「ヘルパーは嫌、杖も嫌」介護を拒む80歳母と持病を抱える50歳娘……待ち受ける「共倒れ」の未来

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2026年08月26日 22:10  All About

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仕事を抱え、持病もありながら、80歳母の介護を担う50歳女性。母は介護サービスを拒み、彼女は一人で介助を続けるしかない状況に追い込まれている。もともと折り合いが悪く、長く距離を置いてきた母と、彼女はどう向き合えばいいのだろうか。※画像:PIXTA
年老いた親を抱えて、仕事と介護を両立させている人は少なくない。持病はあるが入院するほどではない、施設や在宅での他者が入っての介護も嫌がる。そんな親とどうやって付き合っていけばいいのだろうか。

足腰が弱った母

在宅ワークがメインのシノブさん(50歳)。過去に結婚したことはあるが、3年で離婚し、以来、ずっと一人で仕事をしながら生活してきた。

「電車を乗り継いで1時間くらいのところに母が一人で暮らしています。ところがこのところ、足腰が弱って、家の中を歩くのがやっとという状態が続いているんです」

しかも母には心臓の持病もある。介護認定を受けると、要介護2だった。在宅での仕事がメインとはいえ、週に2回ほどは仕事のため出掛けるし、急に打ち合わせが入ることもあるが、母から目が離せなくなりつつあるとシノブさんはため息をつく。

「母は80歳になったばかり。物忘れはしますが、今のところ認知症ではなさそうです。ただ、歩くときにふらふらするし、後ろにひっくり返ったこともあるので心配なんですよね」

家の中で杖や歩行器を使うよう勧めても「嫌だ」と言う。ヘルパーさんに来てもらおうと言っても絶対に首を縦に振らない。

母が何を考えているのか分からない

「仕方がないので、最近は朝起きると仕事をもって母のところへ行くのが日課となりました。母のところは1LDKなので、私は小さなリビングで仕事をしています。母がトイレに行くときに介助するんです。いつひっくり返るか分からないので、怖くて一人でトイレに行かせられない」

外出するときは母をトイレに連れていってから出掛ける。食欲もないと言い張り、置いていった食事もあまり口にしない。そばにいて介助すれば食べるのだが、一人で食べる気にはならないようだ。

母は元気な人だったとシノブさんは言う。3年前まではパートで働いていたし、その後も近所の友達と外出したりして楽しそうに過ごしていた。いつからどのように具合が悪くなったのか、シノブさんははっきり把握していないのだという。

「母が何を考えて、介護制度を利用しようとしないのか私にはよく分からないんです。ケアマネに相談すればいいんでしょうが、私も仕事が忙しいし、そもそも私も持病があって母の介護だけをしているわけにはいかなくて」

だからこそケアマネへの相談が必要なのだが、「正直言うと、事態が動くのが面倒」なのだとシノブさんは言った。

先手を打っていくしかないが……

高齢の親の体調は、放っておいてよくなることは決してない。子どもの成長とは違うのだ。今の事態が続けば、母親はどんどん動けなくなる。

「ある日、私が母のところへ行ったら倒れているということもあるんだろうなと想定はしています。親が何と言ってもどんどんヘルパーを入れるなりすればいいと言う友人もいますが、私としては母の意思を尊重してあげたい気持ちもあって……」

他人の世話にはなりたくない。家に他人を入れたくない。そう考えている高齢者も多いだろうが、シノブさん自身も持病を抱えている身なのだから、このままいけば共倒れが目に見えているのではないだろうか。

「私もちょっと鬱々としているところがあって、時々、もうどうでもいいや、母も私もこのまま老いて去っていくしかないんだろうと絶望的な気分になることもあります」

だが、同じように高齢の親を抱えている友人に、「死に方は生き方だよ。最後までできるだけのことをして人生をまっとうさせてあげようと思った方がいい」と言われて心が揺れた。

母を理解しようという意欲も湧かず

「母の本心が分からないんですよ。ずっと別々に暮らしてきたし、そもそも私と母の意思疎通が図れていない」

というのも、実はシノブさんと母親は折り合いが悪く、彼女が大学に進学してからはほとんど行き来がなかったし、めったに連絡もとらなかったのだという。シノブさんが30歳のときに父が亡くなり、「お葬式や3回忌までは会いましたが、次に会ったのは5年後くらいだったと思う。それも親戚が亡くなったから、その葬儀で会っただけ」だ。冠婚葬祭以外で顔を合わせることはなくなっていた。

「ここ3年くらいは弱ってきていると思ったので、ときおり連絡するようにはしていましたが、母の実情や本心はつかみようがない。ただ、介護保険を利用してのサービスを拒んでいること、他人が入るのを嫌がっていることしか分からない」

そして、それをもっと分かろうとする意欲が自分にはないのだと彼女は言う。若いころの母娘の葛藤や軋轢(あつれき)は、親が老いても決して消え去ることはないのかもしれない。
(文:亀山 早苗(フリーライター))

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