の活用
近年は、性別を問わず日傘を使う人が増えています。日傘は美容のためだけではなく、紫外線対策と熱中症対策の両方に役立つ実用的な道具です。日傘を選ぶときは、UVカット加工があるものを選びましょう。晴雨兼用の折りたたみ傘であれば、通勤や買い物にも取り入れやすくなります。特に、夏の昼間に徒歩移動が多い人、屋外で待ち時間がある人、日焼け止めをこまめに塗り直せない人には有効です。
日傘は女性だけのものではありません。子ども、男性、高齢者など、誰が使ってもよい紫外線対策のツールです。帽子やサングラス、長袖の薄手衣類と組み合わせることで、皮膚だけでなく目への紫外線対策にもなります。
・皮膚のセルフチェック
紫外線対策と同じくらい大切なのが、皮膚のセルフチェックです。鏡を使って顔、首、腕、手の甲、足、背中、頭皮、足の裏などを確認しましょう。自分で見えにくい背中や頭皮は、家族に見てもらうか、スマホで写真を撮って確認するのもよい方法です。
メラノーマの早期発見では、ABCDEルールがよく使われます。A(Asymmetry)は左右非対称、B(Border)は境界がギザギザしている、C(Color)は色にムラがある、D(Diameter)は直径が大きく一般に6mmを超える、E(Evolution)は形・色・大きさが変化している。
NCI(米国国立がん研究所)も、ABCDEルールはメラノーマのサインを覚える助けになると説明しています。また、基底細胞がんや扁平上皮がんでは、「治らない傷」「出血を繰り返すしこり」「かさぶたが何度もできる場所」「急に大きくなる皮膚の盛り上がり」などがサインになることがあります。
気になる変化を見つけた場合は、「ひとまず様子を見よう」と放置せず、皮膚科で相談してください。早く見つけるほど、治療の負担を小さくできる可能性があります。
ちょっとした習慣を変えるだけで、過度の日光曝露によるリスクを大幅に低減することができます。今日からできる紫外線対策を取り入れ、将来の皮膚がんリスクを減らしましょう。
○『毎日の小さな習慣が病気をつくる ヤバイ健康負債』(Dr.パンダ/あさ出版)から抜粋してご紹介します。
登録者数約40万人を誇る人気YouTuber・Dr.パンダが、予防医学の観点から“本当に正しい健康習慣”をやさしく丁寧に解説!私たちは、何気ない日々の生活の中で、悪いと気づかないまま身体に負担をかけ、「健康負債」を積み重ねています。本書では、健康負債につながる間違った健康法や生活習慣を明らかにし、その背景にある医学的根拠=エビデンスとともに、改善策をわかりやすく紹介します。がんの予防と早期発見の方法や気をつけたい大病の予防、さらには健康寿命を延ばす食事術や生活習慣まで網羅。「正しい知識」と「続けられる実践法」を一冊に凝縮した“健康書の決定版”です。