
AI需要を追い風に、業績を伸ばしているキオクシア。上場企業の業績予想などを掲載する『会社四季報』(東洋経済新報社)では、「データセンター向け出荷好調」「爆益」といった言葉が並ぶ。一方、AI需要がいつまでも急拡大するとは限らず、韓国勢による巨額投資や中国メーカーの台頭など、先行きにはリスクもある。
【動画を見る】TechLIVE『【四季報で読み解く!】「キオクシア」絶好調の裏側と今後のリスクをIT記者が徹底解説!味の素との意外な関係も?』
キオクシアは今後も成長を続けられるのか。『会社四季報』の記述を手掛かりに、アイティメディアTechLIVE編集部のIT記者であるオカダダイスケ氏が同社の強みとリスクを読み解く。
●キオクシアは、なぜ話題になっている?
――そもそもキオクシアは何を作っていて、なぜ株式市場で注目されているのでしょうか。
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キオクシアが手掛けているのは「NAND(ナンド)型フラッシュメモリ」というデータを保存するメモリです。かつては東芝メモリという社名だったんですが、東芝の経営問題で事業が切り離され、現在のキオクシアになりました。
NAND型フラッシュメモリとは、電源を切ってもデータが消えない記憶メディアのことです。スマホやPC、USBなど身近な電子機器で必須です。
その需要が高まっている背景には、AmazonやGoogle、Microsoft、Metaなど、ハイパースケーラーと呼ばれる米国の巨大クラウド事業者が、AIデータセンターのインフラへの投資を拡大していることがあります。インフラを建設するには、GPUだけでなくメモリやストレージも必要です。そのため、キオクシアのようなメモリメーカーにも需要が波及します。
実際、キオクシアの決算説明会の資料を見ると、データセンター向けSSD(ソリッド・ステート・ドライブ、記憶装置のこと)の出荷が大きく伸びています。
――キオクシアの製品が最新で、とても良いから売れているのでしょうか?
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キオクシアの製品だから欲しいというよりも、キオクシアが扱っている製品カテゴリーそのものへの需要が高まっているのだと思います。
NAND型フラッシュメモリは、実は約40年前からあるものです。東芝の技術者だった舛岡富士雄(ますおか・ふじお)博士らを中心に開発されたもので、キオクシアはNAND型フラッシュメモリの「生みの親」なんです。ただ、現在の市場でキオクシアが王者として君臨し続けているかというと、そうは言えないのが現実です。
市場では韓国のサムスン、SKハイニックスが上位に位置し、キオクシア、米国のマイクロン・テクノロジーやサンディスク、ウエスタンデジタルなどが続いています。競争の激しい市場です。
AIデータセンターでは、NAND型フラッシュメモリの中でもeSSD、あるいはエンタープライズSSDと呼ばれる高性能なストレージへの需要が強まっています。PCやスマートフォンにもSSDが搭載されていますが、AIデータセンターで求められるのは、より高速で大容量のハイエンド寄りのSSDです。
この分野ではサムスンやSKハイニックスが強いです。ハイパースケーラーはまず上位メーカーに発注するわけですが、需要があまりにも大きいため、上位2社だけでは供給しきれない状況になっています。そこで「キオクシアにも注文しよう」となります。ところがキオクシアも「在庫がない」というほど需要が高いというのが、「爆益」の背景にあるとみています。
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●今後のキオクシアの業績は?
――今後のキオクシアの業績見通しはどうですか?
業績見通しに関しては、ハイパースケーラー各社がこの先も投資を続けていくのかによりますね。
AI需要そのものは今後も続くと思います。ただ、現在のような急激な需要拡大がいつまでも続くとは限りません。この1〜2年でAIデータセンターに巨額の設備投資をしてきたので、今後、投資を少し緩めるタイミングが来たとき、キオクシアがサムスンやSKハイニックスに勝てるのかという問題があります。
キオクシアの決算説明会では、この先もAI需要は堅調に伸びていくと予測されていて、次世代メモリの開発などに4500億円を投資するとしています。
4500億円は非常に大きな金額です。ただ、7月にはSKハイニックスが次世代NAND型フラッシュメモリなどを開発・生産するため約118兆円を投じる計画を発表しました。単純比較はできないですが、上位メーカーが大規模な投資を進めて供給能力を高めれば、需給バランスが変わる可能性があります。
――とはいえ、供給不足が続けば、需要はそのまま伸びていく可能性もありますよね。
キオクシアは、AI需要が今後も堅調に伸びると見ており、その需要に合わせて供給していく方針です。そうなれば、引き続き成長する可能性はあります。
もう1つ気になるのが、PCやスマートフォンなどに使われる「汎用型SSD」です。Appleもキオクシアの大口の顧客だといわれています。
ところがAppleが最近、中国の新興メモリベンダーである長江メモリ(YMTC)からNAND型フラッシュメモリを調達しようとする動きをみせています。すぐにキオクシアから全面的に切り替えるとは考えにくいですが、テスト的に調達しているようです。YMTCの製品は安価です。そうなると、キオクシアの売上高が減少する可能性も否定できません。
――価格競争で負ける可能性があるということでしょうか。
NAND型フラッシュメモリでも、価格競争は起こり得ます。しかも、YMTCは「安かろう悪かろう」なメーカーではないようです。
キオクシアには「制御回路」と「記憶セル」を別々に作り、貼り合わせることで高性能なメモリを作る技術があります。これはキオクシアの優位点です。ところが、YMTCもそれに似た技術を開発したとされています。キオクシアとしても、何か対策をする必要が出てくる可能性はあると思います。
――では、今後、半導体関連で伸びる企業を挙げるとしたら、どこでしょうか。
「他社がまねできない技術を持つ日本企業」という視点なら、味の素に注目してもいいと思います。
味の素の100%子会社である味の素ファインテクノが、「味の素ビルドアップフィルム(ABF)」という材料を製造しています。ABFは、CPUやGPUなどの半導体基板に使われる絶縁材料です。半導体に欠かせない材料で、世界シェアはほぼ100%です。
味の素ファインテクノしか持っていない技術なので「安いメーカーが出てきたから乗り換える」という状況になりにくいです。おそらく米国の半導体メーカーNVIDIAなどの最新チップがこの先も出てくると思います。その多くにABFが使われると考えれば、こうした「他社が簡単にはまねできない技術」を持つ企業は強いですね。
オンリーワンの技術を持つ企業に目を向けると、まだ知られていない「原石」の会社が見つかるかもしれません。
本記事は、アイティメディアが運営する動画メディア「TechLIVE」で公開した動画『『【四季報で読み解く!】「キオクシア」絶好調の裏側と今後のリスクをIT記者が徹底解説!味の素との意外な関係も?』を基に作成しています。記事の内容は2026年8月14日公開当時のものです。
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