
「ハーフパンツで出社してOKです」――。仕事着として短パンを認める企業が、少しずつ増えてきた。
これまで「クールビズ」といえば、ノーネクタイや半袖シャツが定番だった。ところが、35度を超える猛暑日が続く中、「ちょっともう無理。なんとかならないか」という声も聞かれる中、ついにズボンまで短くする動きが出てきた。
ただ、会社が「短パンOK」と言ったからといって、全員がその姿で仕事をしているわけではない。例えば、通信販売などを手掛けるジャパネットホールディングス(HD)。グループ16社では8月から、正社員・非正社員を問わず、全従業員を対象に短パンの着用を認めた。
「少しでも快適かつ健康的に働いてもらいたい」という考えから、服装に関するルールを見直したわけだが、「短パンなら何でもOK!」というわけではない。実は、同社にはもともと服装に関する基本的な考え方がある。
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「社会人らしさ」「多様性」「安全性」の3つだ。露出の激しい服は禁止しているものの、短パンについては、着用してよいかどうかを明確にしていなかった。
では、実際にどのくらいの人が履いているのか。8月中旬時点で、着用しているのは拠点ごとに1〜5人程度。最も多い拠点でも10人ほどだという。特に多いのが制作部署で、取引先と対面する機会が比較的少ない部門に集中している。
「短パンで働いていい」と言われても、「おお、やったー! じゃあ明日から履こう」とは、なかなかならないらしい。ただ、実際に履いた人からは、「暑さや蒸れによるストレスが大幅に軽減された」「足元が快適になり、集中力の維持にもつながっている」といった声が寄せられている。
もう一つ、気になる変化がある。以前は「もう少しエアコンの温度を下げてほしい」という意見が多かったが、短パンを履く人からは「今の室温で十分、快適」という反応も。
とはいえ、いつでもどこでも短パン、というわけではない。取引先との商談など、フォーマルな場面では長ズボンに着替えるなど、自身がTPO(時間・場所・場面)に応じて判断しなければいけない。
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あるスタッフは、急な取引先の来社に備え、黒の長ズボンと黒の上着をロッカーに常備しているという。「暑い日は短パン、商談なら長ズボン」という使い分けも、これから増えていくのかもしれない。
●オープンハウスも「短パンOK」
さらに広がりを見せているのは、短パンを認める場面が「社内勤務」にとどまらないことだ。
住宅の設計や販売などを手掛けるオープンハウスは、6月18日から、福岡県内の6つの営業センターで、約30人の社員を対象に短パン勤務を解禁した。対象となるのは、新築戸建ての仲介を担当する社員だ。
同社ではこれまで、顧客からどう見えるかを重視し、スーツ着用を基本としてきた。ところが近年、記録的な猛暑が続いていることから、暑さ対策として服装を見直すことに。まず、営業部門の社員が駅前などで通行人に声をかける「街頭営業」では、ポロシャツの着用を認めた。さらに今回、短パンも解禁した。
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もっとも、何でも自由というわけではない。短パンの色は黒に限定。今回は福岡地区でのお試しということもあり、まずは様子を見ることに。今後、猛暑がさらに厳しくなれば、来年以降は他の色も認める可能性があるという。
身だしなみは営業センターの所長がチェックし、規定に反する場合は指導が入る。ちなみに、クルマで顧客を案内するときはスーツに着替えているそうだ。
最初は戸惑う社員もいたが、慣れてくると「動きやすく快適」と好意的な反応が多いという。
こうした動きは企業だけではなく、自治体にも広がっている。東京都は、都庁職員の短パンでの勤務を認め、「東京クールビズ」として、TPOに応じて快適性を重視した服装を呼びかけている。
Tシャツや短パン姿で働く職員の様子も公開され、話題になった。実際に短パン姿で出勤した職員からは、読売新聞の取材に対し、「少し勇気が必要だったが、とても快適で仕事の能率も上がりそう」との声も聞かれた。
●「すね毛、どうする?」か問題
では、世間は「仕事中の短パン」をどう見ているのか。
男性専門の総合美容医療「ゴリラクリニック」が20〜59歳の男女800人に実施した調査(※)では、夏場の男性の短パン勤務について「否定派」が53.5%、「肯定派」が46.5%。否定派がわずかに上回った。
(※)インターネットによる調査で、対象は20〜59歳の男女800人。調査日は6月17日。
否定派の理由を見ると「体型や体毛が気になる」が45.5%で最多。「清潔感に欠ける」が43.9%、「TPO・マナーに反する」が40.6%と続いた。
一方、肯定派からは「暑さ対策・体調管理」が63.1%でトップ。「集中力や生産性が上がる」(48.1%)、「省エネにつながる」(37.3%)といった声が目立った。
「暑いから短パンは合理的」という人がいる一方、短パンには「すね毛、どうする?」という問題もあるようだ。
では、どんな格好なら受け入れられやすいのか。最も支持されたのは、「ジャケット+ハーフパンツ(すね毛なし)」で58.0%だった。短パン勤務は広がりつつあるものの、まだ「当たり前」とまではいかないようだ。
●短パンは定着するのか
企業や自治体で広がり始めた「短パンOK」。とはいえ、「短パンなら何でもあり」というわけではない。色や着用する場面など、最低限のルールを設けた上で、TPOに応じた服装を求めている。
「仕事中=長ズボン」という常識は、そう簡単には崩れそうにない。ある紳士服メーカーで働く人に聞くと、「弊社では今年から短パンを販売しています。しかし、社内のルールで、職場での短パンはNGですね」とこぼしていた。
考えてみれば、ネクタイも似たような道をたどった。政府がクールビズを打ち出したのは、2005年のこと。「ネクタイを外してもいいですよ〜」と呼びかけても、すぐには定着しなかった。
当時、筆者が取材していると、話を聞いている間はネクタイを外していたのに、写真撮影になると「あっ、ちょ、ちょっと待って」と言って、ポケットからネクタイを取り出す人もいた。そして、慌ててワイシャツに締める。そんな場面を何度も目にしてきた。
いまはまだ、「仕事中に短パン?」と違和感を覚える人も多いはず。でも数年後には、「昔は真夏でも長ズボンで働いていたなあ」と笑いながら話す日が来るかもしれない。
そのころには「革靴も暑いよなあ。ビーサンもOKにしよう! ただし、色は黒ね」なんて話になっているかもしれない。
(土肥義則)
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